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白銀の残光 -pLatonic Clematis-  作者: BatC
第二章
70/94

アメイジアの戦略

今回は一ヶ月と経たずに投稿出来ました。


スマホで執筆というのは何処でも出来ていいのですが、いい加減にフリック入力ばかりしていると指がすり減って来ます・・・PCで執筆出来ればいいのですが、デスクトップの方は開いたら開いたでSteamか別ゲーのアイコンをクリックしてしまいますし、ノートはノートでデカすぎて持ち歩くには不便で・・・と。


vaio zみたいな小さくて軽いPCが欲しいこの頃です。





朝のまどろみというのは、布団の外が寒く、中が暖かければ暖かい程に心地良い。


夏の終わりも近付く、この朝方の冷たい空気は、この布団の中での時間を至福の物としてる・・・筈なのだがなぁ。


「・・・んっ・・・ふぅ・・・ふふふ・・・」


暑い。特にこの体温が高い女児(ツィーア)にへばりつかれていると特に。


案外ガッチリとホールドされているからして、抜け出すに抜け出せない・・・確実に起こす羽目になる。


無視して抜け出せば良い?・・・まだ陽は低い。大体朝の6時か・・・7時には届かないくらいの時間だ。


ツィーアの起床時間は大体朝の8〜9時くらい。それ以上寝過ごす事は無く・・・それより早く起きる事も無い。


仮に起こしてしまった場合・・・二度寝など、脅迫的な迄に自分に厳しい彼女はしない。


その代わり、その日の機嫌が極最ッ低に悪くなる。どれ程コレがよろしくない事かと言うと、その日の行政に多大な影響が出るくらいに。


ツィーアはこの地を治める領主、言ってしまえば独裁者だ。彼女の小手先三寸、命令書(ペーパー)一枚書いて押印してしまえば、それだけでこのアルタニク伯爵領が動く。


最近忘れ気味ではあるが、彼女とて魔術師、身体は小さくとも、魔力を使えぬ大人であれば、十数人束になって掛かった所で勝てない位には強い。散弾銃も常に提げている様だし・・・単体の戦闘能力はかなり高い筈だ。


そこらの役人軍人程度では逆らえない。そんな人間凶器が不機嫌で、自分が一切合切逆らえない絶対的な命令権を持っていたら・・・少なくとも俺がその立場なら、気が気でないだろう。


そんなモチベーションの問題も勿論・・・贔屓目に見ても、ツィーアは直情的で、短慮な性格をしている。


殺しは流石にそう簡単にしないだろうが・・・まあ、簡単に苛ついた腹癒せに、適当な者を解雇したりはするだろうな。前例も幾つかある様だ。


流石にそんな多少の不快感から逃れる為に、数多の役人の人生が吹き飛ぶなどと知ってしまうと、流石に好き勝手は出来ない。


で、そんな話をミムルに聞かされた俺が何でこんな目に遭っているかと言うと、それは・・・まあ、件の破壊行為の罰である。


レズンとの戦闘の後、レグロを魔念力(ヴァリーニェ)で吊るしながら核弾頭を処分したり・・・と諸用をこなし、屋敷に帰った俺を待っていたのは・・・寝間着姿の仁王立ち、これ以上無いほどの笑顔だというのに、何故か見れば見るほど寒気がするという謎の表情をしたツィーアだ。


正直言って、あのレズンよりも遥かに・・・凄まじい狂気を感じた。


仕方が無いとして、処罰を甘んじて受け入れる意思を伝えた俺に、彼女が伝えた罰とは・・・まあ、この通り、滞在期間中彼女の抱き枕になる事だった。


他にも幾つかの土木作業や、その他魔力を使う作業、御使い・・・などなど、雑多な作業をさせられている。勿論、拒否権など無い。


まあ、俺も悪いとは思っているし、被害総額を聞いて・・・この程度で済むなら、と甘んじて受け入れている。


馬鹿みたいに掘り返した地面の埋め戻し、護岸のやり直し、巻き添えで沈めた船やぶっ壊した建物、また、大抵の建物・・・商店の倉庫が大半だった事もあり、中に仕舞われていた品物の損害賠償・・・直接な人的被害は、あの屋敷の中だけで済んだものの・・・レズンが殺害した人間・・・あの屋敷の地下には、一体何人の人間の物かも分からない程、大量の人の部品(・・)が保存されていたらしい。何とも悍ましい趣味な事だ。


