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公爵令嬢アリシア 特別な存在

アリシア

 この話はおおよそ彼女の視点。

 ライバル令嬢として転生。中の人は都内在住の社会人成人女性


ヴァーシル王子

 ゲーム内で最高難易度を誇っていた攻略対象。アリシアの婚約者


 さて、私が公爵令嬢となって半年が過ぎた。本日はダンスのレッスンだ。

 ヴァーシル王子は踊りの名手として国内外で有名。その婚約者の私がヘボな踊りを見せるわけにいかない。

 それはもう、幼いころからビシバシしごかれている。ちなみに、意識しなくても体が動く。なんて事はなかった。いや、そういう部分がないわけではないけれど、それだけでどうにかなるほどワルツは優しくなかった。


 ――ワルツが優雅なのは見ている側だけだ!


 それでもまだタンゴだのなんていうか、競技向けのソシアルダンスみたいなものがないだけましなのかもしれない。

 それでも背中が吊るかと思った。ステップを間違わないように足元に意識を集中すれば、上半身がおざなりになる。かといってそちらに気を向ければ途端に足元がバタつく。

 泣きたい! できるか! でもやらないと家族や王子に恥をかかす!


 教師に厳しい言葉をかけられながら半泣きになりつつ、ついでに淑女が簡単に泣くんじゃないとも怒られた。貴族令嬢マジですごいな!

 因みにこの他にも座学もあるが、令嬢はダンス、刺繍、お香なんかもある。ゲームでは音ゲーとクイズとイラストロジックになっていた部分だろう。座学にはテストもあるが、令嬢がテスト自体を受けることは少ない。

 テスト結果は公開されるけれど、令嬢が上位に名前が上がらないのは、そもそもテスト自体を受けていないからだろう。庶民出身や男爵クラスなら学園のテストで上位に入ることが今後の就職活動的なもので目玉になるけれど、貴族令嬢にはそんなもの求められていないからだ。

 うん、かつての世界だと槍玉にあがりそうな感じではあるけれど、この世界だとそんな感じ。残念ながらこの世界ではまだ「人権」って発明されてないようだ。

 だから公爵令嬢も自分以外の誰かに王子の「特別」を押し付けたのかもなぁ。


 そうそうスマートフォン向け恋愛シミュレーションゲーム「金の指輪~特別な唯一無二 離れずにそばにいて~」では、当然タイトルとなる「金の指輪」がキーアイテムになる。

 あと「特別」もだ。

 この国にはある伝説があって、お互いに心を通わし、唯一無二となった存在と金の指輪をお互いの指につけあうと、この国の守護女神から祝福があるという。

 その女神の祝福を受けた存在が「特別」な存在で、その二人の間柄は婚姻関係よりも優先される。要するに、結婚していても、血が繋がっている親子や兄弟でも、特別な誰かと指輪を交換してもいいわけだ。

 で、その女神の祝福を授けられる場所が、この学園の裏にある小さな祠である。ゲームでもグッドエンディングでさらに特定条件をクリアしていると相手キャラか指輪をもらって、女神に祝福をもらえる。

 そんでもって、ヴァーシル王子はこの「特別な存在」に並々ならぬ憧れがあるのだった。

 幼いころから王族として公平であることを強いられ、各貴族のパワーバランスの調整を余儀なくされた王子にとって、誰にも咎められることのない女神の祝福を受けた「特別な存在」は心のよりどころだったのだろう。


 うん。まぁ。アリシアだって幼いころは王子の特別になりたいと思っていましたよ? 今だってそういう気持ちがないわけでもないよ? もちろん私だって王子の特別になりたい! って、思わないわけでもないよ?

 しかーし。無理だわ。この完璧超人の「特別な存在」とか無理。


 もちろん、特別な存在になったものが傾国となりえることもあるだろう。その存在から王子に取り入ろうとするような存在も出るだろう。

 でも、それくらい王家もわかっている。「特別な存在」は、たしかに結婚相手よりも優先される相手ではあるが、でもそれだけなのだ。公的身分ではない。あと他国には通じない。あくまでもこの国の独自文化。だってこの国の守護女神の祝福だから。

 もし「特別な存在」との間に子が生まれた場合とかも細かく決まっている。過去、いろいろあったんだろうなぁ。と、私はしみじみと思った。つまり、王子に「特別な存在」が出来ても、王子の婚約者である公爵令嬢アリシアの立場は保たれることになる。


 ゲームの裏側と言うか、現実の世知辛さを知ってしまった。

 まぁ、ヴァーシル王子が特別な存在を王妃にしたい。とか言い出せば別だろうけど、そんな国内が荒れるようなことをあの完璧超人がするとは、どーしても思えない。


「ゲームでも、そういえば婚約者に関しては言及してなかったなぁ」


 王子は、ノーマル、グッド、そして特定条件のクリアまでしているけれど、金の指輪をもらった時も婚約者については言及していない。

 アリシアも「さすが、わたくしが鍛え上げただけのことはありますわね」と言うだけだ。さんざんミニゲーム吹っ掛けられたことと、嫌みを言われまくったことを随分と綺麗にまとめやがったなこの女。と、思ったものだけど。うん、今の私ですが。

 これ、公爵令嬢アリシアが、王子に愛人の斡旋をしたってオチなんだろうか。

 だとしたらえげつねぇ。えげつねぇよ、公爵令嬢!


 男爵令嬢ならば間違っても公爵令嬢の政治的なライバルにはなりえない。他の貴族が取り込もうにも、ヒロインは公爵令嬢が目をかけて鍛え上げたという名目だろう。つまり、男爵家の親に公爵家がなっているようなものだ。

 自分の手ごまになりそうな、少女を王子の目に留まるように、王子好みに鍛え上げて差し出したわけでしょ。怖いわー。そして王子もそれわかってたでしょ?!

 いやいや、それでも頑張ったのはヒロイン本人だし。頑張らないと王子の好感度マジで上がんなかったから、決しておぜん立てされたのがすべてではない。はず。


 ……うん。貴族って怖いね。



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