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中途半端は大変です!  作者: 平下駄
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表裏一体(5)

「ここが僕たちの部室です」

 将棋部に案内され、夢路とソラはとある教室の前に辿り着く。扉には「囲碁将棋部」と書かれた張り紙がある。夢路がノックもせずに中へ入ると、人が誰もいない静かな部屋だった。そして次に教室中央辺りに間仕切が置いてあるのが目に付く。


 かなり入り口側に寄って設置されており、その幅は人がすれ違うことが出来ないほど狭い。どうしてあんなものが教室中央に存在するのか。ソラは不思議に思う。


「あれが今のお前さんたちの領土ってことか」

「はい。あの間仕切りの向こうは囲碁部のものですから、僕たちは足を踏み入れることが出来ません」

 なるほど、ボーダーラインを可視化するためのものか。しかし視覚的圧迫がかなりある。別に線引きならビニールテープとかで十分だろうに。


「敗者は黙して勝者に従うのみ。やりたい放題されても文句は言えないわけか」

「あくまで彼らの場所に設置されたものであればこちら側は何も言えません。唯一共有しているのはこの出入り口とその周辺だけです」

 何とも息苦しい部室だ。文字通り部屋を真っ二つにしたこの光景。一体どうしてこうなってしまったのか。


「お前さんたちは、元から仲でも悪かったのか?」

「いいえ、少なくとも僕たちはそんな風には感じていませんでした。ただ、互いに同じようで違う競技を志している者。どこか壁というかわだかまりみたいなものはぼんやりと認識していました」


「そんな時、囲碁部から今回の賭けの話が持ち上がって。親睦を深めるためのコンテンツだろうと僕たちは捉えていたので了承しました」

「でも、連中はそうじゃなかった。あいつらは僕たちをこの教室から完全に排除しようとしています。それに気づくのがあまりにも遅かった。いや、気づかないふりをしていたのかもしれません」


 ひょっとすると、将棋部の歩み寄りたいという感情を逆手に取った計画なのかもしれない。そうなると、今回の相手はかなり厳しいのでは? ソラは夢路の顔を覗き込む。


「どうした、チビ助? そんなに上を見上げて」

「いや、本当に大丈夫なんですよね? 私たち何も聞いてないですけど」

「心配するな。この勝負、俺が勝つ」

 一体どこからその自信が湧いてくるのやら。ソラは疑問に思いつつも、祈るように夢路を見つめる。


「そんなところで立ち止まらないでくれよ。中に入れないじゃないか」

 教室の外から声が聞こえる。ソラが振り返ると、またしても三人の男子生徒が立っていた。見事に身長が低・中・高に別れている彼らが、おそらくこれが囲碁部の面々なのだろう。


「ごめんよ、酒井。少し彼らに部室を紹介していてね」

 加藤は真ん中の生徒に声をかける。


「ん、何だ将棋部への入部希望者かい? だったら悪いことは言わない、やめときな。彼らは今からこの部室に居られなくなるんだから。僕たち囲碁部に入りたいというのなら話は別だがね」

 ソラは酒井の言葉に腹を立てる。ずいぶん上から目線で傲慢な物言いである。同時に彼らへのイカサマの疑いをより強める。


「って、そこにいるのは夢路くんじゃないのかい? 『眠りのリュウ』程の学園の有名人がなぜここに?」

 本当にそのあだ名で広まっているのか。ソラは眉をひそめつつも一応受け入れる。


「せっかく夏休みになったから、新しいことを始めようと思ってな。とりあえず今日はこの囲碁将棋部に見学に来たのさ。ところで、これから今日は何かあるのかい?」

「ああ、楽しい楽しいイベントさ。君も見ていくかい? ああ、そちらの彼女もご一緒にどうかな」

 夢路が将棋部にお願いした唯一の関門、探偵部の同席がこうも簡単に叶うとは。予想外のアクシデントと言えるだろう。そして、酒井はここではじめてソラの存在を認識したようだ。


『小さいからってついでみたいに扱うな!』

 ソラとは目も合わせない囲碁部の連中。三人とも揃いも揃って薄ら笑いを浮かべている。まだ勝負が始まっていないのにこの余裕、何かあると疑うのは当然だ。


「そいつはありがたい。生憎好奇心は他人より旺盛な質でね」

 夢路は満遍の笑みを浮かべてそう返す。ここからのイカサマババ抜きで、最後までその笑みを貫き通せるのはどちらなのか。それを知るのは夢路ただ一人のみである。

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