そうだ、レズンの事だ。


結論から言えば、彼は死んでいない。ただ・・・どうやら、何故か呪われた剣(カルマ)で切った傷口の回復にはえらく時間が掛かるそうで、身動きが取れずに拘束される事となった。


・・・昨日、漸く喋ることが出来る状態にまで修復されたらしいので、今日、暇さえあれば話を聞きに行ってやろうと思う。どうやら・・・彼は俺としか話さん、と言ったきり、尋問官には何も話さなかったらしいからな。


まあ・・・殺さなかったのは、主にニーレイのお願いによる所が大きい。彼女はただ、"彼には役目がある"とだけ言っていた。レズンが話せる様になったら、全て話す、とも・・・。


・・・どうやら、ニーレイとスィラ。あの核弾頭が納められていた地下施設に進入を試みていたらしく、俺が《スヴェルコ・ノーヴァ》をぶっ放した所為で、炎と溶岩が進行方向から噴き出し、エライ目に遭ってしまったという・・・いや、本当に悪い事をしてしまった。


ニーレイの転移が遅れていれば、今頃地下墓地の骨の仲間入り、骨も残らんかも知れないが、と、スィラも普段は一切吸わないパイプ・・・要は煙草・・・を燻らせて、"久々に理不尽な死を意識した"と虚ろな目で言っていたのが、つい先日の事。


今は・・・まあ、後で言うが、現在発生しつつある問題に対処する為、屋敷を離れ、領軍の施設を忙しく行き来している。特に仕事上は問題無さそうだ。


ああ、核弾頭について、だな。


アレについては此方で処理する事が難しい。ならば出来る所に任せてしまおう、という事で、ユキのラクシアへ売却される運びとなった。対価は・・・基本的に取引を担当したのはミムルだが、俺に求められた助言の内容から察するに、恐らくは技術関係か製造設備で話が付いたのだと思う。プレス加工技術だとか、冶金技術、タービン技術、ディーゼルエンジン、電気技術・・・などなど、今後建てられる工場で使用する技術を貰えば良い、と助言したからな。


特に冶金技術。コレはその国の国力、工業力、軍事力に直結する、超重要技術である。


この時代では、剣一本、プレートメイルの留め金一つ、鏃一つ・・・軍事力で言えばそれで、他に目を向ければ農耕道具、鉄骨鉄筋、釘等の建材・・・冶金技術を用いる物は、現在必要とされている物だけでも、挙げればキリが無い。


剣を形作るしなやかかつ硬い金属、激しい運動、衝撃にも耐え得るプレートメイル、鏃の鋭さ・・・何も簡単に達成できる事では無い。そこには誤魔化しても誤魔化し切れぬ、純粋なる技術の積み重ねが存在する。


冶金とは、金属を思うがまま、求めるがままに操る術の事である。鋲の一本、靴の留め具一つ、鍋一つに至るまで、その国が持つ技術、国力が現れる。


表面の仕上げ、厚さ薄さの均一性、強度、耐熱性、耐腐食性、靭性、生産性と、個体差の有無・・・等。


アリエテの製鉄技術は悪くは無い。事実、かなり大規模な高炉が、このデュースケルンに置いても設置され、日夜大量の銑鉄を吐き出している。


レーヴェ河上流、内陸部では鋼の街、と目される街、コンブレナでは"妖精炉"と呼ばれる、火妖精の力が使われている超高性能炉があるらしく、王国、特に上流階級や、王国正規軍の武器等、重要な金属類を生産する一大拠点となっているという。


そこで作られた武具を中心とした道具、アルタニク伯爵領軍でも用いられている物だが、確かにハンドメイド感は拭えない物の、品物としては一級品・・・多分、俺のかつて生きた時代に於いても、マニアが集めそうな質感を持っていた。


