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この世界の片隅の物書きが世界の中心で創作について叫ぶ

書きたいものを書いて、商業誌で連載って、めちゃんこ幸せだな、と思う。


まぁ、自分のジャンルや性癖とかがメジャーな人って、本当に本当に羨ましい、と、ドマイナーな私はいつも思うけれど、メジャーなものが好きな人は、突出するのが難しい、というのも同時に苦悩としてあるわけで。


それを痛感したのが、ここ「小説家になろう」。

日々大量に投稿される異世界転生を横目で見てて、「こいつぁすげぇぜ」ってなるわけです。


そして、気づく。


ーーおいおい、私、異世界転生好きなのかよ?


書き始めて、なんですけど、別に好きじゃなかった。

面白いな、と思って書き始めたけど、私、別に異世界転生好きじゃなかったのよ。


書けば書くほど、違和感を感じて、もう今となっては、異世界転生しただけのファンタジーを書いている。

異世界転生の特色を理解しないで書いたから、夏目漱石もびっくりの「上滑りの文化」状態。


魂がない。


いや、物語としては、ちゃんと真面目に書いているし、引きも意識しているし、キャラクターもちゃんと愛している。

ただ、異世界転生の意義について考えると、「突然今までの常識をぶっ壊されて戸惑っているけど、この世界で位生き延びるぞ!」というサバイバーな話になっちゃってて、「みんなが大好き異世界転生じゃない、これきっと!」って感じ。


異世界転生じゃなくて、なんかもう、普通のファンタジー小説として読んでくださってる方が、ありがたいことに大半じゃないかと思います。

未完は心残りになるので(読んでくださる方がいてくださる以上)、絶対最後まで書きますけれど、異世界転生モノなんて、胸を張って言えない感じになってしまう気がします。


でも、仕方ないわ。


だから書くんだもん。

みんなが好きなものを書こうとしても、書けない私の作風こそ、私なりのオリジナリティだし、私のアイデンティティなんだと開き直る。

メジャーなものを書いてみたいと思ったけれど、出来なかった。


そこに喜びがなければ、書けない。


そもそも、書き始めが不純なのが、いけない。

書くということは、私のとってとても純粋な、大事なことだから。

私には商業で書きたいとか、本にしたいとか、そういうことよりも、大事なことだったと気付かされた。


今、一応、商業誌で漫画原作をさせてもらっていて、仕事上では商業的なことを矛盾せずに考えられる。

まず第一に作品は商品だし、漫画になる前提の漫画原作は、最初から私だけのもの、とは言えない。

一緒に作ってくださる作家さんや編集さんが、売ってくださる営業さんがいるから。

その人の生活がある。


お金をもらうと、好きなことだけ書くことはできなくなる。

商業に行くと、ダメになっちゃう人がいるのは、個人的にはそこだと思う。

でも、そこをうまくやれる人がいて、その人は成功できる。


でも、それって、運だから。


作品を作る力と、市場に受け入れられる作風というものは、決して比例しない。

ただ、そんなもんぶった切るくらいの圧倒的な作品はもちろんある。


それを踏まえて、商業が絶対じゃないって、私は知っている。


商業に出て、ダメになった素晴らしい作家さんをたくさん知っているし、逆に、商業で花を咲かせた作家さんもたくさんみてきた。


今はこうして、自分で発信できる時代だから、読み手はそこからお気に入りの作家を見つければいい。

今なら、作品を作る力があれば、その上コアなファンがつけば、商業に必ず出なくっても食べていくことはできる時代になっているんじゃないだろうか。昔、芸術家を支えたパトロンのようなファンがつけば。だって、パトロンは一人じゃなくていいし、王族や貴族じゃなくったっていいし、WEB上で募れる一般の読者さんでいいんだから。


ただ、そう考えている人が作り出す作品量が増える。

しかも、その大量の作品のクオリティは、全く保証されていない。その中から自分で自分好みのものを探し出すのは、ものすごく難しいだろう。

その大量の作品に当たって砕ける読者が、気力を失う前に見つけ出してもらえるか。

それが、運だ。


文字は、漫画と違って、みんな同じ記号を使う。

書き出しが面白くないとはねられてしまう。ーーーーそのあと、どれだけ怒涛の展開が待っていたとしても。


出版社は必要なのか、という議論が昨今よくされるけれど、昔は出版社がややこしい作品を発掘して、パッケージが不器用な作品も、ちゃんと取り出して商品を吟味していた。

必要とあらば、雑味になっている素材を別のものに切り替えたり、パッケージをデザインしなおしたりして、商品を世に送り出す。

編集がその怒涛の展開まで、読者を手放さない方法を一緒に考えるという方法で……。

出版社はキュレーターの役割を大いに果たしていた。


今の時代は、自分で発信できるからこそ、作家のセルフプロデュースが必須事項になってしまった。

なんならクリエーター自身の影響力があればある程いい、なんて、内向きのクリエーターにはしんどい時代だな、と思う。


私は、内向きのクリエーターのこじらせ自己表現の大爆発が大好きだから、最初から小ぎれいにまとまっている作品は綺麗すぎて少し物足りなく感じてしまったりする。

でも、自力でそこまで作り上げてしまう作家さんへの敬意は、もちろん、最大限に払いたい。


でもでもでもでも、一見不細工な、こじらせ大爆発、そういうのが読みたいと思う。

読んでて、胸を押さえてひっくり返るような、そういう、会心の一撃を喰らいたい。


そして、そういうのを、いつか私は書きたいから、一生に一度でいいから書いてみたいから、なんかもう、私のメインフィールドである小説では、市場とかを意識するのはやめようと、振り切って考えたので、別にたくさんの人に読まれなくってもいいんだ〜〜ってのを書き散らそうと思う。


だって、これ、仕事じゃないんだもん。


純粋に苦しんだり楽しみたいなぁ……!


素晴らしい原石を抱えて、運悪く発掘されない不器用な作品を紡ぐ人々が、運よく日当たりの良い場所に転がり出る幸運を祈る。

そして、その会心の一撃を、お見舞いされるのを、私は心から待っています。


その、くるかこないかわからない日を待ちわび、呪うのではなく、その日が来るまで苦しんで楽しんで、書き続けられたなら、その人は創作の勝者だと思う。


私は、創作の喜びを余すことなく感じられる、そんな書き手になるのが目標です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 書きたいものを書く!これが一番ですよ!趣味なんですから、楽しんだもの勝ちですー(*´ω`*) みんなが好きなものを書くのではなく、自分が好きなものを書く。 そうじゃなかったら、魂込められ…
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