第6話 無色のフリースロー(1)
賑やかな教室。生徒が教室内を自由に動き回っている。休み時間、それも昼休みか。よく見ると購買の袋を持った生徒が何人か映っている。そして、画面が突然切り替わり廊下の方へゆっくりと向かっていく。ここで映像は真っ暗になる。夢の主が立ち上がり、廊下へ出ていく。この後いくらでも展開がありそうなところで終わってしまい、男は少々歯痒い思いを感じる。しかし、これがいつもの中途半端さであることを受け入れ、再び眠りにつく。
***
「大丈夫かな、今日の会議」
五月末の今日。放課後に緊急で部長を集めた会議が開かれることが校内掲示板を使って発表される。いきなりのことにソラは朝から首を傾げるが、探偵部部長として参加する義務があるため、会場の第一多目的室に向かう。
『先輩に何も言っていないけど、一応名前は私が部長なんだし、どうせ言っても断ってついてきてはくれなそうか。いや、何なら寝てるだろうし』
ソラは己の先輩が怠け者のものぐさ太郎であることも把握している。一人では不安であるが、そこは勇気を出して飛び込もう。彼女は力強く大きな一歩を踏み出し、目的地を目指す。
第一多目的室に到着すると、何人かの知った顔がすでに集まっていた。テニス部、美術部、水泳部。ソラは今まであまり意識したことはなかったが、探偵部の活動を通して色んな人々と交流を深めていたのをここで実感する。
『そうか、私はてっきり上級生の中に紛れ込んだ一人ぼっちだと思っていたけど、そんなことなかった』
「そんな入り口で立ち尽くすなよ、おチビ」
振り返ると後ろには購買部部長の山本がいた。
「すみません、すぐ退きます」
「何だ、緊張でもしてるのか?」
「そうだったんですけど、知り合いの顔見て落ち着きました」
「なら良かったじゃねえか。とりあえず座ろうぜ」
山本が促すように二人は席につく。
「調子いいらしいじゃねえか、探偵部は」
「まあ、何だかんだお客さんは毎日来てますね」
「出来て一月ってところだろ? それでそんだけ賑わってるなら上々さ。いくら夢路の名前があるとはいえ、それをきちんと活かしてるお前さんの手腕だな」
「いやいや、そんなことは」
謙遜なのか、本気で照れてるのか。ソラは山本には判別不能なくらいの笑みを浮かべている。
「まあ、好事魔多し。用心はしとけよ」
山本は軽く注意を促す。
「そういえば、先輩と山本さんって仲良しなんですか?」
ここ一ヶ月、山本が探偵部の部室に訪れたり、放課後夢路が購買部に行く姿などをソラは見たことがなかった。
「どうだろな。お互い利用できる時は協力して、それ以外は不干渉。大体こんなところだな、奴との交流は」
世間一般の感覚からいくと、仲良しとはいえないラインか。ソラは夢路の交流関係の狭さを少し心配した。
「やっほー、ソラちゃん」
手を振りながらソラの隣に移動してきたのは水泳部部長 河野。
「こんにちは、河野さん。あれから第六レーンはどうですか?」
「いい感じだよ。一年生が何事もなかったかのように使ってるし」
「良かったです。いくら先輩が論理で大丈夫だと証明しても中々抵抗感はあると思いますし」
「その節はどうも。本当に相談して良かったよ、君たち探偵部に」
河野の言葉にソラは心が昂る。そうだ、自分たちのやってきたことはきちんと役に立っているのだ。いつも部室にいるだけでは気づかなかったことである。
「ふーん、こんなに敬虔な信者を抱えているとは。恐ろしいな、お前たち」
山本が感心するように呟く。
「信者って、そんな宗教じゃないんですから」
「てか、ソラちゃん。山本くんとも知り合いなんだ。って、夢路くんの後輩なら当たり前か」
「どういうことです?」
河野の発言にソラは首を傾げる。
「二人とも有名人だからね、主に悪い噂で」
「悪い噂というと?」
「去年一年生の時に深夜にこっそりプールに忍び込んだりとか」
「懐かしいな、そんなのあった。俺が足つってヘマやらかさなきゃバレずに逃げれたのによ」
「あのときは菅原先生に大目玉食らって、水泳部の手伝いさせられてたよね」
「そうだった、そうだった。雑用ばっかで面倒くさかったなあ」
夢路と山本の関係が、悪友であるという認識をソラは改めて認識した。どうやらこと悪事に関しては二人とも良き朋友らしい。