これらは単なる鋳造品では無く、しっかりと鍛造が施された代物ではあるが、それでも炭素含有量が多く、硬く、脆い。


俺のカルマも鍛造品である・・・今となっては、であった、と言うべきかも知れないが。


安物では、まだ青銅製の武器も出回っている。この間の地下で出会った冒険者、あれらが装備していた剣は、恐らく青銅製だった筈。そんな気がした。


だが、世界的に見ればアリエテの製鉄技術は一歩劣っていると言わざるを得ない。ヤールーンのドワーフ・・・小人族が持つ製鉄技術の高さは群を抜いているし、ハノヴィアは魔術重視のアリエテと比べ、剣や槍や弓で戦う事がより好ましい、という国民性からか、鉄の強靭性を高める工程が盛んに研究されているという。


・・・噂では、小人族は既に反射炉・・・石炭と、その反射熱で鉄を加熱し、大量の空気を送ることで炭素を初めとして不純物を燃やし尽くす事で除去可能な炉で、"鉄鋼"を生産する設備を既に持っているらしい。


高炉でやっとこさ製鉄をしている人間に対し、恐らく時代にして2世紀近く先取りしている。半端な技術力ではない事は、態々言わずとも分かるだろう。


話が逸れた。


まあ、兎に角はこのアルタニク伯爵領の技術力は、突然変異的な進化を遂げるだろう。干拓地の地盤はそろそろ乾き、杭打ちと土砂入れ、護岸工事が始まる頃だ・・・そこへと建てられるであろう工場群は、計画書を見る限りは、前世のそれらと比べても有数の工業地帯となる予定である。


小人族の街を遥かに上回る設備と面積・・・完成には十年近い年月が掛かる予定だが、最も早い区画は7ヶ月程度で操業を開始するという・・・流石にこの時代、比較的懐事情の明るいアルタニク伯爵領とて、それだけの大事業を一挙に進めるだけの財力は無かった。


よって、すぐに利益が出るであろう鉄鋼業・・・あまり褒められた事では無いが、高品質な剣や槍や矢等の、一般兵向けの武器を量産するための設備をまず完成させるらしい。


これは領軍でも使える上、前述した街、コンブレナ製の武器を遥かに超えるクオリティを出せば、アリエテ王国軍、はたまたはハノヴィア帝国軍への輸出も考えられる。そして・・・どうやら、既にコンブレナ製どころか、ハノヴィア製をも優越する事は容易い、と結論が出たという。


一体ユキとアルタニク伯爵領との間にどの様な取引が成されたのかは定かで無いが、まあ、俺にはあまり関係なかろう。カルマは俺が他の剣を持つ事を嫌に嫌うからな・・・そういえば、銃はOKだったな。食事用のナイフもOK・・・武器にも使えそうなハンティングナイフはNGだった。という事は、弓なども大丈夫なのだろうか?刀剣類で無ければ良いのだろうか・・・本当によく分からん剣である。


そういえばこの少々嫉妬癖のある可変短剣くんだが、ちょっと進展があった。


いつの間にやら、これでもかと奔っていた罅が無くなっており・・・何だか腹が鏡の様に、ぬるりと油でも塗ったのかと思う程にツルッツルになっている。段差一つ無い・・・勿論・・・色は真っ黒である事に変わりは無い。


何だか真っ黒な水銀をそのまま固めた様な見た目。変形する時も、まるで液体の様に・・・あくまで見た目だけで、変形中でも普通に硬質な金属なのだが・・・まあ、あの変形時の耳障りな金属音が無くなったというのは歓迎すべき所である。割り切ってはいたが、実を言うとアレはかなり不愉快だった。


段々と俺の都合の良い様に変化しているな・・・良い子良い子と拭いて綺麗にしてやると、少し気持ち良さげに・・・軟体動物みたいにくねる所は何だか・・・ゲテモノ的な可愛らしさを感じる。目が無い所を見ると、多分深海生物か何かの生まれ変わりだろうか、と思う。


・・・と、まあ割とどうでも良い回想を続けて来た訳だが、実を言うと肝心な事が未だ解決の目を見ていない。


レグロ・アルタニクの事だ。彼はまだ見つかっていない(・・・・・・・・)


