第1話 異世界転移と重力魔法
面白いと思っていただけたら幸いです!
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俺、絶賛走馬灯中の高校生、小鳥遊秀太。
一説によれば走馬灯というのは過去の記憶からその事態を抜け出す手掛かりを探しているそうでってちがーーーーう!死ぬーーーー!
前面が凹んだ乗用車。
投げ出された四肢。
ひしゃげた自転車がカラカラと錆びたタイヤの軸の音を鳴らす。
夏のねっとりとした空気に誰かの悲鳴がこだまする。
青い空に鮮血が飛び散る。
パトカーと救急車のサイレンの音が遠くからもう聞き取れなくなった耳に入ってくる。
なんて言うんだっけ⋯グラップラー?違う、それは刃牙さん。
ドップラーだ。
あれ?なんでこんな事考えてるんだっけ。
まあいいや。眠いし。真っ暗で何も聞こえない。
怖いけど⋯
まあ⋯⋯⋯
いっか⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯。
⋯。
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『ねぇ、ハデス?この子どうするつもりなの?』
『こやつからは不思議な力を感じる。そうさなぁ⋯“メギドの丘”の辺りにでも放り込んでおくか。』
『あなたって最低ね。ハルマゲドンがあった場所に蘇らせるなんて。』
『ハッ!どうとでも言え。』
『でもホントにいいの?あそこは新しいもう1つの世界として認識されているのよ。』
『お前の心配性は相変わらずだな、ヘル。』
『あなたが豪胆過ぎるのよ。』
『人の子が力を与えられて、神々の戦があった場所で何をするか⋯考えるだけで楽しいじゃないか。』
『あら最低ね。だからこそ飽きないわ。』
『褒めてるのか?』
『褒めてるのよ。』
『目を覚ます前に移動させるか。』
『彼は気づけるかしらね?』
『あの世界の目的に、か?』
『そうよ』
『分からんな。実にわからん⋯ハッハッハッ。』
『さあ、行ってらっしゃい。いずれ私たちを━━━━』
『『殺せるように』』
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「⋯⋯んっ⋯」
涼しい風が頬を撫でる。
「⋯⋯ふわぁあ⋯」
目を開けるが眩しくてすぐに閉じてしまう。
徐々に目を慣らしていくと広大な草原が広がっている。
「んん?ここどこだ?夢?日本にこんな広い草原なんて無いよな?」
恐る恐る立ち上がる。
さっきまで気づかなかったが、木に寄りかかって寝ていたようだ。
「ん〜⋯やっぱ夢かな。それにしてもすっげーリアルだな。」
時折吹く風や、その風が草を撫ぜる音、日の暖かさまで、すべてがリアルだった。
「にしても何も無い草原の夢とか⋯しかも今日来てた服⋯あれ?ん?なんだ?何かがおかしい⋯。」
身体中を探って見るが特に異常はない。
しかしおかしい。何かが引っかかる。
「俺そもそもなんで寝てるんだっけ?」
目が覚める前後のことを思い出そうとする。
「俺の名前は小鳥遊秀太!17歳!都立高校に通う平凡な男の子!特技はサバイバル能力と雑学!苦手なのは蟹!今日は8月の4日!俺はコンビニにアイスを買いに行って⋯⋯それで⋯⋯車に轢かれ⋯⋯?!?!え?なになになになに?!じゃあここって死後の世界ってこと?!俺死んだの?!」
あまりの情報量の多さに脳がついていけず、数秒間フリーズする。
「え、え〜っと?俺は死んで?ここは死後の世界(?)で、服は轢かれた時のまんまで?だだっ広い草原にたった1人⋯と?いや⋯いやいやいやいや⋯んんんんん?!」
もう訳が分からない。
いっそ大空でも自由に飛んでみようか。死んでるし。
幽霊的なアレで飛べないかな⋯。
《━━━━魔法︰『重力操作』・『重力飛行』・『重力球』を覚えました。》
「え?!何?!今の誰?重力ナンタラとか言ってたけど何?!」
どこからともなく声が聞こえ、1人だだっ広い草原で慌てる男。
何とも奇妙なものである。
はっきり言えばキモいし不審者である。
まあそんなことは異世界では関係がない。
ガサガサ
「?!今度は何?!」
草むらから音がして振り返ってみれば、そこには3匹の熊が居た。
現実で言うヒグマサイズだが、決定的に違う所がある。
角と爪である。
「な、なんで熊がこんな草原に⋯⋯」
グルァァァァァァァァァァアアア!!!!!
「ぬおおおおおおおおおおお!?」
角が生えた熊がダッシュで襲ってくる。
しかし、現役高校生も負けてはいない。
Bダッシュである。
ちなみにヒグマの走る速度は50kmである。
ウサ○ン・ボル○選手の時速が32~34kmであるため、人類はヒグマから逃げられないのである。
というわけであっさり捕まりました。
やべえ喰われる。
しかも3匹いるし絶望的な状況だよね。
終わったー⋯俺終わったー。
状況から推測するにココ異世界的なアレですよね?
そういえばさっき重力ナンタラとか言ってたよな?!ま、魔法かな?使いたい⋯。こ、声に出せば行けるかな?
この男、危機的状況であっても自分のスタイルは崩さないのであった。
「え、えーと!『重力操作』!吹っ飛べ!!!」
そう大声で言うと、本当に言葉の通り吹っ飛んでいった。
残りのクマ2匹は唖然と飛んで行った仲間の姿を見ている。
「よ、よし、こうやって使えばいいのか!おらぁ!余所見してていいのか?!『重力操作』、押し潰せ!」
直後、2匹のクマの巨体が地面にめり込む。
クマ共の周りだけ、地面に亀裂が出来ている。
秀太は思った、「俺、かっこよくね?」と。
「グブゥルルルルルル⋯」
「がああぁぁぁぁぁぁぁあ!」
「え?嘘でしょ?まだ生きてんの?」
最高にダサい。それだけだった。
「ええ?これじゃ足りないのかな?!今何Gくらいなんだろ⋯重力だからGで合ってるよね?」
1人で自問自答していると、また虚空から声が聞こえてきた。
《現在、『重力操作』による加重力は3Gです。》
3G⋯3Gか⋯。
このままある程度ほっとくと臓器不全やらなんやらで勝手に死んでくれるんだけどなぁ⋯。
ま、俺もそこまで鬼じゃないし?
「『重力操作』。大気圏までの楽しい旅を!ハバナイスデイ!」
「「ゴアァァァァァァァァァァ?!?!?」」
誰よりも鬼畜な男の異世界生活が始まった。
1話は短いです。
2話からは8000字くらい書きます!