ロシアの巻き返し
○はじめに
ウクライナでのロシア軍侵攻を受け、関連作品を既に二つ小説家になろうに掲載させていただきました。いずれも、事態が動いている中での作品ですので、それなりに文章が解りにくいのはご容赦下さい。ただ、内容の是非につきましては、自信をもってお伝えしたつもりです。
「3.21戦争を知らない大統領、3.28戦略、戦術、戦テクの最新事情」がその作品です。
○ホテルオータニ鳳凰の間
司会「皆さま、お待たせいたしました。引き続き講演会となります。国際ジャーナリストで各国の軍事関係にお詳しい、カズ、ナガサワ様に最新のウクライナ情勢に関して、日本語でご講演いただきます。それでは、宜しくお願いいたします!」
カズ「ええっと! This is a pen. ウケないかもしれませんが、これも日本語です! 今回はタイミングが良すぎる感じで、皆さまにお伝えできることが沢山あります。偶然にもホテルの総支配人の清水氏より、どうせ日本に来るなら話してほしいといわれたのでお話しいたします。」
カズは、資料を一切使わず、かなり踏み込んだ話をした。逆にそれが、現状の生々しさを感じさせた。
カズ「日本では、戦争のニュースや軍事関連の作品は、殆ど一般には出ません。おそらくプロパガンダや過去の経緯から現実の問題としたがらない風潮があるのだと思います。しかし、今の情勢と常識への理解の中で、私達が国の存続を占うような危機に直面したとき、ある程度判断できないと大変な過ちをおかす可能性があるのです。それはロシアが戦争への道を選んだのと一緒だと言えるでしょう。
と言っても、私の国籍、ナショナリティーはアメリカです。祖父母の代に、日本と戦争をしてました」
場内は、カズの流ちょうな日本語に一瞬日本に近しい感じの雰囲気と受け止めたが、nationalityの発音にアメリカ人であることを確認した。
カズ「時間の都合もおありのことと思います。お伝えすべき内容のプライオリティの高い順からです。先のクリミア併合から今のウクライナ侵攻までのポイントは、実はそれぞれの地域に親ロシア派勢力がいるということです。それで、もともとは彼らが自国の繁栄に取り組み、ロシアとのパイプ役として生きる道がありました。
ところが、それを阻んだのはロシアだったのです。皆さんご存知かと思いますが、旧ソ連からの独立国は、急速に西側の自由経済圏に近づき、豊かな国づくりに期待か高まり、経済や人の結びつきを強めていきました。そして、さらにNATOによる軍事的庇護を進め、ロシアからの脅威に対抗しようと考えています。そんな中で、ロシアつまり、プーチンの反感を強めた国がウクライナだったのです」
日本のアナリストより分かりやすい説明に、場内は静けさを増した。それに、総支配人の清水氏と言えば、皇族や総理大臣クラスとしか会わない人物であることを、参加者は理解していた。
カズ「いま、NATOの話に触れましたので、加盟条件についてお話しします。ウクライナの場合、自国内で内紛があれば加盟できないので、親ロシア派が武装した段階でアウトです。また今回のように、親ロシア派の開放等の理由で、何時でもロシアに攻め込まれるとなると、これも国家間の緊張状態が認められるのでアウト! もちろん戦争をしていれば、これも加盟できません。いわゆる、ロシアの出方次第で加盟条件が成立しなくなるのです」
一部ニュース等で、ウクライナの大統領が何故NATOに加盟しないと言ったのか、聴講者たちは話が見えはじめた。そして、何故大国ロシアが軍事侵攻したのかが説明された。
カズ「また、ロシアは近代化への道筋を間違えた国家であり、特に、中国と比べて、外交政策やインフラ整備という近代化の道筋で、特定の利権に集約し過ぎたと言えます。もともとの国民性が、権力に対して本音と建前で付き合うのに慣れていますし、裏と表を許容できる社会が普通だと考えているので、そうなるべくしてなったと言えます。格差を広げ莫大な富を一部が握り、更にそこに政治的な後押しをする。一般市民は旧ソ連の生活と似たような監視下におかれて、賄賂や裏社会との付き合いを生活の中で求められる。これが、お隣の国ロシアだとしたら、今の状況も理解できるのではないでしょうか。つまり、大国であろうと小国であろうと、要はロシアと北朝鮮が一人の権力者に牛耳られているのであれば、実態はさして変わらないということとご理解下さい」
そして、カズは現在進行中なので不確定なことも考えられると前置きし、停戦協議に触れた。
カズ「もし、その中で停戦協定を結ぶとなると、ロシア軍の劣勢は軍のトップクラスの死活問題になるので、情勢がロシア有利に傾かなければ合意は難しいと見れます。また、民間人に対する無差別な攻撃をカードに、世界の反戦気運の高まりを狙うという馬鹿げたシナリオもあるかもしれません。いずれにせよ、ウクライナの後ろ盾が居なくなることを条件に、段階的にロシア軍が撤退し、また、適当な時期に砲撃やミサイルで停戦を止めさせ西側を牽制する。そんな見え見えの先に、西側が嫌気をさして経済制裁も多国籍連携も崩れ、ウクライナが孤立することを目論む。そう考える最大のメリットは、プーチンが居なくなるまで持ち堪え、ロシアという国もロシア軍幹部も生き延びるという、ロシア人らしいシナリオを、実は私が想像してみましま。このSchemeは実際にアフガニスタンであった話です」
カズは少し場内が静かになるのを待った。
カズ「では、ウクライナは何を! ですが、この国際秩序への影響と経済への打撃を考えて、トップレベルの頭脳と情報戦に長けたスペシャルチームが後ろ盾につけるかがウクライナにとっての鍵となります。もちろん、国連は直接は関与できません。ロシアの常任理事国という面倒な存在が仇となります。では、どこの誰が後ろ盾になるか、今はそれを決める真最中だということです」
場内には、国際舞台の裏事情がストレート過ぎると思ってか、苦笑いするものも見られた。そして、政治家や政府関係者も居る中で、歯に衣着せぬ話が出た。
カズ「こんなやり取りの最中にはどうでもいい話ですが、先般、日本がシベリア開発から手を引かない等とロシアをニコリと牽制して、イザとなったら手を引くかのようなアピールをしました。でも、誰でも思いつきますし、また直ぐに復活できるカードは無用なので、もっと真面目な対策をやれとクレームが入ったと思います。一つは難民支援、もう一つは軍事的な対ロシア政策の早急な見直しを突きつけられて、今の永田町は頭が痛いというところでしょう。新年度予算はコロナですからね! コロナを理由にすれば何でもやれるし、全くやらなくてもいい。それがひっくり返る話ですから」
そしてカズは、愛用のセイコウ社の腕時計を見て! 最後にこう〆た。
カズ「そして皆さん! 自分ごととしてウクライナを何とかしないと、国際秩序と経済問題とのダブルで不況の波を被りますから。そう見るのも他の国では当たり前のことです。さあ! ウクライナを支えて孤立化させないようにどうするか。具体的なことは次の機会にお話ししたいと思います。私の愛用のセイコウの腕時計が、そろそろ時間ですと言ってます。それではまた!」
司会「あっはい! 貴重過ぎるお話しでしたが、セイコウの腕時計がまた次の機会の時を刻んでほしいと思います。どうもありがとうございました!」
〜〜おしまい〜〜
文責(作者)カズ ナガサワ