無色のフリースロー(2)
「中々始まらねえな。せっかくこっちが忙しいのに来てやってるっていうのに」
山本、河野、ソラで五分少々雑談を続けていたが未だ部長が揃わず、主催の生徒会も現れない。
『嫌な予感がしやがる』
「おチビ、夢路に会議のことは話したのか?」
「いいえ。どうせ部室で寝てるか面倒くさいって断られると思って言ってません」
「なるほどね……ちょっと席外す。すまねえが俺がいなくてもはじめていいように言っといてくれ」
「分かりました」
ソラの返事とともに山本が席を立つ。本当に多忙でせわしない男だ。
「大変そうだね、購買部」
「でも、本人が好きでやってるんですから充実はしてますよね」
「確かに。二年生で部長なんて中々出来ることじゃないし。それをいうとソラちゃんはもっとすごいか。何せ学園唯一の一年生部長さんだし」
「私はただ、先輩に言われるがまま引き受けただけですよ。それで言うと、新聞部の後藤さんも二年生で部長ですよね。まだいらしてないみたいですけど」
「あの子もすごいよねー。かなりの切れ者らしいし。ソラちゃん意外と上級生にも知り合い多い?」
「探偵部で知り合った方だけですけどね。まだ始まらないのならちょっと挨拶だけして来ます」
「どうぞー」
ソラはその場の席を後にして、まずは美術部部長の高木に声をかける。
「こんにちは、高木さん。
「やあ、今際さん。こないだはありがとね」
「その後、作品は順調ですか?」
「いい感じだね。あとはもう細かい調整するだけだし、自分の中で一番の出来だよ。暇な時にでも見に来て欲しいくらいさ」
以前の事件は全く引きずっていない様子に、ソラは安心する。
「良かったです。では、また時間があるときお邪魔します」
「うん、ありがとう」
次にソラが声をかけたのは、テニス部部長 白瀬。
「こんにちは、白瀬さん」
「こんにちは、あの一件以来だね。すごいね、探偵部。色々こっちにも話入ってきてるよ」
「良い話だといいんですけど。せっかく誘ってくださったのに断るような形になってしまってすみませんでした」
「いいよいいよ。あのときは、たかが体験だったし。それに、ソラちゃんが本当にやりたいことが見つかって良かったよ」
今日は色んな人に温かい言葉をかけてもらっている。ソラの気分はウキウキだ。そんな時、ようやく生徒会役員たちが教室に現れる。その後ろには坊主頭の男性とポニーテールの女性が同行していた。野球部の部長とマネージャーといったところだろう。
「始まりそうなので、これで失礼します」
「うん、またね」
ソラは自分の席に戻り、河野と合流する。
「ようやく始まるみたいですね」
「だね。けど、山本くん戻って来てないや。他は全員揃ってるみたい」
ソラも周りを見ると、先程まで不在だった新聞部の後藤の姿もあるが山本の席だけ空席のままである。
「皆さん、お待たせいたしました。本日はお忙しいところにお集まりいただき誠にありがとうございます。定刻を過ぎておりますので、まだお見えになっていない方もおられますが、只今より本日の会議の方を始めさせていただきます」
会長が立ち上がり、開会の宣言がされた。このような正式な会議に出席するのがはじめてのソラは、少し緊張して浮き足立つ。
「大丈夫だよ、どうせ部活の下校時間をきちんと守れとか、どこかの部活が迷惑かけてるから反省しなさいとか、そういうのだから」
ソラの様子に気付き、河野が小声で教えてくれる。それと同時に後ろの扉が開き、山本が自分の席に帰ってくる。
「……全員揃いましたので、本題に入らさせていただきます」
「何だ、ウチの悪口か?」
山本は表情を変えずに呟く。
「本日緊張で会議を開かせていただいたのは、野球部部長の角田さんから、一つ話し合いたい議題があるとの要望を受けたためです。では角田さん、お願いします」
会長が座ると、今度は浅黒く焼けた肌の坊主の男子生徒が立ち上がる。
「かしこまりました。本日、この場で皆様とお話ししたいのは、とある部活の廃止についてです」
いきなりの穏やかではない話題に周りが騒つく。そんなことは気にしていないかのように、角田は続けて口を開く?
「その部活とは、探偵部です」
「え?」
突然のことに、ソラは硬直する。




