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中途半端は大変です!  作者: 平下駄
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変わらずの芸術(4)

「ここが美術部の部室だよ」

 美術準備室の前に到着し、高木とソラは教室に入る。中では女子生徒の二年生と一年生が、それぞれ油絵・版画の作業に取り組んでいた。版画の方の一年生が手を止め、こちらに駆け寄る。


「部長、どうなりましたか?」

「ああ、加納さん。とりあえず、探偵部部長の今際さんに来てもらったよ。色々見てもらおう」

「どうせ見つからないでしょ。私たちで探して何もなかったんですし」

 油絵の二年生は引き続き筆を取る。


「まあまあ川瀬さん。せっかく来ていただいたんだから。それに、美術部じゃない今際さんだからこそ気づく視点もあるかもしれないよ。何より、あの夢路くんの後輩だしね」

「……まあ、どうぞご自由に。私は自分の作業があるので」

 よく分からないが、自分への期待が高まっていることは理解する。ソラは固唾を飲む。


「それじゃあ、彫刻が無くなった経緯を詳しく教えてください」

「僕は普段、あそこの教室の後ろの方のスペースを使って作業してるんだ」

 高木が指差す方には、青いビニールシートが敷かれ、中央に台座のような机と背もたれのない椅子が置かれていた。


「昨日の時点では、あの机の上に置いてあったんだけど、今日部室に来たら無くなっていることに気づいてね。それで大慌てって感じだよ」

「最後に見たのは昨日。では、無くなっているのに気づいたのはどなたが最初ですか?」

 自分の中の探偵像を何とか憑依させ、ソラは現場検証を試みる。


「私と川瀬さんです。今日は私が一番早く部室に来て、その後に川瀬さんが来たんですけど、その時に二人で変だなって。流石にあのサイズの彫刻を持ち帰ろうとは思わないだろうし」

「ということは、加納さんが部室に到着した時点で、既に彫刻は無くなっていたと考えるのが自然ですね。そして、その後に高木さんが遅れてやって来られたと」


「うん。いつも新聞部の夕刊を見てから部室に来るのが習慣になってて。今日は記事を読みたい人が沢山いたから結構遅れたかな」

 とりあえずのタイムラインは把握出来た。


「なるほど、ありがとうございます。部員はこれで全員なんですか?」

「うん、作品出すくらいやる気のある人はね。他は名前だけの部員が三人いるよ」

 どこかの部活動と同じである。


「少し部室の中を見させていただいても?」

「どうぞご自由に」

 高木の快諾を受けて、ソラは隅から隅まで教室を歩く。


「準備室のわりに意外とものは少ないんですね」

 ソラが見る限りこの部屋には授業で使用する道具よりも、部員たちの創作場所にスペースが割かれているようである。

「授業で使うものは美術室にあるんだよ。だから実質ここは美術部専用の部屋、いわばアトリエだね」


 ソラは再び部屋全体を見渡す。

「これも彫刻ですか?」

 机にズラッと並べられた彫刻刀と、その隣にある二枚の板材。よく見ると一枚目の板には細かい彫りが刻まれている。


「これは木版画ですね。その木材を彫刻刀で削って、その後にインクをのせて、板から紙に転写するって感じです。ちなみに製作者は私」

 加納が誇らしげに胸を張る。


「へえ、木を使った芸術も色々あるんですね」

 ソラは今度は別のスペースへ移る。独特の匂いに鼻が刺激され、一瞬足が止まる。

「川瀬さんは油絵を描かれてるんですか」

「ええ。あまり人に見せられるものではないけど」

 作品から目を離さず、川瀬は冷たく返答する。キャンバスには青空の下に広がるひまわり畑が描かれている。


「綺麗ですね。吸い込まれそう」

「……ありがと」

 顔はそのままで小さなお礼だけが返ってくる。


「高木さんのは、何もないですね」

「まあ、肝心の作品が無いからね。とりあえず、一通り見てもらったけど、気になるところとかあった?」

 ソラはもう一度部屋を見渡す。


『やばい、何も出てこない……』

「一旦、夢路先輩に報告してきますね。色々伝えたいこともありますし」

 冷や汗をかきながら、ソラは若干の見栄を張る。

「うん。じゃあ僕はここで待ってるから、まとまったらまた来てね」

 深くお辞儀をしてソラは美術部を去る。

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