脚を叩き潰して動けなくした筈だったのだが、何故があの場には血痕と共に核弾頭が転がっているだけ・・・奴の姿は跡形も無かった。


コレが目下の最憂慮事項にも繋がっている・・・前述した"問題"に関する事だ。


さて、ここで一つ前提を述べておこう。アルタニク伯爵領の立地と周辺諸侯との関係だ。


アルタニク伯爵領は南はアミール、アイフュル、オスケンという町まで、東はボレーフェルトより少し西側に行った所までという広大な領土を持っている。


アミール、アイフュル、オスケンの三都市は、ほぼ完全に軍事の街、アルタニク伯爵領の体裁を取ってはいるが、実質王国直轄領に近い扱いを受けている。それぞれデュースケルンの南に100km行くか行かないか程度の距離にある。


東側は同じく、デュースケルンから100km程離れた地点まで、だ。北と西は海岸線まで、まあ、北も西も50kmも行かない内に海に出てしまう上、その50kmの範囲も大半が塩水混じりの湿地帯なのだが。


さて、この広い事には広い領境線を持つアルタニク伯爵領が接する他領は勿論、比較的多い。


先ずは東側のボートル準男爵領、ここはアルタニク伯爵領とアズブレル辺境伯領に挟まれた地域で、この二大領地を初め、周辺領へ農産物や材木を供給する一大農業地帯である。


領主はこの間の《スクウィッド》襲撃で負傷し、脚を失ってしまったらしいが・・・今では義足を付けて、荒れてしまった畑の復興等、精力的に仕事をこなしているそうだ・・・元気で何よりな事だが、彼は既に息子へと仕事を引き継ぐ手続きを始めているらしいので、その前に軽く一仕事片付けておくか、程度の認識なのかもしれない。


その北方にも土地はあるのだが・・・あの辺りは誰も統治する人間が居ない。


書類上はアルタニク伯爵領と、アズブレル辺境伯領の管轄下とされてはいるが、人は住んで居らず・・・何があるかと言えば、森と木と荒地と・・・魔物の巣程度である。


端的に言えば、魔物と人外の領域である。俺が学校の課外活動に於いて脚を踏み入れたのも、この地域の東端であった。


この地域の外縁部に関して言えば、人が、つまりは衛兵や冒険者が定期的に間引きをしている為、子供が・・・と言っても魔術師に限るが・・・危険は比較的低い。まあ、危険である事に変わりは無いのだが。


その南方、アルタニク伯爵領から見て東南東から南東、南南東には三つの子爵、男爵領が存在している。


上から順に、ネール男爵領、シェム男爵領、コール子爵領である。領土の広さの順は3、2、1で、領としての能力の順はそれぞれ、3、1、2である。


ネール男爵領については、特筆する産業も無い。ただ、領地の大きさに比して、住民の数が多いくらいだろうか・・・敢えて言えば、夏冬の寒暖の差が比較的穏やかで、住み易い地域だからして、諸侯の保養地として知られている事くらいが取り柄だろうか。


その影響からか、彼処は強力な諸侯の監視の目が強い関係で、何をするにしても有力諸侯のご機嫌伺いをしなければならない。まあ・・・それが認められれば、諸侯から逆に金が入って来るからして、比較的裕福な地域と言える。


この地域には問題は無い。あるのは・・・その下二つ、シェム男爵領とコール子爵領である。コレがかなりキナ臭い。


アルタニク伯爵領、はたまたはその向こう側・・・スティングレー侯爵領等から大量に武器や防具、馬用、人間用の食料、輜重、馬・・・一般的に言う、軍需物資が大量に運び込まれている事が分かったのである。これは以前ツィーアとの雑談に於いても話題に上った事。


