これってなにかけばいいの?
第二章 最初の町の雑魚敵に負けるような奴はもう強くなれない
うっそうと続く茂み。
遠くから鳴り響くオオカミの遠吠えと虫の音だけが鳴り響く。
「へぇ。あなたって本当に勇者なんだ」
そう言って彼女は少し驚いている。
「だからそういっているだろ。やっと信じてくれたか」
「ふふっ。ごめんなさい。あまりにも見えなかったから」
「どういうところからそう判断できるんだよ」
「だってあなた、私の下着しか見ていなかったじゃない」
「それはもう忘れてくれ!!」
彼女はくすくすと笑う。少しは恥じらいという物はないのだろうか。
「それでさ、君は・・・・・えっと・・・・・」
「リリーシアでいいわ」
「うん。リリーシア。君はどうしてこんなところに?」
「それは・・・・・・・」
そう彼女が話し始めた矢先、目の前の草むらがガサゴソと音を立てる。
中から飛び出してきたのは・・・あれはゴブリンか。
「リリーシア。少し下がってて」
そう言って俺は剣を抜く。一直線に振り下ろされた剣はゴブリンに吸い寄せられる。
「ライアンって意外と強いのね。頼もしいわ」
彼女は感心したような顔で言う。
「これなら、私が戦闘の援護をする必要もなさそうね」
「リリーシアは戦えるのか?」
「ええ。私は魔法が使えるのよ」
この国では、魔法は生まれたときに体に魔力を宿していないと扱うことができない。いわば、選ばれた力なのだ。
「ライアンにも少しだけだけど魔力の流れを感じるわ。使ったことはないの?」
「えっ!そうなの!やり方教えてくれよ!」
まさか自分にもそんな力があったなんて・・・やばい、少しテンション上がってきた。
「お、落ち着いて・・・・分かったわよ。こほん。まずは体に流れる魔力を感じるのよ。それを体の外に放出するイメージで」
魔力を放出、こんな感じか。
ボウっ。
「きゃっ」
「あっ」
俺の放った魔力は突風となり彼女のスカートを揺らした。
そして・・・・・・・そのめくれたスカートの中からきれいなパンツがあらわになったのだ。
「え、あ、いや、これは、その、俺もまだ使い方があんまり・・・」
「大丈夫よ気にしてないから」
そう言って微笑みを浮かべてはいるが目は一切笑っていない。
「ところで勇者様」
「はっ、はい、なんでしょう」
「やっぱりまだ魔力のコントロールができてないわ。私が手本を見せてあげましょうか」
ピキンと張り付く空気。彼女は俺の目の前で手をかざすが、明らかにその手は震えている。
「い、一度ならともかく二度までも・・・・・・・」
彼女は耳を真っ赤にしながらそう言う。やっ、やっぱりあの時に見られたこと根に持ってる!
「おおお落ち着けリリーシア。不可抗力だ!別に俺も見たくて見たわけでは・・・」
「なるほど私の下着なんて見たくないみたいね。安心して、痛いのは一瞬だから」
しまった!!!逆効果だ!余計に彼女を怒らせてしまっている。
「心配しないで勇者様。命までは取らないわ」
「ほ、本当か」
「ええ、ただこの魔法を後頭部にあてて一時的な記憶を消すだけだから」
そう言った彼女の頭の上には巨大な氷の塊ができていた。え、こ、こんなの当たるの?記憶だけじゃなくて俺の人生そのものまで、なきものになってしまうじゃないか!!
「地獄で反省しなさい!!」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
彼女が俺にめがけて魔法を振り下ろそうとしたその矢先、
「グオォォォォォォォォォ」
近くで何者かの雄たけびが聞こえた。その声に一瞬驚いたリリーシアの放った魔法は俺の真横をかする。た・・、助かった・・・・・。
「く、ライアン!!話はいったん中断よ。魔物が出たわ!」
振り返ると、そこには先ほどまで倒したゴブリンとは比べ物にならないほどのサイズのゴブリンがいた。あ、あれはキングゴブリンか。
「くそ、おおりゃあああああああ」
俺は勢いよく走りだしキングゴブリンに切りかかる。
「ライアン、駄目よ!足ばかり切っててもキリがないわ。首を切り落として」
リリーシアはそういうが、首を切り落とすということはかなりの高さまで飛ばなければならない。さらに空中という状態は動きが取れずとても危険な状態なのだ。
「ライアン、私を信じて!!合図をしたら一気に首を切り落とすのよ!」
長い事足ばかりを切られ続けていたキングゴブリンが耐えられなくなり膝をついたその瞬間、
「・・・・・・・っ!!いまよ、ライアン!!!」
その合図とともに俺な両足を踏ん張りキングゴブリンにとびかかる。キングゴブリンもとびかかる俺を打ち落とそうと棍棒を振り下ろす。
ッッパキパキパキパキ。
その刹那にリリーシアの放った冷気魔法がキングゴブリンの腕を包み込む。そのキングゴブリンの動きが止まった瞬間に、
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
俺の剣がキングゴブリンの首を見事に切り落とす。
「はあっ、はあっ、か、勝ったのか・・・」
両肩をゼーゼー鳴らしている俺のもとにリリーシアが駆け寄る。
「大丈夫、ライアン・・・」
「あ、ああ、心配いらないさ。これくらい・・・たいしたことじゃ・・・」
だんだんと意識が薄れてゆく・・・・。
「え、ライアン・・・。しっかりしてライアン!!ねえライアンねえ!!」
彼女の焦っている姿がぼんやりと瞳に移る。その景色を最後に俺は意識を失ってしまった・・・・・・・・・・。