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序章 白鴉は静かに怒りの炎を燃やした

初めまして、作者です。


自分の欲望のままに書き連ねたお話です。もしも気に入ってくださったらとても嬉しいです。感想をいただけたら更に嬉しいです。誹謗中傷は断固お断りいたします。理由をきっちり書いたご指摘でしたら是非欲しいです。些細な感想でもいただけたらテンションMAXです。


素人書きでもかまわない。あらすじとキーワードから逸脱してなかったら何でもばっちこい。読んでやんよ、という方のみ下へお進みください。それ以外の方はそっと窓を閉じるかブラウザバックで



 早く早くと心が訴える。

 早くあの場所に行かなければ

 早くあの人に会わなければ

 じゃないと、早くしないと、もう立てなくなってしまう。

 足が震える。頭が内側から殴られているように痛む。喉までせり上がる熱い物をなんとか飲み下して、ひび割れた唇を噛みしめると血の味がした。

 言うことを聞かない足が憎い。久しく運動した身体は酸素を欲して呼気が荒れた。

 けれど、立ち止まれない。休めない。

 1度でも足を止めてしまえば、きっともう立ち上がれない。


 低木の枝をかき分けて、それが白い頬を引っ掻くのも気づかずに前へ前へと進んで、ようやく開けた場所に出た。

 「先輩?」

 そこには、求めた人がいた。彼女は眠そうな目を瞬かせながら読んでいた本を閉じた。今にも崩れ落ちそうな足を引きずるように動かして、彼女に歩み寄る。

 己を愛してくれた少女、抱きしめてくれた恋人、敬ってくれた後輩を

 求めて、触れたくて、包んで欲しくて、手を伸ばす。

 「どうしました?」

 こちらから触れる前に、彼女は立ち上がって手を伸ばす。血の滲む頬に手を翳した。

 淡い光が傷口を包んで癒やす。その温かい光が、悪意なく己を見つめてくれる瞳が、今まで堪えてきた物を溢れさせた。

 「真海」

 「誠・・・?」

 くしゃりと顔を歪めて、膝から崩れ落ちた。そうして、力いっぱいに真海を抱きしめた。縋り付くような抱擁に少女は困惑しながらも甘受し、その紺色の頭を抱きしめる。

 一月ぶりに触れたその身体は、以前触れた時よりも細くなっており、彼女は眉を寄せる。友達である六花が出来るだけ早く戻ってこいと催促したのはこの為か、と心の中で友に感謝した。

 「どうしたの?誠」

 後輩ではなく、恋人として呼びかけながら何があったのかを問う。彼は震える声を発した。

 「今日、緊急集会がありました」

 「ああ、六花に聞いた。やってる途中で戻ってきたら、六花からの伝言だってセツナがきて、ここで待ってろって」

 何故ここにいたのかという理由も込みで応えると、誠は、だからですか、と納得したように呟いた。

 「集会は、私に対してのリコールでした」

 「・・・なんで?」

 「私が生徒会の仕事を放棄し、あまつさえその職権を乱用したと」

 「へぇ・・・リコールは各委員会委員長の署名と担当教師の署名が必要な場合と、全校生徒3分の2の同意が必要な場合、2通りあるけど、どっち?」

 「後者です。審議は可決。私は、もう副会長ではなくなり、代わりに、藍がなりました」

堪えるような嗚咽が聞こえ、真海の深紅の瞳は剣呑に細められた。

震える身体は弱々しく、殺したような嗚咽が痛々しくてグッと抱く力を強める。

 「わたしは・・わたし、の・・・ような・・・・まがい、ものは・・!、もう、いらないと!そう、いわれて・・・!!」

 「藍って、異母兄弟だっけ」

 「は、い」

 誠を促して芝生に座り、足を伸ばす。

 「よしよし、辛かったね。実力で勝ち取った座を流言なんかに奪われて」

 離れたくないと嫌々と首を振る誠をやんわりとした力で離す。不安で揺れる湖畔の瞳に微笑んで見せると、ふっと強ばった肩から力が抜けた。数える程度にしか見せたことのない笑みに、彼は深く安堵する。

 「ほら、お休み。今まで頑張りすぎってくらい頑張ってたんだからもう休みな」

 太ももを叩いて横になるように促す。心身共に疲れ切り、涙まで流して、安心出来る人の傍にいて気が緩んだように誠の目はぼんやりと叩かれた場所を見る。こくんと、1つ頷いてそこの頭を乗せた。

 「お疲れ様、誠。今までよく頑張ったね。ゆっくりお休み」

 傷つき揺らいでいた瞳は、深い安らぎと安堵の色を浮かべてゆっくりと閉ざされていく。

 「ま、み・・・」

 彼女の名を呟きながら、一筋の涙を零して眠りについた。

 誠の大きな黒縁眼鏡を外して、顔にかかる濃紺の前髪を分けた。

 端正な寝顔は、病人を思わせる程に白く、目の下にはどす黒い隈を作っていた。涙の後をハンカチで丁寧に拭う。

 静かに慈しむ様子を、使い魔の管狐とワシは見ていた。

 《お前の主、顔が恐いぞ》

 《掌中の珠が傷つき疲れ切って泣いたのよ?そりゃあ恐くもなるわよ》

 柔和に細められた瞳は、虚空を見上げると冷たい光を宿した。

 けれど、手は優しく誠の頭を撫でているのだから器用である。

 《アハッ、白鴉を怒らせたこと、後悔すればいいわ》

 吐き捨てるように管狐は言った。

ここまで読んでくださりありがとうございます。お気に召していただけた、もしくは続きが気になる、もしくは続きをよんでやんよ、と言う方は次へどうぞ

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