3話
ムカ!ムカムカムカ!
私は現在機嫌がすこぶる悪い。私の横を通り過ぎていく人も私の顔を見て「ひっ、食べないで」とか言っちゃってる。失礼だろうが!
お昼休みの廊下をドスドスと歩く私。側から見れば狙いを絞った肉食獣に見える事だろう。
それは大正解。私はただ1人を目指して歩く。
役職が勝手に決まり、私は四時間目が終わるのをただひたすら待っていた。怒りや恥ずかしさでいっぱい。(ちなみに、書記二名はクジ引きで決まったらしいが、名前はもう聞こえていなかった)
しかし、私は感情を彼にぶつけることは出来なかった。私が躊躇ったわけではない。彼がチャイムと同時に教室を飛び出したからだ。
私はポカーンとアホ面かましていたに違いない。気付いた時には周りから笑われて、私の頰は赤くなっていた。そして、彼に続いて飛び出し、怒りをさらにプラスして感情を取り戻したのだった。
というか、あいつ足早すぎでしょ。いまだに姿が見えない。どこを目指していたのかも分からない。
そうして、はて、巣を荒らされた動物の気持ちはこんな感じなのかと思う(怒りでいっぱい)程、心に余裕が出てきて、尚も捜索していた時だった。
角を曲がり、まず、キリンの明石さんが見えた。当然だ。存在感は学校でもトップクラスな彼女だ、遠くからでもわかる。
そしてその後ろに奴がいた。左腕には購買に行ったのだろうか、食べ物を持っていた。
そして、右手は、彼女のその美しい首元に向かっていやらしく動いていた。
果たして、彼はやってしまった。
「あん、あは、っえ、あはは、なに、はは!」
「あ、やっぱりキリンも首くすぐったいんだ」
彼のまるで赤子を扱うような柔らかく優しい手は彼女の首をいやらしく蹂躙していた。緩急をつけて、時には網目の模様に沿うように。って何やってんですかねぇ、あの人!
どうやら結構弱点っぽく、彼女その場で四つん這いになってしまった。涙目だしなんか事後みたいになってる……
だがどうやら彼の暴挙もここまでのようだった。
「レディになんてことをするんですか!」
お怒り。
「いやー、興味があったものでして、つい」
さいてーな理由。
「って、あなたは転校生の」
「どもー」
あいつなんであんな平気でいられんの⁉︎
「でも……」
「でも……?」
「でも、いきなりああいうことをするのは失礼でしょう!!!」
「って、待て! 落ち着け、一旦冷静になろう、お互い悪かったと思うんだ、ほら、牛乳あげるから!」
そんなんで懐柔できるか。
「死になさい!!!」
そして、明石さんの御御足によって(長いから威力大)股間へ、ハイキックが決まった。
「……っ⁉︎…っこ⁉︎」
どうやら人間語も忘れてしまったようだ。
「ふんっ!」
逆に彼を四つん這いにした彼女はプンプン怒ってその場を立ち去る。
彼の子孫が途絶えることが決まったかもしれない。