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僕の明日は  作者: とある人。
1/3

それは突然に訪れる

久しぶりの投稿です。

誤字、脱字がございましたらお知らせ下さい。

瞼を貫く強い光。

朝日が起床という行為を強要してくる。

とても二度寝がしたい欲求を抑えて目を覚ました。

目を覚まし、起き上がって、自分の部屋を見渡す。




違和感は無いな、よし。




いつも通りの日常に安堵する。平穏で平凡で平坦な日常こそ何に

も変えがたい。だからそんな日常を送れる事に感激する毎日だ。

例え今すぐに戦争が起ころうとも、僕だけは戦争前の日常を送れ

るだけの蓄えはある。







誰にも邪魔はさせない!キリッ







そんな妄執に似た思いを抱きながら、学校へ向かう準備をする。

一階に降りると、真っ白な陶器で構成されているお皿の上に、自己主張の激しい金色が輝いていた。




「へい、マザー。こりゃあ、一体どういうことだい」



まさかの状況に呟いてしまう。

今は朝であるはずで、朝であるならば朝食が通常なら用意されていて、母親に感謝しながら頂くはずだったのだが…。


何故かお皿の上には五百円玉が鎮座していた。



「せめて、事前に言っておいて欲しかったなぁ…」



そう言わずにはいられない。

当て付けのように、五百円玉を回収してお皿を洗ってやった。



ふぅ。




無いなら無いで仕方が無いので、時間は早いが学校に向かうとしよう。





朝日は既に昇っているものの、まだ少しばかり肌寒いと思わずにはいられない4月後半。

人気が少ない坂をゆったりと余裕を持って闊歩する。



普段の喧騒も悪くないが、静寂ではあるものの、確かに人の生活を感じられるこの時間も悪くない。

三文の得は無かったが、お金に変えられぬものは得られた。

満足。満足。






そうこうしている内に学校に到着した。

4月と言えば、高校ではクラス替えがある。

気分も環境も心機一転して新たな学年を迎える人が大多数だろう。

友達を新規一転しかねない人もいるだろうが。

そしてそれも後半。落ち着きをみせる頃合いだ。




まぁ、時間帯のせいで教室には誰もいないが。





さて、教室に着いたはいいものの、授業が始まるどころか他の生徒が登校してくるまで時間が余る。




そうだ。探検しよう。



日常の一部とはいえ、普段から少しずれるだけで異常であると判断してしまう人間の脳髄に、有りうる日常を刻みこんで日常の幅を増やしておきたい。

日常が多いことは、幸福である証左に繋がるのだから。





話を戻そう。

今更になって何故、探検をするのかというと、この学校はひたすらに巨大であるのだ。

この国にここまでの規模がある学校を建てていいのか、甚だ疑問だが存在する以上はどうしようもない。

どうする気も無いし、どうにかなる力も無い。

けれどもこの異様さはまるで、物語を構築する上で都合の良い学校を創り出したみたいで気味が悪い。

どうでもいいか。






多種多様な人が生活する街と違って、生徒という枠組みから形成される学校は、寂漠たる様相を呈していた。

廊下に響く、自らの足音。

人気が無いではなく、人がいない教室を見て回る。

こんな教室があったのかという発見と驚きは一年生だった頃の気持ちを思い出させる。

何でここの購買、傘なんて売ってるのだろう…。確かに豊富な種類を取り扱っていたなぁ、程度の記憶はあったが、ここまでとは思いもしなかった。謎だ。




そして今。

ようやく確信したのだが、どうやら他に登校していた生徒はいたらしい。

足音が二重に聞こえていたのは気のせいではなく、僕が無意識でタップダンスを披露していたとかでもなく。もう1人程登校していたらしい。

勤勉か物好きか、どちらにしても普段の僕とは関わり合いのないタイプだろう。一般通行生徒な雰囲気を醸し出しておこう。



邂逅なんて言葉を使えばそれっぽいし格好がつくけど、ぶっちゃけただのすれ違いだ。

すれ違い通信してれば恩恵があっただろうなぐらいのすれ違い。

僕が通り過ぎた生徒に関連性はやはり無かったし、これから何か始まる訳でも無い。

早い時間帯の学校で偶然、遭遇した。ただそれだけのこと。




気怠そうにしながら競歩選手が如く歩みを進めるという矛盾を発生させながら、生徒と遭遇した事実を置き去りにしようとしたところで、声がかけられてしまった。惜しかった。





「おい。そこの一般通行生徒。ちょっと止まれ。」




声を掛けられては無視する訳にもいかず、他の生徒に声を掛けたなんて事実は状況に潰されているので、渋々生徒の方を向く。




「そうだ、お前だ。よく止まってくれた。まずはその感謝を。」




停止したらなんか感謝された。

何だろうこの生徒。言葉遣いを直せばモテるのではと思わせるこの生徒は一体何なのだろう。





「言葉遣いは諦めてくれ。キャラクター性の演出をしなければ、友人がただの痛い男子高校生になってしまうからな。」

「そんなことより、お前に言っておきたいことがあるんだよ。」




はて?開始早々に意味の分からない事を言ってきたこの御仁は、何を僕に伝えるのだろう。さっさと僕の愛する日常に戻りたいのに。





「まぁ待て。そう嫌そうな顔をするな、話は単純だ。」

「お前の日常を愛する姿は素晴らしく、敬意を表するに値するだろうよ。

だがな、世界が常に日常を映し続けるかはまた別の話なんだよ。人知れずに異常は存在し始めて、日常の中に紛れ込む。

何故かって?そんなの簡単な事だ。日常が在るなら非日常も在るんだよ。それがバランスというものだ。

バランス無くして、世界は成り立たない。

大事なのはバランスだ。忘れるなよ?」








こう一気に語り上げていくと、背を見せて優雅に立ち去っていった。

何だあの人…。

もう色々と日常から逸れている気がする。これではいけないのでさっさと教室に戻る事にした。

机を、パーソナルスペースを、安全地帯を体が求めていたのだった。







教室に戻るとちらほらと、登校してきた生徒の姿が視界に入る。

見慣れた姿と慣れ親しんだ雰囲気。ビバ、日常。


机に座り、ボーッとしてると友人に話し掛けられた。




「何だかいつも以上にお爺さんのようだけど何かあったのか?」




話し掛けてきたのは数少ない友人の 傷ヶきずがさき よう

ぼっちではないからな?友達いるからな?




「ナニカとも言うべき事柄しか起こらなかった。僕は日常を強く要求するぞ。」



「オーケー。それだけで何となく分かった。そして世界一平和なテロ宣言はいつも通りだな。」





背は高く、筋肉質でガッシリした友人の呆れる姿を見て、日常が返還されたことに最上級の感謝を。

ありがたや〜。ありがたや〜。




「おっと、授業が始まっちまう。また後でな。」




気がついたら、そんな時間か。

朝から濃密な時間を送っていた為か、どうにも時間感覚がおかしい。すぐ直るだろう。







さぁ、そろそろだ。

そう思うと同時に昼休みを告げる鐘が鳴る。時間感覚は元通りだ。

良かった。良かった。













昼食を買いに購買へと行こうかと椅子を立ち上がった矢先に、音が消えた。













・・・・え?

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