この話には続きがある。流れ込んでいるのは、何も武器だけでは無い・・・当然、武器があるなら、それを使う者が居るのである。


数日前、シェム男爵領の西端、男爵領軍野営地に、凡そ7000の軍勢が集結していた(・・・・)事が分かった。


それと同時、コール子爵領軍の主力5000名が、領都から出撃したとの情報が入っている。


補給の問題で、恐らく戦闘要員はその半分かそれを少し上回る程度だろう・・・が、それでもアルタニク伯爵領軍が一度に投入出来る軍よりも多い筈。


第二弾の報告では・・・既に領境を越え、中途の街を避け、荒地や森を抜けてこちらに向かっているらしい。


「これは何のつもりか?」と両領に出した使者も、侵攻する軍へと送った使者も戻らず・・・これは本気だ、と判断したデュースケルンは現在、戦闘態勢を整えつつある。


動員こそしては居ないが、冒険者を中心に追加の兵を集め、休暇中の軍を直ちに召集し、兵は身体の慣らしを行い、将は防衛計画を見直す・・・軍属は大忙しだ。


さて、この動きに際して、スィラも兵の調練やら何やらと協力してくれている。


アルタニク伯爵領軍の兵は基本的に歩兵で、その得物は長槍である・・・槍術に明るいスィラが教えれば、きっと一つか二つ、技術的に上達してくれるのではないだろうか。


ただ、その立場はあくまで客将の使用人の一人・・・良くて軍事顧問程度の者であり、恐らくは実際の戦闘に加わる事は無いだろう・・・少なくとも、公には(・・・)、な。


俺も特に参加する予定も無い・・・何故かといえば、そろそろエルクに帰らなければ学校の始業に間に合わなくなるからだ。


ツィーアは・・・仕方があるまい。領主と学生、二足の草鞋の生活をしているのだから、この手の事は許容されている。況してやこの様な緊急事態ともなれば、逆にこの状況を放置すれば、顰蹙を買うどころでは無いだろう。


まあ、彼女にはラクシアが付いている・・・どうやら、友好使節団(・・・・・)と称する部隊・・・機甲部隊が派遣されて来るらしい。


まあ、シェム男爵領軍とコール子爵領軍には御愁傷様、としか言えない。ちらりと見た資料の中に、重火炎放射(プラチーノ)システムなどという不穏な単語が見えたのは、多分気の所為では無いと思う・・・。


と、暇を持て余した俺の肩を抱き締める腕が、より大きく動く・・・伸びをする為か、俺は漸く解放された。


「・・・おはよう、ツィア」


腕の当たっていた部分が汗ですーすーと冷える・・・これは水浴びをしなければやっていられないな。


「・・・ぉはよ、エリィ・・・」


大欠伸と共に、端に涙を溜め込んだ翡翠色の薄目が、今しがた開けたカーテンの向こうの陽光を照り返し、キラリと光る。


「良く眠れたか?」


・・・大人しくしていれば可愛い事この上無い少女なのだがなぁ、と何度目になるかも分からぬ溜息を吐きながら、水を二杯、用意されていたカップを返して注ぐ。


「・・・ええ・・・痛たた・・・足首が痛いわ・・・」


「成長痛だろう?良かったな、背が伸びるぞ?」


ばさりと脚に絡まったシーツを投げ捨て、素早く寝巻きを、朝支度の為に入って来た使用人へと放る。


「・・・直近の公務に影響が出る様な痛みじゃ無かったら、いいのだけれどね。歩くのも億劫だわ」


侍女が広げるシャツに腕を通し、履くタイプでは無く、足を上げる必要の無い、巻くタイプのスカートを身に付ける。ショルダーベルトで固定するヤツだ。


何だか・・・古臭い黴の生えた様な映画に出てくる小学生みたいな見た目だな、という感想が出てくる。


「あ、監獄に行く時は入り口に立ってる兵を連れて行くのよ?案内役と許可の印、その両方を兼ねているから」


ああ、と返事を返しつつ、俺も俺でラフな格好・・・簡素なシャツとパンツに着替えた。


「・・・いい天気だな」


今日も頑張るか、と一つ、窓辺で背伸びをした。










ツィーアに紹介したところ、砂糖と粉乳を混ぜて飲むのが美味しくて頭が冴える!と好評を得た結果、朝食には必ず出てくる様になった珈琲をブラックで頂いた後・・・ニーレイと案内の衛兵を連れ立って監獄へと向かう。


