4話、終わりと始まりの1年(1)
遅くなってしまってすみません!m(_ _)m
どうぞ御覧くださいませ!
『良く、頑張って話したな。俺は嬉しかったよ。ありがとう』
彼がそう言ってくれた日から、早数ヵ月が過ぎ、明日になれば1年生の終わりを迎えるというところまで来ていた。
あれからも私は何もできず、毎日いじめられた日々を過ごした。結局、私は臆病なままなのだ。でも、少しだけだが変化はあった。
まずは秀才君こと、錦城秀明君はあれからも些細な事ではあったが助けてくれた。ある日突然、学校の誰にも人目がつかないところに呼び出されては、二人きりで話したりもした。そのときにはいろいろなアドバイスを貰ったり、私の話を聞いてくれた。何も変わらないままの私を、放っておくこともせず親身に接してくれたのだ。
なんて優しい人なんだと、何度も思った。そのかいあってか、最初は彼に対して警戒していた部分はあったが、それは次第になくなっていった。
信頼と呼べるまでは行かないが、それなりに信頼しているときもある。
そして次は、私に錦城君以外に話しかけて来た人がいるということだ。あれは放課後のことだった。
私は日直だったので一人で黒板清掃をしていたのだ。本当はもう一人いるのだが、全てを私に押し付けて帰って行ってしまった。「クズ一人でこれくらいは出来るでしょ!」と言葉を残して。
日直は意外とやるとこが多い。黒板清掃はもちろん、軽く教室の清掃や窓の鍵閉めの確認、学級日誌などなど。
大変なことではあるが私は辛いことほど、終われば達成感を感じるタイプなので地味にありがたいとさえ思ってしまった。
教室には私いがいは残っていない。しかし、机の上には私の鞄以外もう一つ乗っている。廊下側の一番前の席だ。
私たちの教室では、テストが終わるごとに席替えをするので皆、席の場所は変わっている。ただし、例外が一人だけ。
それは私だ。私だけは全然席は変わっていない。あのときのままだ。今では私の邪魔さえしなければいい、そんな風にも思っている。
話はそれてしまったが、廊下側の一番前の席はこのクラスの学級委員長だ。彼女の名前は田所あかねさん。自分から学級委員長を引き受け、今日まで1年間頑張っていた。それも、明日で終わりだと思うと肩の荷が降りるのだろう。ここ1ヶ月は張積めていた顔が、少しだけ緩くなっているような気がした。
ガラガラガラ………。
突然教室のドアが開いた。黒板清掃をしていた私は何事かと思ってドアの方を見た。そこには息を切らした学級委員長が立っていたのだ。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「…………………」
私は驚きつつも、息を切らしながら下を向いている彼女の事をガン見してしまった。
慌てて目を逸らそうとしたが、それよりも前に彼女が言葉を発した。
「っ遅くなってごめんなさい!」
「…………………え?」
突然のことで驚いた。まさかいきなり謝られるとは思ってもみなかったのだ。いつもは警戒心ムンムンの私もその時ばかりは、呆けてしまった。
「っえと、あの…………」
驚きながらも小声で反応する。それに気づきいた彼女は、「っあ!えと、その、いきなりごめんなさい……」と小声で謝ってきた。
別に私に対して彼女が謝るようなことは何一つしていないので、「あぁ、いえ大丈夫です」とだけ答えておいた。
それから彼女は私に何かを言いたそうに、モジモジしていた。ずっと。ひたすらに。
私は黒板清掃の途中だったので、進めていいのか、このまま待っていた方がいいのか良いのかよく分からなかったが、ずっとモジモジしていた彼女がようやく口を開いた。
「て、手伝ってもいいですか?」と。
またもや私は呆気にとられてしまったが私は人の親切を蔑ろにするほど、心は腐っていないので、取り敢えずお願いすることにしたのだった。
***
(あの時は驚いたなぁ)
今でもその事はたびたび思い出される。「手伝ってもいいですか?」と。たったその一言だけだったのに、なぜか嬉しかった自分がいるのだから不思議だ。
世の中何があるのか分からないとさえ思ってしまう。
一体どうゆう心の心境なのかは知らないし、分かりたくもない。ただ単に同情したのかもしれない。そうだとしたら、随分と迷惑な話である。学級でも学校でも腫れ物扱いの私に何故話しかけてくるのか。一度問いただしてみたいと思った。
「─よしっ。じゃあ教科書236ページ…を清原。読んでくれ」
「はい」
今は四時間目の国語の授業だ。明日は修了式だというのに、なぜ授業をするのか。まぁ授業だと言ってもただの音読だけにしか過ぎないのだが。普通だったらもうやることも殆どないはずだから、自習か授業以外のことをするはずだ。
実は今日の時間割りの1、2、3時間は全部自習だった。自習といっても皆、春休みの課題を一生懸命終わらすために必死だったのだが。その間、担当の先生たちはというと、居眠りをしそうになったり、パソコンでいろいろな事をしていた。
かくゆう、私も春休みの課題を一生懸命しており、少しでも楽を勝ち取れたのではないかと思う。
そんなこんなで、国語の授業の残りを課題で潰していると、四間目修了のチャイムがなった。
先生に挨拶をしたと同時に私はお弁当箱を持って、ある場所へと向かう。最近ではどんどんパシリが嫌になってきた私はある場所へと向かうことにしているのだ。
下を向きながら早歩きで行く。通りすぎる生徒にはクスクスと笑われているような気はするが、そんなのはお構い無しだ。いい加減慣れた自分がいるから怖いものだ。
前よりは居心地は悪くない気がする。本当に慣れというものは怖いものだ。何度でも言おう。慣れというものは怖い。
***
ガチャリ。
ここは以前私が随分とお世話になった場所。
そう、屋上だ。
私が自殺未遂をし、あの人に迫られた場所。あまり良い思い出ではないのだが、最近ではここでお弁当を食べるのがお気に入りだ。ここでなら、一人で愚痴を呟いても独り言を言っても誰にも聞かれない場所だ。
ここの屋上は少しだけだか変わってきている。以前は紐で仕切られていたが、今では紐は無くなっている。ドアは相変わらず古びており、工夫しないと開かないようになっている。
ちなみにだか、私とあの人以外はこのドアを開けることは出来ない。もし、他の生徒が開けようとしても相当な時間がかかるだろう。
何故私がすんなりと開けれるかというと、私の従兄弟が以前ここの生徒だったのだ。今は卒業して、どこかの大学に行っているらしい。
従兄弟からは、私がここに入学すると聞いて電話をしてきた。『入学祝いに良いことを教えてあげるよ』と言って。
『辛い時とか悲しい時とか、ここに来ると気持ちがパアッって晴れるんだ。凄くオススメだよ。今は想像つかないだろうけど、行ってみたら分かるよ。それじゃあ教えるから良く聞いておくんだよ…………………』
と、こんな感じて教えてもらい上手くここに入ることが出来たと言うわけだ。
そして、ここを開けることが出来るもう一人の人。
ガチャ…………。
「…ん?清原さん。……悪いな、今日はここにお邪魔してもいいか?」
「あ、はい。どうぞ」
「サンキュ」
ジュースを飲みながらドアを開け、私に話しかけて来た男。それに対して私はぶっきらぼうに答えた。
前にもにたようなパターンはあったが、そう。あの男なのだ。
今ではあまり気に入らない部類に入ってはいる。あの男なのだった。
ありがとうございました!
(2)に、続きますのでもう少しお待ちください