無色のフリースロー(3)
ソラはまるで訳が分からなかった。いきなり見ず知らずの坊主頭に、探偵部の廃止を提案される。事実は把握したが理解が追いつかない。
「いきなりなんじゃない? 理由を聞かせてよ」
河野が真っ先に口を開く。
「探偵部の存在意義について疑問を感じたからです。探偵部は、学生たちの学園生活の支援や向上を果たすために悩み事や相談事に応える。そのような認識の組織で間違いないですか?」
ソラに目線が向けられる。
「はい、間違いないです。実際私たちはこれまで学生たちの相談や困り事に対して、きちんと向き合いときには解決もしてきました」
ソラは先程の動揺を振り払い、力強く返した。その隣で河野は大きく頷く。
「では、何か形に残る成果を出していますか?」
「成果、ですか?」
「確かにそういったお悩み相談などで学生に貢献されているのは素晴らしいことだと思います。しかし、それだけなら生徒会や風紀委員の業務にも含まれていることです。何か探偵部だからこその成果などが無いのであれば、私はあなたたちの存在意義を感じません」
ソラは言葉を詰まらす。確かに探偵部の活動は夢路の卓越した能力が発揮されているとはいえ、何も特別なことはしていない。他とは違う差別化など、マーケティング戦略以外などで意識する機会はほぼないだろう。もっと山本から商売のことを聞いておけば良かった。
「今際さん、角田さんからのご指摘に対して何も反論がないのであれば、このまま会議を進めさせていただきますがいかがですか?」
いかがも何もない。それはつまり探偵部が廃止の方向で動いてしまうということだ。
『まずい、何か言わなきゃ……』
ソラは頭の中で何度も反芻する。
「待ってください!」
立ち上がり、大声を上げたのは美術部の高木。
「僕自身、探偵部を利用したことがありますが、彼らの力凄まじかった。あんなのどこに相談したって探偵部にしか解けないはずだ。それだけで探偵部が存在する価値は十分にあるはずです」
「私も同じ。彼らの存在は、決して他に代替できるものじゃないです」
高木に触発され、河野も同じく声を上げる。
「……高木さん、ではどのようなご相談をされたのですか? どのような事件が発生し、誰が犯人だったのかこの場できちんと説明してください」
「それは……」
生徒会長の言葉に高木は黙り込む。あまり込み入った話になると、自分の後輩のことについて根掘り葉掘り説明しなければならないからだ。
「言えないのであれば結構です。河野さんも色々おっしゃりたいことがあるのは分かります。しかし、それはあくまで具体例で見た話。客観的かつ抽象的に考えれば、それは本当に唯一無二のものですか? 私たち生徒会には出来ないと?」
河野もまた口を閉ざしてしまう。ここまで面と向かって圧をかけられれば、誰だって萎縮してしまう。それも、相手は生徒会長である。
「問題解決において、探偵部が生徒会に勝っている例なら、私は一つ知ってますけどね」
この場の重い沈黙を破ったのは、テニス部部長白瀬である。
「あれは探偵部設立前のお話です。あくまで解決に携わったのは夢路さんや桐生さんだけです。ただお二人が凄かったという事実にしかなりません」
最後の助け舟すらもにべもなく切り捨てられ、いよいよ後がなくなってくる。
『どうしよう、このままじゃ……』
せっかく作った探偵部が、なくなってしまう。ソラは青い顔を浮かべて震え出す。




