表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/26

第9話 「教育的指導」

 俺は、ジャンさんに指示を受けた後……

 順番待ちをしながら、リュカと話していたが……

 いよいよ順番が来た。

 さあ、入店だ。

 

 店の外見は、少し豪華だが、ごくごく普通の建物。

 しかし、中に入ると……

 迷宮の入り口を補修した、大仰な石の扉が目に飛び込んできた。

 

 そう、この店は迷宮の上に家屋を建てた形となる。

 客は入店して、屋内から迷宮へと潜るのだ。

 

 ふと見れば、レンタル衣裳完備とある。

 何と!

 希望者には冒険者の職業別衣装も揃えているのだ。

 「気分は、迷宮探索をする冒険者!」

 というのが、店側のキャッチフレーズであるらしい。


 ジャンさんが、先に入って手招きしている。


「クリス君、交流会の会場は地下9階のレストランだ。魔導昇降機で降りるよ」


「了解です、リュカ、行くぞ」


「ま、待って下さいっ」


 リュカの奴、周囲に綺麗な女子がたくさん居るものだから、さっきからず~っと「きょろきょろ」していた。

 興奮しているのか、完全に目が泳いでいた。

 

 牝馬に興奮した牡の競走馬じゃないけど、これでは入れ込み過ぎだ。

 今日は王国の完全貸し切りだから、彼女達も全員参加者だろう。

 運が良ければ話せるし、更に幸運なら……知り合いになれるかもしれない。


 しかし今日は、リュカへ告げておく事がある。

 

 こいつは、最近スタンドプレーが目に余る。

 ここ何回か、合コンに出席した先輩や友人から、奴が名指しで言われた事もあった。 

 スタンドプレー……

 すなわち合コンにおいて自分の幸福だけ追い求め、

『チームプレーに非協力な事』である。

 

 合コンとは、時にチームプレーが必要だ。

 チームプレーとは、助け合いの精神って事。

 好みの子がバッティングした場合も、よほどの事情がなければ、譲り合いの精神だって持たなきゃならない。


 周囲を見回していたリュカが、ようやくこっちを向いたのを頃合いと見て、俺は言う。


「リュカ、今のうちに言っておく」


「え? 何すか」


「最近、お前はマイペース過ぎる。今回俺達は、ジェロームさんのフォローもするんだ。自分の事ばかり考えるなよ」


「ええっ!? 僕、そんなにマイペースっすか?」


 リュカ……お前、何だそれ?

 その言い方だと、やっぱり自覚していない。

 

 だから、俺は念を押す。


「もろそうだ。少し態度と行動を改めろ……俺の下へ、結構苦情が来ている」


「…………」


 俺の言葉に不満なのだろう。

 認めたくないのだろう。

 リュカの奴は、顔をしかめて黙り込んだ。


 一応、俺は聞いてみる。


「何だ? 不満か?」


「ええ、先輩の言う意味が、全く分からないっす」


 首を横に振るリュカ。

 仕方がない、分からないようなら……

 容赦なく、引導を渡そう。


「じゃあ、ここでもう帰れ。今後は、お前の世話などもうしない」


「へ?」


「へ? じゃない。今回のイベントだって俺が全部ジャンさんへ頼んで、彼が尽力してくれたお陰だ。お前が自分の事しか考えない『クレクレ君』なら、これからは、単なる職場の先輩後輩のみの付き合いだよ」


「えええっ!」


 予想もしなかった俺のきっつい物言いに、リュカは驚いたようだ。

 口を「ぽかん」と開けてしまう。

 

 やっぱりそうだよ。

 こいつは俺が優しいと思って、存分に甘えていたのだ。


 でもここで、俺が甘い顔を見せたら、こいつの為にならない。


「さあ、すぐ帰れ。俺からジャンさんへ伝えておく」


「ご、御免なさい! あ、改めますから! 先輩に見捨てられたら、僕は一生結婚出来ないっす!」


 うん、さすがに、こいつは馬鹿じゃない。

 俺が、本気で怒っているのを感じ取ったらしい。

 でも、まだまだ手綱を緩めてはいけない。


「本当に反省したか?」


「しましたっ」


「だったら今日、行動で見せろ。俺は、しっかり見ているからな」 


「うう、了解っす」


「お~い、どうしたぁ?」


 ジャンさん達から離れて話していたから……

 今の会話は、聞かれてはいない。


 俺は片手を挙げて応えると、ダッシュして、ジャンさん達へ追い付いた。

 

