公爵令嬢アリシア 目覚め2
アリシア
この話はおおよそ彼女の視点。
ライバル令嬢として転生。中の人は都内在住の社会人成人女性
寝込んで三日目。何とか起き上がれるようになった私は、メイドたちに体を拭いてもらっていた。この世界、お風呂はあるけど蒸し風呂みたいなもんなんだよね。
湯船にお湯をためる習慣はないっぽい。まぁ、銭湯があったっていう江戸時代の日本だって毎日入っていたかと言うと、そうじゃなかったらしいなぁ。ちなみに魔法はない。あれば使ってみたかったんだけど、ない。
他人に体を拭いてもらうのは、私の感覚だとかなり恥ずかしいけれど、アリシアにとってはそうでもない。と言うか、彼女にとってメイドは動く家具みたいなもんらしい。うーん、慣れない。
――文化の違い、文化の違い。エステをうけていると思えばいい。
心の中で念じているうちに終わった。恥ずかしかったけれど、さっぱりできたのはうれしいわ。
「ありがとう」
礼を言うと少し驚かれた。おう、これもまずかったか。でも、ほら。家具に、と言うか家電にだって礼を言う時はあるじゃない? うん。いつもおいしいご飯をありがとう! とか。だからおかしいことではない。うん。
決して寂しい一人暮らし歴が長かったからではない。うん。
さっぱりして、部屋着に着替える。うん、部屋着。部屋着だよな、これ。さわっとして光沢のある……これ絹じゃね? あ、絹だ。アリシアの記憶がそう言ってる。何とか産の絹を使った部屋着で、アリシアのお気に入りらしい。
ちなみに私は生前は絹の服なんて持ってなかった。と言うかあれ手入れが大変なんだよ。それを普段使いできるのは、手入れをする人がいるからなんだよ。そんな私がなぜ一目で絹じゃないかと思ったのはどこぞの骨太のおなごのおかげです。選択肢一回ミスったからね!
ともかく、落ち着いてお茶でも……飲めるかぁ!!!
なんだこの、この、なんか高そうな花柄、金縁のティーカップとポットとあとなんか細かいの。あ、アリシアの記憶がいろいろと教えてくれてるけど、割愛しよう。高いのだけはわかる。
「アリシア様、本日のお茶は――」
使用人が茶葉の産地とかミルクの牛の種類とか産地とかを説明してくれるが、正直違いがあるのかないのか。
「ありがとう」
根性で公爵令嬢スマイルを返し、カップをつかむ指先が震えないように全力を尽くす。お茶の味は、たぶんおいしかったと思いマス。
なんか果実みたいな味が遠くでした。高いお茶ってすごいなぁ。いや、ちゃんと淹れられたお茶がおいしいのか。
「美味しいわ」
そう伝えると、お茶を淹れてくれた人の表情がちょっとだけ緩んだ。本当にちょっとだけ。でも嬉しそうなのが気配で伝わる。うんうん、なんだかんだ言ってもやっぱり相手は人間だしなぁ。
私の職場はお茶くみとか廃れて久しい業界だったけど、友人には愚痴を言う子もいたっけ。
そんな事を考えていると、メイドの一人が少し慌てたようにやってきた。
「ヴァーシル殿下がお見えになっています」
――来た!




