第14話「運命の再会①」
フルールさんは、絶対に怒っている!
事もあろうに、俺が、他の女の子を引き合いに出したから。
ああ、俺の大馬鹿!
完全に嫌われた!
折角、バジル部長にフォローして貰い、彼女には、良い印象を持って貰ったのに……
もう!
おしまいだ。
と、俺が頭を抱えたら、フルールさんが尋ねて来る。
「へへへ、変な事を! お、お、お聞きして……良いですかっ!」
あれ?
フルールさんの声が……怒っていない?
何か、慌てている。
盛大に噛んで、完全に上ずっている。
フルールさんは、顔を「くしゃくしゃ」にして俺を真っすぐに見る。
そして、尋ねて来た。
「あ、貴方の名前を教えて下さい」
え?
名前?
今更?
「ええっと、クリストフ・レーヌですけど……」
「い、いえ! ほ、本当は! ち、違う、な、名前なのではないですか?」
盛大に噛みながら、絞り出す、フルールさんの声……
な?
でも?
ええっ?
本当は違う名前って、何それ?
「……ち、違うって、ど、ど、ど、どういう意味ですか!?」
「ほ、本当の名前って……意味です」
「本当の名前!?」
「間違っていたら……御免なさい……トオルさん」
「え、ええええっ!? ト、トオルさんって!!! ま、ま、ま、まさかぁ!!!」
俺がいきなり大きな声をあげたので、周囲で何人もが振り返った。
「何事か?」と面白半分で、見ている奴も居る。
しかし、フルールさんは動じていない。
俺も、そんなのを気にする余裕がない。
「やはり! あ、あ、あ、貴方は大門寺トオルさん……でしょう?」
「そ、そ、そういう貴女は、あ、相坂……さん、もしかして、リンちゃん?」
俺が呼んだあの子の名前に、フルールさんは大きく頷いた。
肯定して、力強く頷いた。
ああ、絶対にありえない!
そんな事が、まさに起こったのだ!
数百万と人の居る大都会の交差点で……
前触れもなく、いきなり、ばったり会うように……
未知の異世界に転生し、ぶっつり切れた筈の、俺とリンちゃんの運命が……
今、再び交わったのである。
「トオルさんっ!」
「リンちゃん!」
俺達は互いに駆け寄って、手をがっちりと握り合った。
ああ、綺麗で細い指だ、そして温かい。
昨日、握ったばかりのリンちゃんの手だ!
俺を見つめる、リンちゃんの声が震えている。
「これって……奇跡?」
「本当だよ、確かに現実だ。でも夢なら、絶対に醒めないでくれ」
思わず吐いたのは……
たった今、起こっている事が、幻ではない事を確かめる言葉。
そして、心の底からの本音。
フルールさん、否!
リンちゃんは、大きく深呼吸をしている。
少しずつ落ち着いて来たみたいだ。
そうだ!
俺も慌てるだけじゃなくて、しっかり落ち着かないと。
まずは、お互いの状況を確認して、これからの事を考えなければ。
リンちゃんが、俺にまた聞いて来る。
「トオルさん……さっきの話って」
「ああ、俺は、今朝起きたら、この異世界に居たんだよ……魔法鑑定士クリストフ・レーヌとして」
「やっぱり! 私もなのよ。……ねえ、トオルさん、ここは煩くて落ち着かないし、人の目もあるわ。どこかでゆっくり話しませんか? 私、先約があって7時までなら時間があるから」
先約?
先約って何だろう?
気になる。
それって、デートの約束?
こんなに可愛いんだもの。
まさか彼氏がもう居る?
そんなの、嫌だ!
もし彼氏が居たら俺は……
でも、いきなりは言えない。
「お、俺も! 7時までなら大丈夫」
「じゃ、じゃあ、場所を変えましょう」
「ああ、この階の上、8階がショッピングモールになっている。そこにカフェがあった筈だ」
「うふふ、了解……連れて行って貰える?」
「りょ、了解!」
このようなケースがあるかと思って、俺クリストフは、この迷宮の店を下調べしていた。
俺はフルールさんこと、相坂リンちゃんの手を引っ張り、魔導昇降機へ乗り込んだのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
僅か5分後……
魔導昇降機から降りた俺とリンちゃんは、手を繋いで迷宮の8階、ショッピングモールを歩いている。
ショッピングモールは、アクセサリー店、洋服店、雑貨店等たくさんの商店があって、結構人が居た。
皆、楽しそうに買い物をしている。
買い物をしているのは、最初からカップル同士で来たのか、それとも俺達みたいにこの会場でカップルになったのか分からない。
だが、若い男女のふたり連ればかりだった。
ああ、これって……
転生する前の俺が、予定していたデートコースのひとつだ。
次回のデートは俺、リンちゃんを、休日の映画コースに誘おうと思っていたから。
前世で、俺が下調べしたお洒落なショッピングモールの奥に……
これまたカッコいい映画館がある。
今は、複数の映画館が入っているから、『シネコン』って言うんだっけ。
そこで、話題の大ヒット恋愛映画をやっている。
昨日、話した時に確かめたけど、俺もリンちゃんも仕事が忙しくてまだ見ていなかった。
さすがに、この迷宮にシネコンは無い。
だけど、今の状況は予定した通りだ。
さっきのリンちゃんの『予定』を確かめるのが凄く怖いけど、今だけは俺、幸せだもの。
俺はつい嬉しくなって、「きゅっ」とリンちゃんの手を握った。
するとリンちゃんも、「きゅっ」と握り返して来る。
最高の、癒し笑顔付きで。
ああ、俺……もう我慢出来ない。
怖いけど……聞いちゃおう。
そして、もし、他の男とデートだったら……
思い切って!
リンちゃんへ、「キャンセルして!」と、言ってしまおう。
と、思ったら……何と!
「あ、あの……」
「な、何!?」
ああ、潤んだ鳶色の瞳に見つめられ、俺は、「どきっ!」としちゃった。
今、覚悟を決めて聞こうとしていたから。
「トオルさん……こ、怖いけれど……ひとつ、聞いて良いですか?」
「怖いけれど?」
「はい! あの……トオルさんの、7時からの予定って……あの……」
「…………」
「ど、どこかの女の子と、デ、デートですか?」
「ええっ!?」
俺が聞こうと思っていたのに……
リンちゃんに、先手を打たれてしまった。
仕方がない。
正直に言おう。
「い、いや……デートじゃない。付き合いで……飲み会なんだ」
「飲み会……」
「で、でもリンちゃんこそ、7時からってデートじゃない?」
「わ、私は……その……」
「お、俺、勇気を出すよ! も、もしリンちゃんに、というかフルールさんに彼氏が居ても、絶対にあきらめないから!」
「ああ! ……よ、良かった!」
良かった?
良かったって、何?
「私も……トオルさんと同じ事、考えていたんですもの」
「ええええっ!!!」
ショッピングモールを行き交うカップルが、驚いて振り向くほど……
俺は、またも、大声を出していたのである。
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