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僕は魔界に就職してみた。  作者: 出受 遠々
>>思ったよりも前途は多難。
17/45

大人の責任でしょう。



下半身が馬であるルルちゃんは見ての通りケンタウロスに間違いない。アイちゃんは…大きく上向きの角に、銀色の輪っか。細く長い尻尾の先にはふわふな茶色い毛がちょこんとついている。ミノタウロス?だろうか?


「ルルちゃんとアイちゃんはとても仲良しなんだね。」


一見異種同士に見える二人だけれど、さっきグラウンドで見た限りはとても仲が良さそうだ。まるでこの戦果の中を二人きりで支え合う姉妹のように。


「「うん。」」

「ドランくんやべンヌくんとも仲良しなのかな?」


お人形遊びをしながらもちゃんと答えてくれる二人。逃げられた時にはヒヤヒヤしたが、どうやら嫌われてしまった様では無さそうだ。


「ドランは凄く怒りっぽいから面白い。」

「べンヌは直ぐに死んじゃうから面白い。」

「「だからお友達。」」


そこで声を揃える。友達だとは思っているけれど、その面白いの観点がどうやらズレているみたいだ。


「お友達って言うなら、ドランくんは別として…べンヌくんは殺しちゃ駄目なんじゃないかな?」

「「どうして?生き返るのに?」」


そこを突かれると僕としても言葉に詰まるのだけれど


「生き返っても帰らなくても、殺すことは良くない事だよ?二人だってお互いがそうでも、死んじゃったら悲しいでしょ?だったらちゃんと謝って仲直りしないと。」


このまま二人の可愛い魔物達が暴君に成長していく事は止めなければならない。ミノタウロスもケンタウロスもその性質を多少ながらに持っている魔物だ。だから小さい頃からの教育が必要なのだろう。


「「どうして、あたし達だけ謝らないといけないの?」」


グラウンドから逃げ出した時の口上をまたもや発するルルちゃんとアイちゃん。人形遊びしていた手を止め、純粋な瞳で僕を見つめた。


「おとーさんも」

「おかーさんも」

「「人間だって」」

「沢山殺して」

「沢山殺されるけど」

「「誰もあたし達には謝らないよ?」」


それは恨み辛みではなく、凄く純粋な質問だった。良い悪いじゃなくて、本当に分からないといった風な。


「それは…確かにそうだね。だからみんなが本当は謝らくちゃ駄目なんだけどね。」


ルルちゃんやアイちゃん本人も、両親も、人間も、僕も、魔王佐藤さんも、ここにいる誰もが誰かに謝らくちゃいけない。

そうなれば戦争も終わるんだろうし、こんな事考えなくても済むのに。


だけど、誰も謝らないからって自分も謝らないなんて。

誰かがしたから自分もしていいだなんて。

それじゃあ何も解決しないし、何も生まれない。壊れていくだけだ。


生き返るフェニックスであるべンヌくんにしたって、別に生き返るからって殺されたい訳じゃないし。ドランくんだって友達であるべンヌくんが殺されるのを見るのだって生き返るのを見るのだって嫌だろう。


ルルちゃんだってアイちゃんが死ぬのは見たくないだろうし、逆も然りだ。仮に生き返る存在だとしてもお互いの"死"に直面するのは悲しい事だ。

だけどそれを理論だてて説明しても、まだ彼女達には難しく分かり辛いだろう。だから


「まだ誰もルルちゃんとアイちゃんには謝らないかも知れないね。だから代わりに先生がまず謝るよ。」


ごめんね。と小さく頭を下げる僕。

こんなにも純粋で無垢な二人に、誰かを殺してもいいと、何かをしても謝らなくてもいいと。思わせてしまった大人代表として。


僕一人が謝った所で現状は何も変わらないかもしれないけれど、まずは隣人を愛せ。と言うように、身近な場所から始めるしか無いのだ。隣同士の異種と手を取って生きていく。

ルルちゃんとアイちゃんもそうしてこの戦争の中を生き延びたんだろう?二人で手を取って。

これからは僕もその手を取ろう。一緒に。


「「うーーーん。」」


二人は首を捻り、顔お見合わせると「「分かったわ、先生。」」と声を揃え立ち上がった。


「あたしはルルが死ぬのは嫌。」

「あたしはアイが死ぬのは嫌。」

「「だからドランとべンヌに謝る事にする。」」


先生も、あたし達に謝ってくらたから。と声を合わせて付け加えながら。

そして左手にはルルちゃん。右手にはアイちゃんと、手を繋ぎながら僕達はドランくん達の待つ教室へと向かった。





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