悪魔と契約
6話 悪魔と契約
「早くサインしないか。我も忙しい」
サラリーマンみたいな悪魔だなぁ。
どうするクロエ。とりあえずマナだけは救えるのだから。あとは、時間かせぎして。
「はい、悪魔さん」
「クロちゃん……」
「良かろう」
あつ! 目の前が真っ暗になった。
気がつくとあたしとマナはマンションの前に立っていた。
「クロちゃん!」
マナが抱きついた。
「クロエでいいからクロちゃは……」
「クロちゃん、朋さんが……」
あいつ処理するって。人間を物みたいに。
「うん、そうしたい」
どうしたのマナ、一人会話して。
「クロちゃん、朋さんを助けに行こう!」
「え、どうやって?!」
「行けばなんとかなるって、カレが」
「カレって?」
マナはあたしに朋のなんだかわからないヤツぬいぐるみをあげて見せた。
「カレって、この……」
「声が聞こえた。朋さんを救えって」
マナもこいつと会話が出来るの? なんだかちょっとうらやましい。
「マナなら聞こえそうね。ソレの声。カレってやっぱりオスなのね」
たしか朋はフランシーヌって言ってたけど、その名前は女の名よね。こいつじゃないのかしら。
「ちなみにマナ、カレどんな声してんの?」
「ん〜美輪さんみたいな」
美輪さん?!
あたしたちは、ママーネ婆さんの部屋に行った。
「なに、コレ」
部屋内がまるで突風でも吹き荒れた後みたいになっていた。
「ママーネさんは何処?」
「どちらさんで?」
ソレはこっちも聞きたい。机の後ろから散らばった書類や本を片づけていた風の男が顔を出した。
「誰? マナ、この人」
マナは首を振った。知らない人ね。悪魔の仲間かしら。
室内の隅ある小さなドアが開いて。
「ここだよマナちゃん」
「ママーネさん、どうしたんです?」
「さっき、私がよけいなコトをしたとウィッチが来ての、私は隠れたんだよ」
「よけいなコト。あのペンダントね」
「そうだよ。アレを持っていたから殺されずに出られたんだよ。あんたら」
そうだったんだ。あたしはポケットに手を入れるともう一つペンダントが。アッこれは朋の。
だから、朋だけ。
「あのその人は?」
「おお、戻ったのかケータ。彼は心配ない。私の弟子だ」
「えっママーネさんの弟子ってわたしだけじゃ」
「言わんかったかな? 彼はウィッチ修行に出ていたんだ。彼もこのマンションの住人だよ」
「修行?! どれくらい」
「そうだな、五年になるかな」
ちょと細めの顔はパパが好きなビートルズのジョン・レノンぽい。メガネもかけているほりの深い顔だ、モテそうだが、背が低い。アタシくらい?
「わたしがママーネさんと知り合う前だ」
「日本?」
「いや海外だ、魔法は日本では、だめなんだ。日本には、独特の魔法というか呪術とか妖術とか」
五年も海外にいても転居してなければ大丈夫なのね。
「あんた、魔法使いなの?」
「いやいや、ただの魔法マニアさ」
「ケータ、こっちの若い方がシーナ・マナといって新弟子だ。彼はヤクマダ・ケータ」
ママーネ婆さん、その紹介の仕方はなんなの若い方って、まだあたしは。
「ママーネ、ちゃんとおぼえてよマダ。ボクは、薬丸岳啓太で」
「日本に長いか、日本人の名前は苦手での」
「あたしは701に住んでる緑川クロエ・フォックス。あたしも若い方よ。あなた、悪魔に詳しいかしら」
「悪魔、専門ではないが少し」
「このマンションに悪魔が巣くってるの。妙な呪いをかけてるみたいなのよ」
「悪魔が呪いを」
「ここから出ると、転居ね。すると不幸になるの」
「そいつの名は?」
「えーと、ロー、ローソンじゃなく」
「ローグ・ネルって」
そうだ、マナ。
「ローグ・ネル……聞いたことないな」
巫女音朋も言っていた。あればフランシーヌ?
「調べて見ますよ」
「あたしたち、またあそこに行って朋を」
「そうかい、今度はソレをかけて」
504、またココへ戻ってきた。
今度もドアはかるく開いた。中は普通だった。あの魔女は居ない。だろうね頭から割れて悪魔が出てきたんだから。
廊下から。リビングに入るとソファに人が座っていた。
なんと、パッキンのイケメン。
つづく