動く島
10話 動く島
島がどんどん近づいて来る。
巫女音朋が、ぬいぐるみを肩車して、海に入って行く。さすがに動く島はこっちの砂浜までは寄れないので。こっちから出て行くことに。
あたしたちも朋の後を。
なんだろう。この感触は。
「コレ、生き物ですよね朋さん」
朋はうなずく。
「もしや、コレは伝説に聞く、クラーケン」
「我ヲ呼ンダノハ? オマエカ」
体中に響く声がした。
「ボクではありません!」
ロバートが腰を抜かしたのか座り込んだ。
「わたしだクラーケン、久しぶり」
「誰ダ?」
「北の海で会ったじゃないか」
「イツノ話ダ。マアヨイ。我ヲ呼ブ呪文ヲ知ル者ハソウイナイ。我ノ敵デワナイノハワカル」
「忘れたのか。あんた。わたしたち元の世界に帰りたい。出来れば外の海まで連れてって欲しい」
「外へ行キタイノカ」
「変なのに、こっちに飛ばされたの」
「ヨカロウ」
島が動いた。
「スゴいわ朋さん。クラーケンさんと知り合いだなんて」
「二、三日ハ我ノ背デシンボウシテクレ」
朋は、貝殻とかが、たまった椅子の背もたれみたいな場所に座った。 あたしらも適当なところに座った。二、三日もかかるのか。
あたしはいいが、マナの親とか心配してないか?
「食べ物とかはどうなの朋ちゃん?」
「その辺の貝とか食べる」
このクラーケンという怪物の背には、サザエやアワビとか、知らない貝とかがいっぱい。
貝だけではない海藻とかサンゴ、漂流物さえも豊富だ。
流木を燃やして貝が焼けたし、たまに魚やカニ、エビが。
コレで、家があればいいんだけど。陽ざしは避けれない。
水も、小さな水溜りがいくつか有り雨水がたまっていた。まさに動く海上キャンプ場だ。
「大きな貝を見つけた。こんなの集めて日陰を作ろう」
ロバートが見つけてきたのは白い大きな二枚貝の片方だ、それくらいのがあれば日傘代わりになる。
クラーケンの進みぐわいも完璧だ。風も出て涼しい。
夜はちょっとしたキャンプ状態。集めた流木で火を囲んだ。クラーケンには熱くもなんともないようだし。
高校時代にアウトドア研究部にいたのが役だった。
サバイバルにはライターは必需品ね。
あ、タバコは吸わないよ。ホントだって。
「朋さんはいつクラーケンさんと、いつ会ったんです?」
「遠い昔。海に居た頃」
朋は、マナとはよくしゃべる。あたしはきらわれてるのか?
「クラーケンさんが忘れちゃうほど昔なんですか。子供の頃とか、海に住んでたんですか? 北の海って日本じゃないんですか?」
「……」
「マナ、そう質問攻めするな。朋ちゃん困ってるよ。誰だって話たくないこともある」
「そうですマナちゃん。ボクなんか秘密だらけです」
だろうな悪魔の弟子だったんだから。
「ごめんなさい朋さん……」
夜が明け。
「妙ナノガ現レタ!」
クラーケンの周りに水柱が立った。ナニ、アレ
キバをむいた大蛇くらいのチンアナゴみたいなのが、蛇みたいに這ってきた。
「朋ちゃん、あれナニ!」
「みんな、中央に集まって!」
ロバートが、真ん中あたりにある高くなった貝やサンゴの岩に走った。
「ワァッアレは!」
海の中から巨大なタコだかイカの足が出てきてチンアナゴを散らした。
コレってクラーケンの手足かしら。
「アッチからも!」
チンアナゴはクラーケンの周りを囲んでたらしい。
あの巨大なイカ足も一つのわけがない。
海からドバドバ出てきてチンアナゴを掴んでは絞めた。
それでも数匹はこっちに。
貝殻を盾に巨骨を剣にロバートが闘った。
なかなか頼りになるヒーローだがオタクでロリコンだ。
チンアナゴの強襲が終わって安心してたら。
「空を見て鳥?」
「アレはハーピーだ!」
つづく




