光降る夜の街で
以前のものを焼き直し。準備中のものと合わせ連載形式にしました。
光降る町。そう呼ばれる街がある。
「幸福」に満ちたその街は、光を放って辺りを照らしている。
そこに空に向けた望遠鏡を覗き込む少女がいた。
「星を探してるんです」
訝しげに彼女を見る僕のことを見つけると、バツが悪そうに笑ってそう言った。
「こんな街の中で? 」
「はい。…でも何も見つからなくて」
困ったように、彼女は空を仰いだ。
僕もつられて顔を上げる。
ガスの漂う空はぼんやりと明るく灰色で、漆黒の闇なんてどこにもない。
飛行機の小さな光がまたたきながら流れていく。
その下に、まるで昼間のように賑やかな町並みが広がっている。
こんなところで、星など見つかるわけがなかった。
「もっと別の場所じゃダメなのか? 」
僕は聞いてみた。星を見つけるためには、ここは明るすぎる。
どんなに明るい星でも隠れてしまうほどに。
「私はこの街しか知らないから。他の場所なんて行けません」
彼女はずっと、見えるはずのない星を探している。
その星が道を指し示す北極星なのか、明るく輝く一等星なのか。
それとも一瞬で燃え尽きてしまうような流れ星なのか。
そんなことは僕にはわからない。
だんだんと空が白み始めた。星の見えない少女は、これからどこへ歩いていくのだろう。