 全員で、魔力により動くエレベーター、魔導昇降機に乗り込む。

 暫し経ち、俺達と他の客を乗せ、魔導昇降機は発進。

 あっという間に、地下9階へ到着。

 そして、扉がすうっと開けば……

 目の前はすぐ、レストラン『探索』の入り口なのである。


 レストラン入り口扉は、大きく開け放たれていた。

 既に、たくさんの人々が参集しており、様々な衣装が目につく。

 皆、ここぞとばかり、気合を入れており、女性は派手にお洒落をしている。


 ジャンさんが、壁に掛かっていた魔導時計を見た。

 そして、全員へ言う。


「よっし、じゃあ、ここで一旦解散だ。……午後7時少し前、店内にある宝剣の間で、待ち合わせとしよう」


 宝剣の間……それが店内にある、貸し切り個室の名前なのだろう。

 そこで、ジャンさん主催の、2次会的な飲み会をやるのだ。


 ジャンさんからの、待ち合わせ指定時間は……

 午後7時少し前……よっし、覚えたぞ。


「宜しくお願いします」


 俺は頭を下げた。

 えっと、リュカにも頭を下げさせ……

 って、何だ、こいつ!

 また、女子達に見とれていやがる。

 ホント、懲りない奴だ。


 仕方なく、俺は拳骨を喰らわせてやった。


 ごっつん!


「あだっ!」


 頭を押さえて、痛がるリュカへ、俺は冷たい声で言う。


「……お前、さっきの約束を、もう忘れたのか? ここから……帰るか?」 


「あううう……す、すみません」


「可愛い子が多いから、気持ちは分かるがな」


「で、ですねっ」


 怒った俺が一転、笑顔を見せたので、リュカはホッとしたようだ。

 これくらい薬を効かせておけば、こいつも少しは反省するだろう。


 俺とリュカの『じゃれ合い』を見て、ジャンさんがニコッと笑う。


「うん! 会の冒頭に行われる、閣下の挨拶だけは、きっちり聞いておいてくれ。じゃあ、さっきの約束……頼むぞ」


 ああ、ジェロームさんのフォローの件の念押しですね?

 当然ながら、俺は、元気良く返事をする。


「了解しました」


「ははは、じゃあ後で」


「では、一旦失礼する」


 赤い流星こと、ジャンさんは店内へ去って行った。

 そして、御曹司のジェロームさんも一緒に。


 仕草や今の挨拶を聞く限り、ジェロームさんはガチガチの軍人、騎士だ。

 俺のフォローが、上手く行くかどうか、少し不安はあるが……

 ここまで来たら、やるしかない。

 それに、この国の重鎮の子息であるジェロームさんとも仲良くなれば、今後損はない……と思う。


「さあ、リュカ……俺達も行くぞ」


「は、はいっ」


 俺の機嫌が、完全に直ったと感じたのだろう。

 リュカも、嬉しそうに笑っている。


 大きく頷いた俺は、混雑する店内へ入るべく、リュカを促したのであった。

いつもご愛読して頂きありがとうございます!


東導 号作品、愛読者の皆様へ!


『小説家になろう』様で好評連載中の、

拙作『魔法女子学園の助っ人教師』


遂に!

『1億PV』を突破致しました!

読者様には深く感謝致します。


https://ncode.syosetu.com/n3026ch/


書籍版は最新第4巻が7月21日に発売されました!

ルウが敵を見据え、モーラルが舞う……

そんな表紙が目印です。

店頭でぜひお手に取ってくだされば嬉しいです。

既刊第1巻~3巻共に発売中です。


最新刊と既刊、書籍版が店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。

既刊をお持ちでない方は、この機会に4巻まとめ買い、一気読みなどいかがでしょうか。

皆様の応援が次の『続刊』につながります。


☆『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


謎の死を遂げた青年ケンは、異世界の辺境村へ少年として転生。数奇な運命に翻弄され、苦難の末に幸せをつかんだケンは、愛する家族を守ろうと奮闘する。

『奇跡の再会、奇跡の邂逅編』のパート最終話をアップしました。


本日10月15日、両作品とも更新しております。

ぜひお楽しみ下さい。

応援宜しくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