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中途半端は大変です!  作者: 平下駄
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屋上からの失踪(13)

「本当に学校にいなかったことを証明出来るか? できなきゃそれはアリバイとは呼べねえよ。ちなみに起きたのは三限目だ」

 夢路も相手に調子を合わせて始める。


「でも、それだけで私が犯人とはならないじゃないですか。他にもその時間に学校にいない人だっているはずです」


「ああ、確かにいた。でもな、この犯人にはまだ決定的な要素があるんだ。その犯人、逃げる時にわざわざ屋上に行ったんだよ。逃げ場のない屋上に。普通ならそんなことはしない。でも、犯人はそうした。これは、犯人は屋上からの特別な脱出手段を持っていたってことだ。事実、犯人はマキの目の前から消えている」


「そして、その特別な脱出手段が能力だと言いたいんですね。でも、私の能力『フライト』はそれに該当しないはずです。だってフライトは五十センチの間を飛ぶだけの能力ですから」


「津村よ、確かにお前の能力はそうかもしれない。でも、それは普通に使えばの話だ。知ってるか? ある奴は壁に張り付く能力を応用して、その力を握力に付与してるらしい。そして、お前はこんな風に能力を応用したんだろ?」

 ソラと桐生は混乱する。


「どういうこと、リュウ? どうして空を飛ぶ能力が、屋上から消える能力になるの?」

「簡単だ。こいつは、屋上から飛び降りたんだよ。それならお前が追いかけたのに、一瞬で消えたことに理由もつく」

「でも、それじゃあ地面に叩きつけられて……」

 ソラは言葉を途中で止める。


「そこでフライトだ。今朝のことを思い出してみろ。こいつは少し本来とは違った使い方をしてなかったか?」

 二人は雑木林を思い浮かべる。


「あの高さを出すやつのこと? 別に普通なんじゃないの」

「いや、ここでこのフライトのある特殊な面が見えてくる。移動可能な五十センチについてだ。この五十センチというのは実に幅が広いものなんだ」


「幅が広いって、どういうこと?」

 桐生が聞き返す。

「地上から五十センチというわけでなく、発動した地点から五十センチということだ。跳び上がった最高点から発動出来るなら、それは例え落ちている時でも可能なはずだ」

 ソラに閃光が走る。


「ってことは、津村さんはフライトを使って飛んだのではなく」

「空中で静止したんだよ。後は横にスライドして、校舎の適当なところに行けば、屋上からの消失の完成だ。今朝、あんな端っこにいたのはその練習だろ。木から飛び降りて静止する練習をな」


 スタンディングオベーションというにはずいぶん寂しいが、部屋にいる四分の三が立ち上がっていると言えばいくらか聞こえはよくなるだろう。実際は探偵部の面子だけである。


「なるほど、素晴らしい推理ですね。でも、それはあくまで仮定の話です。さっき私が学校からいないという証明ができないって言ってましたけど、逆に私が学校にいたという証明もできないんじゃないですか?」

 津村は落ち着いた調子で返す。


『こいつ、やはりオツムは弱くないらしい』

 夢路の話は所詮は仮定である。確かな証拠はない。それに自分の言葉で返されてしまった。これじゃあ津村を追い詰めるのは無理かもしれない。そう、夢路一人なら。


「津村よ、お前これは知ってるか? 能力者はスポーツでその力を使ってもルール上は失格にならないって。まだそんなルールはできてないし、しかも微能力者だ。実戦で使えるレベルではないし、使えてもどうせわずかな力しかないと世間から思われてるからだ」


「ええ。でもわずかでも利用できる力はある。その握力の人や桐生さんのように」

 夢路が腹を抱えて笑い出す。


「おいおい、やっぱりお前は知らねえんだな。マキの能力が、走りにわずかでも利用できる能力だって? こいつの能力はそんなにできた力じゃない」

「え? じゃあ、何なんですかその力って?」

 驚いて立ち上がる津村。これでようやく全員総立ちだ。


「津村さん、私の能力は『シューズ』っていうサイコメトリーの一種の力なの。でも読み取れるものは靴限定で、履いた本人がどこに行ったのかくらいしか分からないの」

 たらりと冷や汗を流す津村。


「な。走りになんか使えねー能力だろ。でもよ、こういう時は便利なんだよ。さあ、お前が自分の無実を証明したいんなら案内してくれよ。お前の下駄箱に。それでお前のアリバイと疑惑の問題が一石二鳥で解決するんだから。別にいいだろ、本当に行ってないんだったら」

 膝から崩れ落ちる津村。完全に詰みというわけである。


「……はい、そうです。私が犯人です」

 細々とした声で津村が自白する。

「お前、こいつのファンなんだろ? どうして自分の欲を優先したんだ? 明日大会だってのに」

「だって、それは……」


「はっきり言うぞ、お前はファンなんかじゃねえ。自分のことを最優先するただの自己中だ。他人のことなんてこれっぽっちも考えず、応援なんてのもできねークズだ。今後一切、マキに関わるな」

 津村は夢路の言葉に黙ったままだったが、走って部屋からマキのユニフォームを持ってきた。これで事件は無事解決となる。

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