無色のフリースロー(5)
「たとえ実績の方はそれで証明出来たとしても、まだ唯一性の話が終わっていない。それはどう説明するのです?」
先程明確な実績があれば別だとか言っていたような気がするが、それも甘い。夢路は調子を変えない。
「唯一性も既に証明されているでしょう。生徒会諸君、君たちのもとに相談にやって来る学生は大体どのくらいの人数で? もちろん探偵部設立前の話を」
「……一学期に一人、といったところだ」
観念したかのように副会長が告げる。
「探偵部はまだ出来て一月でこれだ」
夢路は単語帳のページをパラパラめくる。どう見積もっても五十近くはある。
「それに加え、ウチは解決率も百パーセントだ。これまで一度も善処したり前向きに検討したりすることもなく、きちんと客が納得する結果を出してきた」
夢路はこれでもかと探偵部の活動を伝える。内情を知っているソラから見てもこれは嘘偽りない事実である。
「だからといって、探偵部が生徒会より上なんて言う気はもちろんない。あの厳格な部屋で恋愛相談だとか落とし物の相談が切り出しづらい雰囲気というのもよく分かる。一方、校則のことなんかは実に話しやすいだろう。実際に対応してくれる人物が目の前にいるのだから」
ここでソラは少し意外に思った。てっきりこのまま夢路は、探偵部を上げて生徒会を下げる方向で話を続けると思っていたからである。
「つまり、野球部さん。あなたは私たちと生徒会や風紀委員が同一の活動を行っているとおっしゃったがそれは違う。どちらも上手く棲み分けがなされていて、差別化もされている。片方があるからもう片方が要らないという話にはならないんですよ」
角田は口を開けたまま放心している。夢路はそれを見て一度襟を正す。自分からの話は以上ですと言わんばかりに。
「これで議論は十分でしょう。角田さん、探偵部廃止の件は棄却という形でよろしいですか?」
「……はい」
角田が小さく答える。やった、これで存続が決定した。ソラは小さくガッツポーズをする。
「では、本日の会議はこれにて終了とさせていただきます。皆様、お忙しいところお集まりいただき誠にありがとうございました」
会長が締め、緊急会議は閉幕した。
肩を落として部屋を出ていく角田と、それを支えるマネージャー。そういえば、どうして彼はあそこまで探偵部を目の敵にしていたのだろうか? ソラは恨みを買うような覚えはなかったし、探偵部の活動でも思い当たる節がない。であれば、答えは一つ。先程口角泡を飛ばしていたこの男が原因か。ソラは小さくため息を吐く。
「おいおい、せっかく人が助けてやったのにため息かよ」
「いえ、そのことは深く感謝しています。本当にありがとうございます!」
ソラは夢路に深々と頭を下げる。夢路がタイミングよく現れなければ、状況はどうなっていたかは火を見るよりも明らかだ。ソラは安堵の気持ちでお礼を述べる。
「部長がそんな簡単に部下へ謙るな。とりあえず、部室帰るぞ」
夢路は立ち上がり、教室の前方へ向かう。その際、生徒会のメンバーと接近する。夢路と会長は互いに見つめ合う。
「こんなこと、いくらやったって俺は沈まねえよ」
「今日の一件は角田さんからのものです。私たちとは無関係なことですので」
「あっそ、そりゃ失礼」
夢路はぶっきらぼうに返して教室の外に出た
『この時間にわざわざ起きて教室まで乗り込んでくるとは。タイミングの悪い人です』




