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アート・バイ・テイル  作者: 水無月旭
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5筆目 物を投げる時は確認を

「大丈夫ですか?」


 あらためて尋ねられ展吾は我に帰った。

 彼女の手を取り湖から体を引っ張り出す。制服はびしょ濡れで身体中に張り付いていて今すぐにも脱ぎたいぐらいだ。

 今一度周りの景色を眺める。あぁ、やっぱりそうだ。朝夜の違いがあるものの確かにここは彩雅の描いた『月舞踏』の世界だ。

 彩雅の「すぐに会えるよ」の言葉が脳裏をよぎる。

 現に目の前には彼女はいる。卵型の顔に細めだけど温かな目、化粧水を塗ったばかりのように透き通った肌、背中まで伸びた金色の髪、全てがあの絵に当てはまった。いや実際、絵よりずっと綺麗だ。

 自分は彩雅の描いた絵の中にいる?そんな馬鹿げたことがあるはずがない。VR世界はまだ開発されていなかったはずだ。


「すいません。なにぶんここらは人が来ないものですから、いつものように確認もせず投げてしまいました。」


 謝罪を述べながらお辞儀をする彼女からは気品さがひしひしと伝わってきて、思わず自分が謝ってしまいそうになる。


「と、とりあえずこの子をどうにかしてくれませんかね。すごい懐いてくるんですけど」


「あ、こらっ!ジョンやめなさい!」


 彼女が一声かけると犬はわんっ!と吠えて、主人の足元にお座りした。自分が言ってもやめなかったくせにご主人様にはえらく純情なやつだなこんにゃろう。


「本当に申し訳ありません!! もう何から謝罪したら良いのか。と、とりあえず私の家に来てください風邪をひいてしまいます。」


 多少テンパっている彼女に若干親しみを感じる。こんな綺麗な人でも自分と同じようにテンパったりするんだと。


「大丈夫ですよこれぐらい。すぐに乾きますか……ら、ヘックション!」


 ジョンがくしゃみに合わせてわんっ!と吠えて舌を出してハァハァとし始める。自分を笑っているのだろうか。おまえのせいなんだぞこんにゃろう。

 鼻水を見せまいと口元をとっさにおさえる。なんというか情けなかった。

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