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中途半端は大変です!  作者: 平下駄
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第4話 屋上からの失踪(1)

「チビ助、一つ頼み事してもいいか?」

 とある日の部活終わりに、夢路がソラに声をかける。


「いいですけど、何を?」

「明日の朝部屋まで起こしに来てくれ。起きれなくて日直三回サボったら、さすがに委員長に釘を刺されてよ。明日は絶対早起きしなきゃいけない」


「分かりました。でも、私じゃなくても寮の相部屋の人に頼んだ方が手っ取り早くないですか?」

「生憎俺は一人部屋でね。一応マキにも頼むつもりだが、念のためお前さんにもな」

「了解です。何時頃に部屋に行けばいいですか?」


「八時までに教室に到着してればいいから、七時半……いや四十分、なんなら五十分でもいけるか?」

「七時半に行きますね。それじゃあ、先輩。また、明日」

 ソラは夢路が遅刻する理由の一端を垣間見た。


   ***


 薄暗い。ペタペタと階段を上っているようだ。


 上ったすぐのところの教室に、前からドアを開けて入っていく。カーテンも閉まって、電気も付いていない真っ暗な教室。しかし、廊下から差し込むわずかな光によって、机に教科書やらノートが置いてあるのが見える。どうやら移動教室の授業中らしい。


 忘れ物でも取りに来たのだろうか。自分の机に向かって歩いて行くと、突然後ろのドアが勢いよく開く。誰も教室にはいないはずなのに。あわててその後をついて行くように廊下を出ると、階段を駆け上がる音が聞こえる。追いかけて行くと、正面にあまり見かけない灰色のドアが現れる。急いでドアノブを回すとそこは屋上だった。


 辺りを見回すが、追いかけて来たはずの足音の主の姿がない。この屋上には身を隠す場所などない。では一体どこに消えたのか。まさかここから飛び降りたのではないかとでも思ったのか、屋上の端に立って下を覗き込もうとする。


 そして地面が見えるギリギリのところで、突然見ていた映像が消える。全くこれからが面白くなりそうなのに……。


   ***


 桜坂学園の寮は、学年別かつ男女別に分けられており、全部で六棟の建物となっている。基本的にそれぞれの寮内の行き来は、朝六時から夜二十一時まで自由となっている。寮の管理は寮長または寮母が行ない、学生たちの生活を日々支えている。


 翌朝の七時二十分、ソラは二年男子寮の玄関に到着する。壁にかかっている部屋割りを確認して、夢路の名前を探す。


『あった。二階の一番奥の角部屋。結構いいところ引き当ててる』

 寮の部屋割りは完全にランダムであり、角部屋や日当たりが良い場所など、生徒たちの間でランク付けされることもある。


 ソラは初めて来る場所だが、自分の寮と構造が同じなので特に迷わず、階段にたどり着き廊下を進む。途中で寮食堂の前を通り過ぎたが、まばらながらも何人かの生徒が食事をとっていた。そして、見慣れない女子生徒の姿に好奇の目を向けている。無理もない、自分だって寮の中に知らない男子生徒がいたら自然と目で追ってしまうだろう。


 夢路の部屋の前にたどり着き、ソラはノックをする。

「先輩、入りますよー」

 一応声を上げて扉を開くが、案の定夢路は眠りに落ちたままである。

『やっぱり、相部屋じゃないんだ』


 玄関で確認した際に、この部屋には夢路の名前しかなかったため予想はしていたが、実際見ると新鮮である。ソラは同じクラスのミナミと相部屋であり、皆もここでは当たり前のように共同生活を送っていると思っていた。そのため、噂程度で聞いただけの一人部屋を物珍しそうに見渡している。相部屋よりは少し狭いが、一人当たりで換算すればこちらの方が広い。


『この部屋、家具が何もない』

 備え付けの机と椅子、そしてベッド。これ以外特筆されるべきものがない夢路の部屋に、ソラは少し驚く。完全に部屋には寝に帰って来ているだけのミニマリストである。


 一通り観察を終えたソラは本来の目的を遂行しようと試みる。カーテンを開けて、日の光を部屋に入れる。当然、これで起きる夢路ではない。


「先輩ー! 起きてくださーい!」

 体を揺すりながら呼びかけても、夢路の瞼は固く閉ざされている。安定の夢路クオリティに、ソラはため息をつく。

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