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1話、私と彼の始り(1)

「いじめと私と秀才君」を連載されて頂きます。

最初はかなり暗いお話になると思いますが、徐々に徐々に明るい話になっていく予定です。

主人公の葛藤や、秀才君の手助けの仕方など少しずつでも主人公が変わっていく姿を皆さんにお届けできればなと思います。

 





 夕焼けの光が放課後の教室を真っ赤に染め上げている。この広い教室に今は、私と彼の二人きりだ。


「お前にとって、この学校生活は今のままでいいのか?」


「・・・・・・」


 彼の発言に対し、私は窓に背を向けてうつ向きながら黙っている。彼とは1メートルくらの距離はあるが、今まさに彼は私の目の前にいると言っていいだろう。


「変わりたい、変わらなければならないとは思わないのか?」


「・・・・・・」


 真剣実を帯びた彼の問いに私は再び答えることは出来なかった。私と彼の二人きり、この空気間が異様に怖い。


 出来れば今すぐにでも逃げ出したい。でも、逃げれば後で何をされるか分からない。


 思い出すのはあの恐怖のみ。体が怯んで上手く動かない。


(早く、ここから逃げ出したいなぁ)


 内心怯えながらも今日のことを思い出す。

 何故、こうなってしまったのかを………。



***



「おはよー!」

「っあ!おっはよー、今日は早いじゃん!」

「へへっ。頑張って早起きしましたのでっ!」


 藍色のブレザーに身を包み、白のチェックが入った膝丈までの藍色のスカート、胸元には水色のリボンを着けている。

 キャハハと笑う女の子たちと私は同じ制服を着ている。


 現在私が通っているのは、私立西江高校 。

 西江高校には普通科しかなく、一学年が6クラスの40人体制。かなりの大規模校であると思う。


 今の季節は秋。紅葉が見頃の季節である10月の半ばだ。チラリと寒さが見え隠れし、そろそろ秋物の服ではなく、冬物の服へと衣替えの時期になっている。


 黒みがかった茶色の髪を2つ結びにして、憂い顔をしている私。清原美琴(きよはらみこと)は学校への登校中である。

 そして、私はその子達の後ろを一人でたまたま歩いていたのだ。


(いいなぁ。私にもいつか()()()()が来るといいな)


 でも、それはきっと叶わないであろう儚い夢と化する。


 なぜなら、私は今いじめを受けているからだ。


 主には同じクラスの女子たちから。


 私が何かおかしなことをしたのだろうか。何故、いじめられているのかきっかけが分からない。ずっと頭の中はグルグルしている。






 ─始まりは3か月前。


 からっと晴れた天気に生暖かい風が吹くようになる、7月の前半。これはいじめだと、私人身が確信する前のこと。



 最初の頃は面白半分だったのか、あるいは私の反応をただ楽しんでいただけなのだろうか。


 ある時、私の机の引き出しの中から教科書が一冊消えたのだ。


(あれっ?おかしいな。全部中に入れたはずなのに………。無くなってる)


 グルグルと机の周りや通学鞄の中を見たりしたが、やはり無かった。しばらくの間は、どこかに落としたのかと職員室の先生に訪ねたり、クラスの生徒に聞いたりした。でも、やはり無かった。


 でも放課後になって、私はやっと気づいたのだ。

 いや、私は気づくのが遅すぎたのだ。


 後ろの棚近くで、3人の女の子達が私を見てクスクス笑っているのを……。


(──えっ?待って、まさか……ね?)


 ドクンドクンと心臓の鼓動がうるさい。額からは、じんわりと汗がにじみ出ている。そして、私は無意識に自分の鼓動を止めようと制服ごと心臓を鷲掴みにする。


(止まれっ!止まれっ!)


 ドクドクドクドク………。


 次第に早くなった鼓動をいくら止めようと思っても止まらない。


 教室の中には10人くらい残って居た生徒も気づけば私を含めて、4人になっている。


 今、何かを言わなければ何も解決しないと思った私は声をかけることにした。


「あの…。私の教科書しらない?」


 クスクスと笑っていた3人の女子たちは知らんぷりな顔をしながら答えた。


「さあ?知らなーい」

「どこかに落としたんじゃない?」

「そうそう。例えば………、ごみ袋の中とか?」

「……え?」


(ごみ袋?………えっ?!今日は何曜日!)


 ばっ!と時計と日付を確認する。


 今日の日付は金曜日。夕方の5時にはごみ収集車がくるのだ。場所は体育館裏で、私たちの教室のからはかなり離れている。

しかも今は、午後4時45分。


(うそっ!急がないと間に合わない!)


 クスクスと笑う女子たちを後にして私は、急いでごみ捨て場に向かった。本当は廊下を走るのはあまり良しとはされていないが、今回ばかりは仕方がない。


「はぁ、はぁ、はぁっ……!」


 3階にある1年の教室は1組から順に並んでおり、3組と4組の間には階段がある。私たちの教室は1年6組なので一番端っこなのだ。


 急いで3回分の階段をかけ降りる。1階まで降りれば、校舎の正面玄関ではなく裏の方の玄関を出て左に曲がる。曲がっても体育館までは少し距離があるので急がねばならない。


「はぁ、もうっ……少し」


 息切れしながもなんとか、もう少しでごみ捨て場に着いたと思った私はなんとも油断してしまっていた。体育館裏に行くために右に曲がった瞬間、


ドンッッ!!!


「きゃっ!」

「うわっ!」


 誰かにぶつかってしまったのだ。その反動で、お互いが弾かれてしまい、尻もちをついてしまった。


「痛てて……」


(お尻がジンジンする)


 でも、今はゆっくりしている暇はない。


「すみませんでしたっ!では!」


 相手の顔を見ずに速攻で謝った私は、急いでごみ捨て場へと向かった。


「っあ!おい、待てよ!!」


 と、ぶつかった人から声が聞こえたような気がしたが今の私の耳には届かない。



「はぁ、はぁ、はぁ。やっと、着いたっ…!」


 息切れしながも、やっとついたごみ捨て場を確認する。確認することは、ただ一つだけ。


 私たちのクラスのごみ袋がちゃんとあるかどうか。


 幸い、時間はギリギリだったらしく。5時までは後2、3分のところだった。


(早く探さないとっ……)


 ガサッ、ガサッ。


 金網を退けて、ごみ袋を引っ張り出す。ごみ袋は山積みになっており、探し出すことは苦労しそうだ。


 そうして時が過ぎ………。


「あったぁ~~!!」


 少しだけ薄暗くなった空に、両手で持っていた教科書を掲げる。


 現在は午後6時。夏、ということもあって真っ暗では無かったのが幸いしたのか、周りは今でもハッキリと見える。


 やったことと言えば、一つ一つのごみ袋をあさり、ごみ収集車が来れば「少しだけ待って下さい!」と土下座をしてお願いをした。(時間は結構かかってしまったが)



(これでもう、終わりだといいけど…)


 どこか胸騒ぎを残しながら、この日の夜は更けていったのだった。






読んで頂きありがとうございました。

他にも「異世界で今日から魔王という名の妻になります!!」や短編小説で「路地裏の僕と女の人」を載せておりますので、興味のある方は是非とも、そちらの方もよろしくお願いします。

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