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エピローグ

アリシア

 この話はおおよそ彼女の視点。

 ライバル令嬢として転生。中の人は都内在住の社会人成人女性


ヴァーシル王子

 ゲーム内で最高難易度を誇っていた攻略対象。アリシアの婚約者


ユーラ

 男爵令息。ゲームには登場していない。


ロザリー

 ヒロインとして転生。中の人は地方在住の資産家の娘の成人女性(Not社会人)

 さて、翌朝に自身の取り巻きの男子学生に会いに行こうとしたロザリーの目論見は成功しなかった。そもそもあの日は学園の卒業式であり、卒業するのはロザリーとその取り巻きであった子息たちである。――いや、もちろんそれ以外にも卒業する生徒は大勢いるのだが。

 よって、この日を境に多くの生徒は学園を後にしており、同時に退寮もする。そして多くの貴族子息がそうであるように、彼らもまた自分たちの手で退寮準備や手続きを行うわけではない。

 各家の使用人の手によって卒業式の翌日には殆どの部屋は綺麗に片づけられ、本人は朝早くから――または卒業式の後に直接――各自のタウンハウスに戻っていた。それはロザリーの取り巻きだった男子生徒たちもだ。彼らはダンスパーティの後、今までないがしろにしていた婚約者とその両親、そして自身の両親にこってりと絞られ、そのままタウンハウスに連行。もとい、直行した。

 そうなれば各自がもともと高位の貴族である。ただの男爵令嬢であるロザリーがおいそれと面会できる相手ではない。屋敷の前で門前払いをされ、せめて手紙だけでも、と差し出したが、手紙は届けられたかわからない。

 唯一貴族ではなかったルッツについては、婚約者が貴族令嬢であったため、卒業後は婿入りと称してそちらの領地に旅立った後だった。

 そしてロザリーの手紙は一応本人たちに届けられたが、読まれることなく暖炉にくべられている。


「よろしいのですか?」

「若気の至りというものは直視するのはなかなかつらいものだね。僕は君の美しい文字が、繊細に季節をとらえる感性が好きだよ」

「まぁ」


 青年の言葉に女性は頬を染める。美しい文字を書くことは貴族令嬢の嗜みだ。そして季節ごと折々の時候の句を織り交ぜるのも、貴族では当たり前のことだ。青年も、女性も、それが当たり前の世界で過ごしてきた。

 当たり前すぎて見落としてきたが、こうして改めて突きつけられるときついな。と、青年は手紙を燃やすとともに、幼かった自分に区切りをつけた。学園でのテストで初めて王子以外に負けた相手。今まで貴族令嬢の頭には砂糖と刺繍しか詰まっていないと思っていただけに衝撃的だった。だからこそ彼女に執着した。

 しかし、今になってみればわかる。男爵令嬢と、自身の婚約者である伯爵令嬢では当然教育の質は異なる。それは、文字の美しさにも如実に表れる。そもそも必要となる、される技能が異なるのだ。貴族令嬢には学園のテストで好成績を取ることを求められていない。それは、婚約者である彼女と話していればわかることだ。ロザリーとでは弾まなかった会話が婚約者とならば次々に会話が広がっていく。

 もしロザリーが学園できちんとほかの令嬢と交流を持っていれば、またはもう少し周囲を観察する能力があれば、自身の文字を顧みる機会があったのかもしれない。それはある意味で少女を囲い込んでいた青年たちのせいでもあるのだろう。

 この二人に限らないが、ロザリーの出した手紙の多くは読まれることがなく、彼女の存在事過去へと置き去りにされたのである。



 そしてあの日のもう一人の主役となるべきであったアリシアであるが、あの後変わったこととしては、正式に王太子妃となった。そしてあの日から変わったことがもう一つ。王子の傍らに黒髪の少年が置かれた事だろう。

 彼女は王子と黒髪の少年が巻き起こす犬も食わないようなすったもんだに巻き込まれながら、王子との間に実に三人もの子供を産み、王となった伴侶とともに文化、福祉の分野にて腕をふるうことになるのだが、それはまだ少し先のお話。

 そして、後世には困ったように眉を下げて笑う黒髪の青年と、その青年を取り合うようにしている王とその子供たち。そしてそれを呆れたように見守る王妃という肖像画が残された。少年については下級貴族出身で王妃の愛人であったとか、王の隠し子であったとも言われているが、詳しいことはわかっていない。

 ただ、その肖像画は見る者を幸せな気分にするほどに幸福な雰囲気に包まれていた。


 その肖像画のタイトルは「家族の肖像」と言う。


 現代知識無双とか、ゲームの知識で未来を知ってるとか。そう言うのではどうにもならない部分があると思うんですよ。

 それが教養。今回は文字の美しさとダンスの洗練さでした。

 はじめのうちはなれない様子とか、足を踏んで「キャァごめんなさい」も可愛げがあったと思うんですよ。でも卒業式の日に、目の前ですっごいダンス見せられて、なのに自分のパートナーが稚拙なダンスしか踊れないってどうなの? って、ふっと我に返った。

 で、パートナーチェンジの際になんとなく妙な欲求不満があって自身の婚約者を誘ってダンスを踊ればあたり前ですが真面目に練習している令嬢の方が上手なわけで。それでスーっと血の気が下がった。自分がこの先、ぶっちゃけると明日から身を置く世界がどういうことかを今更思い出す。

 そして視界の隅に笑顔だけど明らかに怒りを抑えている自分の両親とか今踊っている婚約者の両親とかが映るわけで。そりゃまぁ、誠心誠意謝るよね。若気の至りですすみません。ってなるよね。決定的なものがなかっただけにギリギリ間に合ってた。もしあの場でロザリーが「アリシアを捨てて私と一緒になってくれるんですよね」とか言い出してたら完全にアウトだった。巻き添えになって一緒くたに切り捨てられてた。

 そして彼らは家で絞られ、何とか婚約者との関係再構築中にやってくる稚拙な文字で書かれた直截的な内容の手紙。貴族の生活に戻った連中は思うわけです。「品がないな」と。なんちゅう自分勝手な。という話ですが、まぁそういう連中だから在学中に婚約者ほっといて別の少女に侍っていたわけですから。火遊びなんてそんなもんだ。遊んでいるときのスリルに夢中になっては見たものの、少し離れてみてみれば、それほど魅力的だったわけでもない。ただ恋に恋して、スリルに酔っていただけだった。

 そして高位貴族の傲慢さで、遊び相手はなかったことにされた。別段この後のロザリーがとんでもない不幸に見舞われるとかはありません。ごく普通に在学中に婚約者を見つけられなかった男爵令嬢として屋敷に帰り、どこか支度金をはずんでくれる商家に嫁ぐ程度です。それは別段特別不幸なことではなく、どちらかと言えば幸せな話。

 さて、そんなロザリーとは対照的に教養だけでのし上がった黒髪の少年は、国王家族に振り回されながらも王族の家庭教師としてそこそこ幸せに暮らしました。知識階級における手に職ってこういう事だよな。という話。


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