この領に於いて犯罪を犯した者は、城壁外のある地区へと送られる。


監獄地区、本領での、はたまたは比較的強い力を持つ犯罪者を収容する能力が無い周辺領の犯罪者が収容されている。特に、魔術師だな。


力の強い魔術師を捕らえておく事は難しい。単純な身体能力もさながら、魔力の使用を許せば、単なる枷は勿論、牢獄の分厚い岩壁も破壊し、脱走する事など息をする事の様に可能である。


ではどうやって捕らえて置くか・・・方法はある。


魔術師の力の根源は魔力だ。魔力は体内から放出される物であり、一部の例外を除いて外から取り込む物では無い。


ならば、その体内の魔力の量を低下させてやれば、基本的には通常の人間と変わらない存在になる筈だ。そして・・・その為の道具は存在する。


さて、闇魔術の一つに『吸魔(ロルゴーシェ)』という術がある。これは語の意味の通り、相手の魔力を吸う・・・が、その特性からして少々使い辛いというか、使う機会が無いというか・・・兎も角、微妙な術である。


まず第一条件として、術者が直接相手の魔力に触れていなければ吸収出来ない。魔術発動の直前の放出時なら兎も角、通常魔術師が保有する魔力が存在するのは肉の下、体内だ。


つまり、相手の肉の中に指を突っ込むなりしなければならない、傷付ける必要がある。魔術行使の際の放出された魔力を吸収するにしても・・・魔力放出から魔術の発動までのタイムラグなどあって無い様な物だ。反応してからこちらも魔術を行使せんとしても、まず間に合わない・・・余程の実力差があればまた別かも知れないが。


第二に、人対人で使うならば・・・これは当然の事だが、自分に相手の魔力を吸い取る事が出来るだけの、魔力量のゆとりがなければならない。


つまりは、こちらも魔力をある程度消費した状態でかつ、相手が未だ魔力、魔術を使い続ける状態である・・・前述した通り、実力差が無ければこんな事は出来ない。


あまりに想定される使用可能なシチュエーションが限定的過ぎて、俺に関してはまず戦術に組み込むという事を考えていない。


反応速度とて・・・まあ、脳の演算能力強化による思考加速状態、など今までは全く想像だにしていなかった概念なので、まず人並みかそれ以下な俺としては競える種目では無かった。


例外として、吸血鬼達はこの術を噛み付き(バイティング)という方法で容易く行使する。これは・・・まあ、何かしらの方法で無力化した相手にしか使えないが、それにしても彼等は幾つか対応する手札を持っている・・・コレをヒントにした魔道具が、監獄では使われているという。


ニーレイが言うには、吸血鬼という生物は驚異的に燃費が悪い生命体だという。通常の食事で得られる熱量では、その身を維持する基礎代謝を賄う事すら出来ず、常に魔力を生命エネルギーとして使い続けている。


その為の、上位の吸血鬼ですら、吸血行動や月浴び・・・月の光で光合成の様に魔力を補充する・・・をしなければ生きる事すらやっと、況してや下位の吸血鬼どもならば、そのままでは飢えて死んでしまう程であるらしい。


更に欲張り、魔術を行使しよう物なら・・・生命活動と同リソースを消費してしまうからして、更にそのエネルギー事情は悪化する。


例外は満月の日。ほぼ無尽蔵、使われた端から魔力が補充される程、月の魔力は濃厚らしく、その日だけは正しく、夜の王と化す・・・というのが彼女の解説を端折ってみた物だ。


そういえば、ニーレイはヤールーン/アトラクティアの者ではあるが、言葉に関してはアリエテ寄りな喋り方をする。


ああ、この世界の言葉は、ヤールーン、ハノヴィア、アトラクティア、南方民族全て共通の言葉を話すが、勿論、其処には地域毎の訛り、言葉運びの差異がある。


例えばハノヴィアでは非常に簡潔に意思を述べる事、つまりは無用とされる言葉の装飾修飾を可能な限り省く事が好まれる。


逆にアリエテでは詩的な、言ってみれば回りくどい表現を使い、伝えたい言葉を直接的に伝える事はあまり好まれない。


ヤールーンはどちらかといえばハノヴィア的な作文の仕方が好まれるが、発音に於いては文節毎の母音を伸ばす様な訛りがあったりする。


例文として、時間を問う表現、「今が何時か分かりますか?」というニュアンスで相手に問うとしよう。


コレをハノヴィア式に言うと、「今何時?」もしくはアクセントだけで「時間?」という、簡潔な表現。カルセラは基本的にこの様な喋り方をしていた。個人的には好ましいと思う。


