第二部『過去』〜2〜
俺は中1の時から塾に入ってさ、一番下のクラスから始まったんだ。で、元々頭は良かったんだろうな。どんどん上のクラスに上がっていって、中2で一番上のクラスになった。だから、全然友達作る間もなく上がっていったもんだから、そのクラスでも友達はいなかったんだ。で、そこに入塾してきたのが、岡里だったんだ。
『で、一目惚れってやつ?』
ん、一目惚れってやつ。だってさ、さっき見て思ったけど、ホンットあいつ綺麗じゃん?
『まぁ、女から見ても綺麗だとは思うけど』
ん、そう思うよ。で、しかも中学の時と全然変わってねぇんだよ。あいつ。つまり、中学の時に既にあんな感じだったわけ!
『ん〜・・・恐ろしいくらいのマセガキね・・・見た目も中身も』
そ。で、意外と子供っぽいとこもあるんだよな、あいつ・・・そこがまたかわいくてさ・・・
『・・・』
・・・そんなに見んなよ。
『いや、キモイよ?なんか。さっきとキャラ違うし・・・』
うっせぇな!・・・とにかく、まぁ一目惚れしたはいいけどさ、ほとんど初恋なわけ。どうすりゃいいかまったくわかんなかったんだよ。で、しかもそれを好きだって自覚したのももっと後でさ、そんときは可愛いなぁぐらいにしか思ってなかったんだよ。
『ふぅん・・・で?』
で・・・高校入試が終わって、塾にはほとんど行かなくなった。元からサボリがちだったしな。
『はぁ?!待って!ちょっと待って!なんもなかったの?中2で出会って、そっから入試まで1年ちょっと!あんた気に入ったんでしょ?!なんもなかったの?!』
・・・なんか黒田みたいになってるぞ?喋り方。
『そんなのどうでもいいのよ!元からこんなだし。ってかあんたアホ?!気に入った相手と喋ったりしないなんてどんだけシャイボーイぶってんの?!』
だから言っただろ!初恋みたいなもんだったし、自覚もそんときはまだしてなかったんだ。たいして、他人に興味もなかったし。塾行っても勉強するだけで、他の奴とは一切喋ったことなかったよ。
『・・・嘘でしょ?一切って・・・どういう中学生だったのあんた・・・』
ま、ともかく・・・それで、高校受かったことがわかって、久しぶりに塾行ったんだ。先生に報告するためにね。で、授業はまだやってたから、とりあえず報告した後、授業を強制的に受けさせられた。
授業終わった後、帰ろうとしたら、あいつに呼び止められたんだ。受験全員終わったから、今度皆で打ち上げやろうってな。で、そんときにあいつが携帯の番号とアドレスを聞いてきたから教えた。そこで初めて、あいつと仲良くなったかな。
『・・・あの子から?あの子そういう企画とか、男に自分から誘ったり、番号聞いたりとか絶対しないけど?』
昔は、結構明るい子って印象あったけどな。よく笑ってた。大人びてるけど、笑うと幼いって感じで、ホントそれが可愛かった。あいつの笑ってる顔、なんかすっげぇ好きだった。
『あの子・・全然笑わないけど・・・』
そうなのか?今、どんな風に変わったかは知らないからな・・・なんかあったんかな?まぁ、そういうわけでクラス6人で遊びに行ったんだ。ボウリング行ったりな。で、ちょっとあいつと仲良くなって、結構そんとき色々喋った。他の奴は全員男だったんだけど、なんか俺怖がられてたらしい。
『まぁ、その顔でネクラじゃねぇ・・・完っ全にヤンキーにしか見えないわよ』
お前・・・黙って聞いてろよ・・・
『ホラ、睨むと怖い!どう見てもヤンキーだったんでしょ?中学の時は』
・・・うるせぇ。いじめられてたからその反動で、ちょっとグレたぐらいだよ・・・
『やっぱり・・・それで?』
で、俺が怖いから誘うのやめよって言われたけど、黙って誘ったって言ってた。同じクラスだから仲良くしたかったって。でも、話し辛かったから、打ち上げで仲良くなれたらって。それ聞いて、すっげぇ好きだと思った。そんなこと言われたこと・・・なかったからな・・・
『・・・』
それから、たまにメールしたりするようになったんだけど、告るとかはできなかったな。遊ぶ誘いもできなかった。
・・・高校入ってしばらく経ってから・・・俺らの関係は、変わった。