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-夏休みの始まり-

…………………………………………


……………………………………


………………………………


…………………………


……寒い。


僅かな寒さを感じつつ、目を覚ます。


まぶたを開くと、そこには妖怪…。


もとい。女の子の顔があった。


『うおおおおーー ビックリしたぁ!!』


思わず飛び起きると、オレの顔をのぞき込んでた女の子と額が接触する。


『うごっ』


『いったぁーい!!!』


お互いにうめき声と叫び声を響かせる。


『いってー ちょっとアリスちゃん何やってんの?』


『あいたた…真柴さん起こしに来たんだよぉ…。』


『早すぎね!?いま何時なの?』


『ん~ 朝の6時。』


『はええーよ!!』


『だって、夏休みだよ?』


『いやいやいやいや、小学生のラジオ体操じゃねーんだから!!』


『大人だってラジオ体操するよぉー?』


ううむ…。


まぁ、そう言われればそうなのだが…。


『さ、ラジオ体操始めよっか!!』


『は?』


何言ってんだ、この小娘は?


『えっと…どゆ事?』


『じゃーん!!』


アリスを見ると、かなり古いラジカセをドヤ顔で掲げていた…。


『えーと… まさかそれにラジオ体操のテープ入ってんの?』


聞くと、アリスはラジカセを後ろ手に、少し前傾姿勢で『にー』と擬音でも聞こえてきそうな嬉しそうな笑顔でこう言った。


『真柴さん、正解!!』


こっの…可愛いじゃないか!!


そう思いはしたが、そんな事は口には出さない。


絶対調子に乗るだけだ。


『あのさ…。』


『なーに?』


『アリスちゃんが何時に起きたのかは知らないんだけど、アリスちゃんは起きてここに来る迄の間に目も覚めてシャキッとするじゃん?』


『うんうん!』


『オレ、寝起きで即何だけど?』


『だねっ♪』


とアリスは笑顔で言う。


『………………』


『♪』


『……………………』


『♪♪♪』


『………………………………』


ニコニコが止まらないな…。


ああ、ダメだ… この子にはオレの常識が通じない…。


『あ、うん。いいんだ。何でも無いよ。ラジオ体操だね。』


諦めよう…。


『勝った。』そんな顔でオレを見てニヤニヤしてるアリスがまた口を開いた。


『じゃあ、真柴さんにプレゼント!』


『ん?』


アリスがポケットをゴソゴソとまさぐりながら。


『にししっコレ。』


ちょっと得意げに、だけど少し照れくさそうに、紙切れを目の前でヒラヒラさせている。


『何それ?』


『スタンプカード!!』


アリスは『ふふんっ♪』といった様子で、それを手渡してくる。


『あー…えーと…ラジオ体操で子供が首からぶら下げてるアレ?』


『うん!』


『あ、そうなんだ。わざわざ作ってくれたんだ。』


『そうだよ!真柴さんの為に作ったの!』


『えっへへー』


くっ…また出たな…『えっへへー』…


『あ、ありがとう。でもさ、ちょっと気になる事があるんだけど…。』


『なになにー?』


『いや、コレ8月31日迄あるんだけど…』


『うんうん。』


『…………………………………………』


『え?どーゆーこと?』


『いや、どーゆーこと?って… 今日まだ7月20日何だけど…』


『沢山遊べるねっ♪』


『あ、うん。そうだね…。』


ダメだ!!コイツは本気だ!!


適当に相手したら、適当にここを離れよう…。


そんなオレの考えを余所に、アリスが大声を上げた。


『よーし!!じゃあ、始めよー!!ラジオ体操第いーーーちっ!!』


『お、おー…』


『真柴さん、元気が無い!!もっかい!!』


『ラジオ体操第いーーーーーーーちっ!!!』


ええい、ままよ!!


『おおーーーーー!!!』


オレは旅をしたかったんであって、こんな事をやる筈じゃなかったんだけどなぁ…。


そんな事を考えながら、早朝の公園に叫び声が響き渡る。


オレの忘れられない夏休み。


その初日が、今まさに始まろうとしていた。


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