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学校の七不思議

作者: 甘扁桃

「学校の七不思議って知ってるか?」


 拓也(たくや)の何気ない一言からいつも会話が始まる。


「聞いたことない」

「へんな噂ばっか信じてるとまた先生に宿題拓也だけ増やされるよ」


 僕と(あかね)は拓也の問いに答えた。茜は正確には答えになっていないけど。


 僕たち3人は幼稚園の時から仲が良く四年生になった今でもよく3人で集まって遊んだらする。


「それが噂じゃないらしいんだよ。隣のクラスの奴が忘れ物を取りに教室に行ったら廊下からコツコツと足音がしたんだってよ」

「先生じゃないの?」

「それが先生を脅かそうとして隠れて見てたら理科室に置いてある骨標本が動いてたんだってよ!」


 拓也は僕たちを驚かそうと懐中電灯を持って声に抑揚をつけて話した。


「驚かそうと努力したところは認めるけどそんなのただの噂だから。拓也は毎回くだらない話ばっかするんだから。ねえ俊樹(としき)

「そんな話、本当だったら学校中で話題になってるよ」


 僕は茜に同意した。だってそうだろう七不思議なんて子供たちが好きそうな物なのに初めて聞いたのだから。


「本当かどうか確かめるために今から学校に忍び込もうぜ!この他にも七つあるから全部やってみようぜ!」

「今から行くの〜!?時間も遅いし帰りたいんだけど」

「僕も親が心配するし」

「時間なら俺ん家に泊まることにすればいいんだよよくあるじゃん!行かねーなら俺1人でも行くからな」


 僕と茜は乗り気ではなかったが拓也は1人でも行くと突っ走ってしまい心配の為結局着いて行くことにした。


 親には拓也の家に泊まるとだけ伝え再び校門前に集合することにした。ちょうど7時くらいに学校に着き、拓也はひょいと閉まっている門を飛び越えた。


「早く来いよ!」

「早いって!待って心配だから先行きすぎないで!」

「ここまで来たら行くけど……男子ってほんと子供」

 

 僕はこんな夜遅くに学校に忍び込むこの行為に罪悪感と恐怖を感じていたが2人の手前そんな素振りは見せたくなく拓也を心配するふりをした。ただ2人と離れたくなかっただけなのだが。


「まずはこの教室だな」


 僕たちは骨標本が歩く音が聞こえたという教室で隠れて待っていた。しかし、いくら待てども何も聞こえない。


「やっぱり嘘じゃん」

「おかしいな。それなら他の6つも試してみようぜ。あと、全部の教室に行きたいんだ」


 踊り場にある鏡からもう1人自分が出てくる、音楽室から勝手にピアノの音が聞こえる、女子トイレの花子さん、保健室のカーテンが開いたり閉じたりする、プールにサメが出てくる。


 拓也から七不思議の話を聞きながら全部の教室を周り終え、五つ目のプールサイドにやってきた。


「五つ目は()()()()恐怖だね」

「はいこれで六つ目。今のところ全部嘘だけどあと一つは何?」

「おい!何してんだ!」


 急に大きな声で叫ばれ驚いている暇もなくプールの鉄柵の奥から懐中電灯の光と警備服を着た大人の人が近づいているのが見えた。


「やばい逃げろ!」

「待ちなさい君たち!」


 僕たちは拓也の一言から全速力で逃げた。振り返ることもせずただひたすらに逃げた。それはもう周りが見えなくなるほどに。


「はぁはぁ。全員いるか?」

「いるよ」


 ……?あれ茜から返事がない。


「おーい!茜ー!」


 僕たちは大きな声で叫んだ。どうしようこんな夜中に学校に忍び込んだから茜がいなくなってしまったら。


「はぁ……早いのよ……2人とも……ちゃんといるから」


「「茜!」」


 結局この日は何事もなく普通に拓也の家に泊まることになった。



◇◇◇


 拓也の家で寝る準備をすまし寝ようとした時に七つ目が気になり茜が寝た後に拓也に聞いてみた。


「そういえば七つ目って何だったの?」

「ああ。七つ目は学校の掃除用具を全部開けっぱなしにすると異世界に飛ばされてその人のことは忘れさられるってやつ」

「まあ、どうせそれも嘘だろ。付き合わせちゃってごめんな」

「なんだかんだで楽しかったからいいよ」


 僕たちは笑い合いゆっくりと眠りについた。


 次の日友達の家で目を覚ますと家を出なきゃいけない時間をとっくに過ぎていた。俺はまだ寝ていた茜を起こし、何も食べずにお家の人にお礼を言い急いで出かけた。


「茜、そういえば昨日何したっけ?」

「なんだっけ?わすれちゃった。まあいいよ」


 何故か思い出せないことに少し恐怖したが、そんなことさえ忘れてしまった。


 そういや、誰の家に泊まったんだっけ。




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