僕の明日は
あれから僕は脇目もふらず家に帰った。勿論のこと、誰にも帰ると伝えてない。
きゃ、不良学生になっちゃった。テヘペロ。
というか結局、昼御飯も食べれなかったじゃん……。
まぁいいか。この後にしなければならない事に比べたら、気にするまでもないことだ。
出来るかどうかは解らないけど、既に解を間違えているけれど、それでも自分がした事の後始末ぐらいははきっちりつけなくてはいけない。
「なぁ、居るんだろ?少し聞きたいことがあるんだ。」
静寂の中に問いかける。
……傍から見たら痛い人にしか見えないなこれ。過去の僕から見ても痛い人なのは言わずもがな。
というか今現在進行形で心が痛い。
そんなことを考えていた瞬間、空気が変わった。
天気は陰りを見せて静寂が無音に変化する。
「神様が降臨するのに雲が出てくるのは、神様としてどうなんだ。」
「我らの通称が神であるのみ。概念だけのものと同一ではない。」
来た。呼び出しに応じるかは半信半疑だった。しかし、何故かは知らないが向こうが呼び出しに応じたならばどうにかなる。
「して、如何様な理由で我らを呼んだ。」
「願いがある。以前は無かった願いがある。前回の願いを無かったことにして欲しい。」
「不可なり。」
これでなんとか…え?
「それのみならば我らは帰投する。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。お前たちは万能たる存在なんだろ?なら、何で不可能と答える?そもそも不可能ならどうして呼び出しに応じたんだッ|」
「回答。我らは完全無欠の万能である。元に戻すのは可能。だが、世界がそれを許容せず。我らがどれだけねじ曲げようと、世界自身の理が例外を許さない。」
「解答。貴殿が既に人ではない故。」
は?
世界そのものの理?僕が人ではない?
一体いつから人ではなくなったのか?最初からか?
いや、最初から人でなかったとしても、人間社会で暮らせていたのならそれは紛うことなき人類と呼べる。
ならあの時か?あの時僕は平穏を望んだはず。なのにどうして人ではなくなるのだ。
そうだ聞けばいい。目の前に答えてくれる存在がいるのだから。
「どうして僕を人ではないと断定する?」
「回答。個人の為に因果を湾曲させる存在を人間とは呼ばず。」
「必定。幸福と不幸は平等である。不幸の裏に幸福は実現される。」
「必然。個人の恒久的幸福を成就するならば、釣り合うべき不幸は周囲に反映される。」
なんとなく気づいてはいた、しかし言葉にされると重みが違う。
確かに僕は願った。絶対なる平和を。乱されることの無い、平らな日々を。
だがそれは、誰かの幸福を食い潰してまで欲しかった訳じゃない。皆が居て、僕が居て、そうして築かれていく日常が僕は好きだったのだ。
だから僕は……。
「新たに願うことは出来るか?」
「可能。」
「ならば、僕という存在を過去、現在、未来全てから消してくれ。」
「疑問。前回の願望ごと存在が記録から消滅する。」
「構わないよ。それにしても、お前でも不思議に思うことはあるんだな。」
「……。その願い。聞き届けた。」
「我らは記憶する。理の外であるが故。他者の幸福を望んだ人間を。」
あの神とやらが何か言っていたが、消えていく僕には関係の無いことだろう。
僕を構成するものが崩れて失われていく。還元はされない。消失とはそういうものなのだから。
だけれど、恐怖は感じない。それもそうだ。自分のしたことの尻拭いを最低な形で済ませようとしているのだから。
崩れていく身体で空を見上げる。雨が僕をすり抜けて地面を濡らしていく。
いつの間にか雨が降っていたらしい。
最低な僕の最低限の物語はここで幕を閉じる。せめて終わる時ぐらい晴れてほしいなぁ。
まぁいい。さよなら日常。
また、どこかで。




