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2話、学級委員長 その1

 





 ─皆さんは1年6組にクラス委員長は居ると思いますか?


 委員長の役割は、クラスをまとめる事が主な仕事です。主な仕事以外でもクラスの雰囲気作りだったり、困ってる人がいたら助けたり、先生に頼まれた仕事をしたりします。

 でも私はクラスをまとめたり、先生に頼まれた仕事が出来ても肝心なことが出来ていません。


 それは─────



 困ってるひとに手を差し伸べることが、出来ていないことです。



 私達のクラスでは現在、いじめのターゲットにされている人がいます。その子の名は、清原美琴さんです。彼女はあることがきっかけで、次第にいじめがエスカレートしていると聞いています。


 そうなんです。所詮はただ、私は聞いているだけなんです。いつからだとか、どうしてなのか、私には全く分かりません。別に興味がないわけではないのです。ただ単に私もいじめのターゲットにされるのが怖いだけの臆病者なんです。

 

 頑張って声をかけたい!でも、あと一歩がいつも出ない。それがいつも、もどかしくてたまらない。



***


「かあねー、見てみて!今日もあいつコキ使われてるよー」


 笑いながらバカにしたように声をかけてきたのは私の中学からの友達である空ちゃんです。空ちゃんは私とは違い、活発で運動神経が凄くいいスポーツマン女子なんです。


「う、うん。そうだね」


 そんな彼女とは対照的に、うまく返答が出来ない私は言葉を濁らせるしか出来ません。全くもって、最低です。

 かくいう私は、このクラスの学級委員長を務めています。田所(たどころ)あかねと言う名です。彼女とは性格が本当に対照的でして臆病だし、お人好し(空ちゃんいわく)だし、上手く人に声がかけれません。

 でも私はお飾りでしかないかも知れませんが、このクラスの学級委員長をしているんです。

 今日も今日とて、ただ見ていることしか出来ない私は一体どうしたらいいのでしょうか。



***


 今日も結局は何も出来ずに放課後を迎えてしまいました。私は富中先生に頼まれ事をされ、それがもう終えたので今から教室に戻るところです。


 今日も清原さんは水をかけられたり、物を盗まれたりしたのに反論ひとつしません。何故なのでしょう?実際はもう、諦めているのかもしれません。

 最初は反論している姿は見ましたが、いつしかそれは無くなっていました。私も私で、声をかけたいのに声をかけれない。ただの言い訳にしか過ぎないことは分かっているのです。

 でも、私は臆病者だから………なにもする事はできません。

 全くもって、酷い話でしょう?私はお人好しの割には何も出来ないのです。本当に馬鹿らしくて、どうしようもありません。


 カツ、カツ、カツ……………。


 廊下にはローファーの音が高々に響いています。ほとんどの生徒は皆、部活に行ったり帰宅した生徒で周りはがらんとしています。私の友達の空ちゃんは、バレー部員なので部活に行っています。かくゆう私は、帰宅部なのですがね。スポーツは苦手なんです。


「………………″私を助けて″や″もう止めてください″って、そうすれば何かは変わるだろう?………」


 (ん?)


 なにらや声がします。男の人の声でしょうか?しかもこの声はどこかで聞いた覚えがあります。誰でしょうか。

 今すぐ覗きたいけど、邪魔しては悪いですし、でもとても気になりますし………。


(あぁ!!どうしましょう!!)


 気になる、気になる、でもっっ!!


(チラッとならいいでしょうか)


 結局は欲望に負けてしまった私は、ドアからチラッと覗き見ることにしたのです。


 体勢は低く、ばれない程度にチラッと………。


 そうすると私の視界に最初に入ったのは私たちのクラスメイトである清原美琴さんでした。なんともビックリです。そして、清原さんの前に後ろ姿で話している男の子はなんと、皆のアイドルである錦城秀明君ではありませんか!しかし私は妙なことに気づいたのです。

 

 それは、錦城君が清原さんに説教?みたいなことをしているのです。私は頭にハテナマークが浮かんでしまいましたが、瞬時に理解します。

 今の彼は私に出来なかったことを平然とやってのけているということです。


 私は上手く人と話せず、コミュニケーション能力は高くありません。皆の前で、「もう、やめませんか」と言うことしか頭になかったもので、このような手の差し伸べかたは、考えてもみませんでした。


 あぁ、彼はすごいなそう思いながら、いつの間にか話はそろそろ終盤へと差し掛かっていますかと思いきや、


「後は、お前次第だよ。変わりたいと思うならば行動、発言をすることだ。まぁ、なんだ…。さっきからいきなり偉そうなことばかり言って悪かったな。─じゃあ」


(えっ?話終わった………ヤバイです!!どうしましょう!)


 慌てた私は兎に角どこかに隠れるしかありません。ですが、残念ながらそうそう上手く隠れる場所はないのです。


 あわわと慌てながらキョロキョロしていると瞬時に私の後ろにあった自販機に目が入ったのです。


(そうだ!そこに隠れましょう!!)


 自販機の側面に隠れてしまった私は、兎に角じっとしている他ありません。ですが、彼がいつ教室から出ていくのか見ておかなければならないので、スッと少しだけ顔を出します。スッとです。スッと。


 ですが、彼はすごいですね!さすが、秀才君と言われているだけあります。


 なんと、隠れているのがバレてしまったのです。


 本当にまたままなのですが、私がスッと顔を出したと同時に、彼と目が合ってしまったのです。そして彼は優しいのか、こっちを見たあと何事もなかったかのように、背を向けて帰っていったのです。


 (あぁ、穴があったら入りたいです、本当に…………)


 心の底からそう思いました。地味に私の黒歴史です。



 しばらくした後に清原さんも教室を出ていきました。彼女は下を向きながら何かを考えているように見えたのです。もしかしたら、さっき彼に言われたことに対していろいろと考えているのかも知れませんね。彼女も人間です。お人形ではありません。

 

 私も彼みたいに何か言葉をかけれるように、もう少し勇気を振り絞っていきたい。そう思うひとときでした。


 私も学級委員長として、責任を持ってやっていきたいです。

 まずは、彼女に話しかけることから始めます。昼間は皆の目がありますし、彼女も昼間に話しかけることは望まれていないかも知れないので、さっきのように放課後に声をかけれたらいいなと思っています。そして、仲良くなったら隣に一緒に立てるような関係になりたいです。それはもう、親友と呼べるくらいな関係に。

 今はただの理想でしかありませんが、それを最終目標にしながら、策をゆっくりと練っていきたいです。


「よーーーし!頑張りますよ!!」







 誰もいない教室の中で、声高らかにそう誓ったのであった。


 




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