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第一部『合コン』〜5〜

 「ごめん、お待たせ」

 黒田と笹沼はそれぞれ鞄を手に持ったまま、席に着いて、飲み物を飲んだ。

 「緒方さんは?まだ来ないの?」

 黒田が立野に話を振った。

 「うん、まだ連絡はないね〜。残業が多い職場らしいんだけど」

 立野が携帯を開きながら言った。

 「そっかぁ・・・ねぇ、美樹?美樹の友達はいつ来るの?」

 黒田は煙草を鞄の中から取り出しながら言った。

 「えぇと・・・今大学からこっちに向かってるってメール入ってた」

 笹沼が携帯を操作しながら答えた。

 「もう一人は大学生?」

 緑茶割りの入ったグラスを傾け、中の氷をグラスとぶつけて遊びながら、立野が訊ねる。

 「うん、美樹と同じ大学の子。この子すっごい頭が良くてさぁ!六大学の内の一つに通ってんのよ!経済学部に」

 「・・・すげぇじゃん。で、黒田さんと笹沼さんはどういう関係?なんかさっき年違うみたいな言い方だったし、大学も違うみたいな言い方じゃん?」

 煙草を吸いながら、顔を少し歪めて翔輝は言った。

 「あぁ、理恵はあたしの高校の時の部活の先輩。テニス部のね。あたし、高校は公立で、一生懸命勉強して今通ってる私立の大学に行ったの。将来やりたいことあったからね」

 微笑みながら笹沼が答えると、翔輝は頷きながら煙草を吸った。

 「そういえば、相川。お前も頭良いんだよな?結構頭良い私立大学の付属だろ?お前の高校?」

 立野がニヤニヤしながら翔輝の頭を小突く。

 「やめてくださいよ・・・所詮中退なんすから・・・」

 翔輝が頭をさすりながら、また顔を歪める。

 「そうなの?凄いじゃん!元ホストのくせに」

 黒田もニヤニヤしながら翔輝の頭を小突いた。

 「もう、理恵!やめなって!相川さん困ってるじゃない!」

 笹沼が黒田の手を掴んだ。

 翔輝は、煙草を灰皿に押しつぶして、

「ちょっと便所」

と残して、足早に席を立った。


 「ねぇ、立野さん。さっき言ってた相川さんの過去って?」

 翔輝が化粧室の方へ消えていったのを見届けた笹沼は、すかさず立野に真剣な眼差しを向けた。

 「ん〜?あぁ、相川ね、昔凄い好きだった人がいたらしいんだ。でもね、色々あって、結局実らなかった。それだけだよ」

 立野は新しく頼んだ日本酒の熱燗を美味そうに啜った。

 「色々?色々ってなんですか?」

 笹沼が更に問い詰めようとした時、

「あの、遅れてすいません・・・」

 大きな目、日本人には珍しい、彫りの深い顔立ち、唇は小さく、髪は長く、綺麗なストレート・・・美人と形容できる顔立ちとは裏腹に、グレーのパーカーの上に黒のダウンジャケット、ブーツカットのデニムパンツと、ラフな格好で身を整えた、少し幼さの残る女性が3人の前で頭を下げた。

 「亜由美!遅いじゃない!」

 笹沼は頬を膨らませて大声を上げた。

 「岡里亜由美(おかざとあゆみ)です。遅れてすいません」

 紹介された岡里は、もう一度立野に向かって深々と頭を下げた。

 「あぁ、どうも。立野祐一です。よろしく。こっちはまだあと一人来てないんだが、もう一人は今お手洗いに・・・あぁ戻ってきた。紹介するよ。相川だ」

 立野がにっこり笑って、化粧室から戻ってきた相川を岡里に紹介した。

 翔輝は目もくれず、煙草を咥えて、ライターで火を点けた。

 「相川・・・翔輝・・・?」

 フルネームで呼ばれた翔輝は、顔を上げた。その口からは煙草が零れるように落ちた。

 「岡里・・・」

 翔輝と岡里はお互い、目を見開いたまま、止まっていた。


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