久能太郎
17話 久能太郎
一階回廊から中庭が見える。
成りゆきでママーネ婆さんの部屋で夕食を。
アジフの奥さんが持ってきたカレーは野菜がゴロゴロ入った家庭的カレーだとマナが言っていたが。
他のメンバーは家庭的とは縁のない連中だ。
マンションにはけっこう大きな中庭がありベンチや噴水広場もあり、この異様なマンションにはなかなかイイ雰囲気を出している。
ちょっとヨーロッパ風でもある。
ママーネ婆さんの部屋を出てエレベーターホールの方に歩きだして。
「あの、クロちゃん。朋さん、池のそばのベンチに人、座ってるの見えます?」
「マナ、そういう話にはまだ早いわよ」
「怪談じゃありませんよ」
言われて見ると。ベンチにロン毛の人が座ってるのが見えた。
あ、やだ。レーカンとか、強い人と居ると自分のレーカンも強くなると聞いたけど。
マナや朋、それに。あ、いや違う。アレは霊とかじゃない。
「あの人は人間だよねマナ。アレ、あの人は」
「昼間会った鹿嶋世泉さんだ」
突然現れた鹿嶋世泉が座っているロン毛の隣に座った。
「あっ」
見てはいけないモノを見てしまった感じ。
二人はキスをした。鹿嶋さんの濃厚なキス。
あの二人は恋人同士なの?
キスが終わり。ロン毛の方は最初見た時のようにただ下を向いてるいる。
「ヤッパあのロン毛の男? 幽霊じゃないよねマナ」
「違うと思うし……。むしろ鹿嶋さんの方が」
「あ、鹿嶋さんが消えた。何だったの今の」
その晩は巫女音朋をあたしの部屋に泊めた。
そしてロバートはママーネ婆さんのトコに。
翌日の日曜日。なんだか、早く目が覚めて朝の散歩に出た。
不思議だ。あの異世界に行っていたせいもあり、土曜の朝、朋と駅で会ってからまだ24時間もたっていないのに長期休日の最終日のような感覚。
昨日はいろんなことが起きすぎだった。
中庭の噴水の前で。
「ウワァ! ビックリしたぁ」
思わず声に出た。
昨夜見たロン毛がベンチに座ってるではないの。しかも昨夜と同じ服装? グレイのパーカーに黒いパンツ。ジャージ?
多分昨夜からココに居る。
「あの……昨夜ココに居ましたよね?」
「僕が……見えるんですか?」
わっ、しゃべった。朝なのでユーレイじゃないと思うけど。
「ハイ、ハッキリと」
「もう朝ですね」
彼はゆっくりと立ち上がると、マンションのエレベーターホールの方へ歩き出した。
「彼、ああ見えてココのマンション最強の霊能者よ」
また、ビックリ!
いつの間に鹿嶋世泉が背後に。
「やっぱり人間ですよね」
「ええ、わたしの正体をはじめに見破った人。怖かったわ」
この死人鹿嶋世泉が怖いって。
「彼も仲間に入れて。105の久能太郎」
つっうことで朋とマナを連れて朝からママーネ婆さんの部屋により。
「105かい。あの人ね。確かに霊能力は強いが、そのためなのか、どうか知らないけど性格が……。あの若さですでに世捨て人だ」
「あの若さって、あの人いくつなの?」
「直接聞いたわけじゃないが、あの鹿嶋世泉によるとまだ十九だそうだ」
「ええ、未成年には見えなかった」
あたしは三十代かと。
レーノー者は老けるの早いのかしら、ふと横のマナを見下ろした。マナと目があった。あわてて朋の方を見た。そこには人形のような童顔が。
レーノーと老けは関係ないと思った。
「まあ彼の力、ちょっと興味があったのよ。マナちゃんたち、行ってみて」
というコトて105のインターフォンを押した。
反応がないのでもう一度押した。
「寝てます」
蚊の鳴くような声が聞こえた。
起きてるじゃないの。
「あの、あたし今朝中庭で会った者なんですけど」
「寝てます」
「話しを聞いて下さい」
「夕方来てください」
その後なんの反応もない。
出来れば今日の午後に総攻撃をかけたいのだけど。困った。
「昨夜の様子見たでしょ鹿嶋さんに頼んでみましょうよ。恋する人なら」
ヤッパあたしより大人な気がするマナ。
つづく




