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帰レ!

3話 帰レ!


 土曜日の朝、マンションの最寄りの駅で、巫女音朋と待ちあわせ。

 そう遠くはないが、駅へ電動自転車で迎えに行った。

 駅は無人で、待合室にちょこんと座ってる巫女音朋を発見。


 歩くと十五分位。

 坂を上ると見えてきた異様な建物。

 玄関口に誰か居る。

 女の子だ。


「おはよークロちゃん!」

「もうーっ。その呼び方はやめろって言ったじゃない」


 同じ階の隣の子、マナだ。

 クロちゃんってキモいお笑いタレントが頭に浮かぶ。何度も言ってるが、なおらない。子供だからか。


「おはよう御座います。クロちゃんのお友だちですか。はじめまして椎名真奈です」


「……」


 名乗らないが頭はさげた巫女音朋だ。


「彼女は学校の友だちの巫女音朋ちゃんよ」

「えっ、大学生なんですか! わたしと同じくらいかと」

「いくらなんでも、小学生の友だちはあんただけよ」

「やだなークロちゃん、わたしをまだ小学生だと思ってたの。春から中学生にな・り・ま・し・た」


 そうなんだマナ。知らなかった。

 と、言うことはやっぱり巫女音朋は大学生には見えないんだ。


「さっき上見ていたけど……」

「上になにかが飛んできた」

「何か? 鳥?」

「鳥じゃない、ハーピーみたいの」

「ハーピー?」

「人に翼が付いてたみたいの」

「なにそれXメン? のわけないか」


 この子、ちょっと見える子で、人には見えないもの見るらしい。

 それもあってオカルトとかにも詳しい。


「あの朋さんの抱いてるソレなんです?」


 そういえば気になっていたけど聞けなかった。

 見れば見るほどなんだかわからないヤツだ。 

 頭がとがって折れ曲がり先にはカウベルみたいなのが付いてる。

 顔らしいとこには目がズレたとこに。

 片方が大きくてちぐはぐだ。鼻や口はない。肩の所にファが。その肩から伸びる細い腕、かぎ爪のような指が3本だらりとしている。

 脚は太くて三本ある。その先は手と同じ指が三本。どう見てもモンスター。ソレ以外ならなんだ?


「……」

「昔の怪獣かなぁ……」


 さて、マナがいう昔とは? 

 あたしも子供の頃、アメリカで日本の子供番組見てた。カイジュウというのも知っている。


「ごめんなさい。こたえたくないならいいです」


「ようをすまそう」


 巫女音朋はエレベーターホールへ歩き出した。


 ホールでエレベーターを待ってると、朝帰りなのか、あたしの嫌いな住人が来た。


「あっクロエちゃーん。朝からおはよございます」


 なんて、朝はおはよーでいいんだろ。

 酔ってるなこいつ。


 あたしにやたらと話しかけてくる二十代後半のチャラ男だ。

 朝まで、駅前の飲み屋で呑んでたんだろ。酒くさい。


 一見飲みそうなあたしを誘うヤツとか、多いが実は、あたしアルコールが苦手だ。

 酒を飲まない子供の方が付き合いやすい。なので隣のマナともすぐに仲良くなった。


 最悪。酒くさいチャラ男と同じエレベーターになってしまった。


「キャー」


 三階に上がった頃に突然マナの悲鳴が。


「このバカ、何やってんのよ!」


 チャラ男が、エレベーターの隅でオシッコしてる。

 そいつがマナの方に流れて来たんだ。マナがあたしに抱きつき。


「いやぁ〜」


 と、半べそかいた。その時エレベーターが止まった。


「ん、どうした故障かぁ?」


 灯りが消えた。


「クロちゃん、アレなに!」


 

 エレベーターの天井や壁のすき間からナニやらふにゃふにゃした物が。


「ヒイッなんだコレは」


 チャラ男は、アレをしまわずに後ずさりして転んだ。

 見なくていいモノを見てしまった。


「帰レ!」


 声が聞こえた。レーカンとか、ないあたしに声が聞こえた。


「今ナラ、何モシナイ」


 って、何よ動くしらたきみたいのぉ。キモいわよ。


「帰レ!」


「うわぁ!」


 エレベーターのドアが開くと巨大な顔が。


「帰ラナイト、今スグ死ヌゾ!」

「霊体には、人を殺せないわ! ただのおどしよ」

「霊体、私ハソンナモノジャナイ」


 お、消えた。ドアが閉まり灯りがつき、エレベーターが動いた。

 そして五階で止まりドアが、開いた。

 チャラ男が、しまい忘れたのかアレをダラリとさせたまま出ていった。


 エレベーターはその後七階まで普通に上がった。


「帰れって誰に言ったのかなぁ」

「多分朋ちゃんでしょ」

「そうか、わたしたちはここがウチだから、帰るのは朋さんか」

「アレ、ココに来た時から聞こえてた」


「ココ変なマンションって言っていいけど、あそこまで、誰にも見える形で出るなんてビックリ」


 ってマナ、チャラ男のオシッコの方がビックリしてたぞ。


「あの、朋さんはなにしにココへ?」


 実はマンションのことは、へんなパニックにならないよう住人の誰にも話してない。他ならぬマナだから話す。


「それ、本当なのクロちゃん!」


 ホントになおらない子だ。また。


「クロちゃんはやめなさい。クロエでいいっていつも……。マンションの話はホントよ。あたしの知り合いがちゃんと調べたの」


 あたしの素性もマナには言ってない。

 知ってるのは名前と女子大学生というコトだけ。

 

「なんだか、一時期いろんな霊能者が来てたことあったのはソレが原因だったのね」


 パパの派遣した連中のことだろ。


「見て、普通の人じゃないとすぐわかったわ。あの人たち。でも、朋さんはわからなかった」

「わたしは霊能者じゃないから」


 そう言った巫女音朋をマジマジとマナは見て。


「朋さんってオーラみたいなのもない。あっ、大変二階に居たタケルくんが、三日前に引っ越したんだよ。大丈夫かしら?」

「三日前、何処に?」

「ハワイ」

「外国じゃない。もしかしたら」

「あっちは何時かな電話してみる」


 マナはスマホを出して。


「鳴ってる。あっでた。タケルくん、大丈夫?」

《どうしたのマナ?》

「元気?」

《ああ、今アレッ何なんですか? ちょっとまて……》

「タケルくんが」


               つづく

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