食べ物は大空へ…
奴らは常に、狙っている。
お前達の、食べ物を…
「お願いします、姫子さん。どうかあの動物による被害を止めて下さい。」
海水浴場の管理人が、私に頭を下げた。
「お任せください。必ずともこの私、姫百合姫子が止めてみせます!」
そう。
この時は、何も知らなかった。
この動物の、恐ろしさを…
白浜海水浴場。
そこは名前の通り、真っ白な砂浜と、真っ青な海がある、巷では人気の海水浴場だ。
だがそこには、我々人間達を困らせ、一夏の思い出をぶち壊す動物がいるのだ!
私はその動物による被害を最小限に抑えてほしいと依頼を受けた。
私は二つ返事でokした。
この私、姫百合姫子に出来ない事はない!
それを胸に、私は今、白浜海水浴場にいるのだが…
「なによ…何も起こってないじゃない。動物ってなによ?なんにもいないじゃない。」
動物もなにも、人に危害を加えそうなものなどどこにも見当たらないのだ。
これでは来た意味がないのだが…
「さしずめ危害を加えそうなものって言ったら、」
突然のゲリラ豪雨による水害。
まぁそれはないだろう。
何故なら、今日は雲一つない青天なのだから。
「他は…」
高波や地震などだが、
「動物、なのよね…」
動物なんて、本当にいるのだろうか?
もしや、何かの見間違いなのでは?
そう思いながら、先ほどコンビニで買った、唐揚げと鮭おにぎりを食べようと、近くに腰掛けた、その時!
「あっっ!!」
なんと、私の愛しの鮭おにぎりは、空を飛んでいた動物によって、掠め取られていった。
「なっ、まさか、動物って…鳶!!」
驚いている暇はなかった。
私は唐揚げだけは死守しようと、持っていた手を後ろへ回した。
しかし、それが間違いだった。
鳶は私の後ろへと回り込み、いとも簡単に唐揚げを奪いとっていったのだ。
「わ、私の唐揚げぇぇ…」
いつのまにか視界は涙で潤んでいた。
こうなったら…
「鳶っ!覚悟なさいっっ!」
私は鳶に、持っていた唐揚げの箱を投げつけた。
そして鳶は…
私の頬に傷をつけて、上空へと戻っていった。
「か、勝ったわ…鳶を追い払ったのよ!これでもう奴らはこない、依頼完了だわ!」
両手をあげて喜ぶ私に、様子を見ていた若いカップルがこう言ったのだった。
「てか、海辺で警戒もせずにご飯なんかを食べるから、鳶に取られるんだろ?」
「ホント、そんな事しなきゃいい話よねー」
「あの人馬鹿じゃね?」 「ホントホントー」
本当だ。
そんな事した、私が馬鹿だったわ。
それは、今日一番ショックをうけたことだった。
後日、私はこの間とは違う海水浴場に来ていた。
今度は警戒しながら食べようと、近くで買ったアイスクレープを手に、岩場に座った。
「よし、こないわね…」
もう一度辺りを見渡す。
「じゃぁ、いただきまーす♪」
大口を開けて、クレープを頬張ろうとしたそのとき時…
私のアイスクレープは、青天の空へと、旅立った。
昔小さい頃に、お弁当の唐揚げを鳶に取られてしまいました。
この間はクレープ…
私には、鳶の相でもあるのでしょうかね…