表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/16

ヒロインとライバル令嬢

アリシア

 この話はおおよそ彼女の視点。

 ライバル令嬢として転生。中の人は都内在住の社会人成人女性


ヴァーシル王子

 ゲーム内で最高難易度を誇っていた攻略対象。アリシアの婚約者


アルバート

 ゲーム内での攻略キャラ。アリシアの兄。


 断罪シーンと言うと、現在は公爵令嬢である女性も多少は他の作品やラノベなどで聞き及んでいる。要するに最後にヒロインをいじめていた悪役が逆にやり込められるという下剋上的なあれである。

 よくよく考えると王子に司法権とかないよな? とか、冷静に突っ込んではいけないアレだ。ちなみにこの国でも王子に司法権はない。


 ――そもそもこのゲーム、断罪シーンとかなかったと思うんだけどなぁ


 もともとはスマートフォン向けに配信されたゲームである。簡単、お手軽に、短い間でサクッとプレイできるようにと設計されたゲームには、各キャラクターにもそこまで深みのある設定はなかった。それでも最難関と言われる王子を攻略するためにはそれなりの時間がかかったものだ。

 その反面、一万円ほどの課金をすればサクッと攻略できてしまうあたりがまた、実にイマドキのゲームである。そもそも攻略相手を攻略する事よりも、その後の季節ごとに配信されるイベントにお気に入りのキャラと参加する方が目的のゲームだった。


 ――夏には課金の浴衣とかもあったよねぇ。なんちゃってヨーロッパが舞台なのになんで浴衣なんだ。って思ったけど。ヴァーシル王子の浴衣姿がかっこよくて課金したわぁ。


 公爵令嬢となった人物はしみじみと思い出す。ヒロインが購入した浴衣の金額に応じてキャラクターの反応も変わってくるあたり、芸が細かい。ちなみに王子は最高金額以外の浴衣の反応は同じで、なんとも微妙なものだ。これはほかの季節コーデも同様。王子のカノジョになるためにはお金がかかるのである。

 彼女もイベントごとに公式に搾取されていた一人である。ともかく、そういった背景にあるゲームであるため、プレイヤーのストレスになるようなものは極力排除されていた。


 ――まぁ、その中で唯一のストレス要素が私こと、公爵令嬢だったんだけどね。


 それはもう、プレイヤーの前に事あるごとに現れては、重箱の隅をつつくような嫌味のオンパレード。声優の熱演もあってとにかく腹立たしい。特に王子ルートでは婚約者である彼女から事あるごとにミニゲームを吹っ掛けられ、それをクリアしなければ先に進めない仕様であった。もちろんこれも課金でスキップできる。世の中金だな! と、叫びながらも彼女は粛々とミニゲームをクリアしていった。

 彼女は季節イベントには金を払うが、本編攻略は無課金で終わらせるという妙なこだわりを持ってしまったのだ。しかも最初に選んだ対象が最高難関の王子であったため、他の攻略者は手が回らず、少なくとも彼女の記憶には他の攻略者対象の情報がほとんどなかった。

 ちなみに王子ルートをクリアすると、公爵令嬢はまるで初めからそうだったというようにヒロインを祝福し、「わたくしの教えが良かったからですわね」と言い放つのである。見事な手のひら返しだが、その緩さがスマフォゲームのいいところだろう。誰もかれもが過激な仕返しを望んでいるわけではないのだ。

 そもそも二週目に入ればまた公爵令嬢はチクチク嫌味を言ってくるのである、彼女の存在を意識から抹消した方が精神衛生上ましである。


 ――まぁそれが今の私なんだけど。


 生前プレイしたゲームを思い出すほど自分の今の境遇が悲しくなってくる。うるさいから音声ミュートしていたあの公爵令嬢が今の自分だ。

 いや、一応彼女にはヒロインの足りていないパラメータを教えてくるという助言キャラの立ち位置にいるうえ、一部キャラクターの攻略に必要な隠しパラメータに関わる人物らしいので会いに行かないわけにはいかなかった。

 うっとおしくて最低限の接触だけ済ませていたら、絶対パラメータが足りているはずなのにノーマルエンドになった人柱の皆さんの攻略サイトでの嘆きをかみしめ、彼女は足繫く通ったものだ。

 ともかく、そんなプレイ状況であったので正直他のキャラはあやふやだ。むしろ王子ルートとそれに付随しているもう一人しか詳しくない。


 ――だって他のキャラとうっかり仲良くすると別ルートに入るってあったし!


 これまた攻略サイトの人柱の皆様のおかげである。ともかく、他のルートには詳しくない公爵令嬢は、視界の端をちょろちょろとしているヒロインをみつつも自身の課題を必死にこなしていた。

 もちろんヒロインは王子の周辺にも表れていたのだが、王子の反応は芳しくない。と言うか、興味そのものがないように思えた。

 もともと王子は他の攻略者四人の好感度が四以上でないと攻略対象として登場しない。公爵令嬢が見る限り、彼らの、そして彼ら以外の男子生徒からの好感度は十分高いように思える。


 ――まぁ、ゲーム通りに進むわけではないということでしょう。


 うん。と、公爵令嬢は納得した。ゲームには登場しない攻略対象の婚約者という存在もある。あくまでもゲームはゲームでしかない。

 それに、ヒロインも公爵令嬢と積極的にかかわるつもりはないようだ。多少、王子のそばにいるので関わることにはなったが、


 しかしそうやって近くで見たヒロインは、遠目で見た時の印象とあまり変わらなかった。

 ヒロインの印象は一言でいえば「自分が可愛いということを正しく理解している」人物だ。そしてそれを使う事に躊躇いがない。何より男あしらいがうまい。


 ――これは、天性のものか。ヒロインも転生者だったらさぞかし生前ももてたんだろうなぁ。


 思わずしみじみとヒロインてすごいな。と、彼女は思ったのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