アリエテ式に言えば、「お手を煩わせてしまう事に大変心が痛むのですが、今日の刻が何分目の時に影を落としているかご存知でないでしょうか?」という、えらく婉曲的で冗長な表現だ・・・筆頭はアイク、カリナ、そしてケイト女史だろうか・・・ツィーアはどちらかと言うとハノヴィア寄り、公の場ではアリエテ式に作文するが、普段はカルセラ程では無いものの簡潔に物を言う。先の例を使うなら、「今の時間は何時?」程度。大して変わらないと思うかも知れないか、少なくともカルセラ程ぶっきらぼうには思われまい。


ヤールーン風に言うと、基本はハノヴィアチックな言い回しをするが、やや長い、「時間?」よりは「今は何時?」という程度の表現が好まれるし、「今の時間を把握する方法を持っている?」というよりは、「今は何時?」が好まれる程度。ただ、前述した通り文節毎の母音が伸ばされてくっ付く。ыとеがくっ付いて、"うぃえ"みたいな変な音が出る・・・筆頭はレズンやスィラ・・・スィラはアリエテ暮らしが長いので、母音のくっ付きはあまり無く、単にハノヴィアよりは丁寧で、アリエテよりは端的、という風になっている。


アトラクティア訛りと俗に言われるのは、単にアクセントの差異や発音。コレを例示するのは難しいが・・・「T()ime」が「Ti()me」になるだとか、р(エル)を発音する時に舌を巻かないだとか・・・まあ、色々、だ。そんなに酷くはないものの、メアリーは言葉の端々に基本はヤールーン風ではあるものの、そんな言葉が出て来たりする。


だから、アリエテ人から見たハノヴィア人というのは、ズケズケ物を言うぶっきらぼうな奴ら、であるし、ハノヴィア人から見たアリエテ人は、一々面倒くさい言い回しをするうざったい奴ら、両者から見たヤールーン人は、前の文節の最後の音と次の文節の頭の音が被って聴き取り辛く、アトラクティア人はアクセントがオカシイ田舎者に見える、という風になる。差別的に言えば、と注釈が付くが。


・・・俺?習ったのはアリエテ式だ。使っているのは・・・まあ、最近ツィーアやスィラを見ていると崩しても良い気がして来て、な。


まあ、アリエテ式の言葉を習ったお陰で、言葉のボキャブラリーはよく増えたと思う・・・嫌みの様な婉曲的表現というのは、自ら使ってみなければ分からん物なのだ。


さて、そんな事をニーレイと語らいながら船上の人となっていると、分厚い、暑さだけでウン十メートルな城壁を一枚超えた。


一度水路上に設けられた検問の様な・・・鉄格子の水門の前に停船する・・・此処からが監獄エリアだ。


ここで俺の身分を証明、ツィーアの客人という身分だ。ニーレイに関しては・・・面倒事が起きる予感しかしなかったが、一応居るよ、という事は伝えた。認識阻害魔術で向こうには見えないが。


まあ、身分が身分なので、此方が子供に見えたとしても簡単に通る。保護者役の衛兵も居るし・・・そもそもここの領主は子供だ。


水飛沫と共に水門が上がり、その下を通る。


少し行くともう一つ・・・分厚い鉄板で出来た水門、丸太を組んで出来た水門が開く。その度に壁を通り抜けている様だ。


案外門を通ってから長く進んだ。半地下の様な・・・建物内の船着場へと、俺たちは降り立った。


「・・・湿気た場所だな」


「監獄ですから・・・歓待とはいかない物でして・・・」


若い、恐らくまだ10代であろう衛兵が会釈する。此処からは彼の案内だ。


監獄内は思ったよりも綺麗だ・・・まあ、何でかって、囚人が徹底的に掃除をしているからだが。


柵の向こうに囚人が見える。体格の良い者、細い痩せた者、女、老人、皆麻で出来た簡素な服を着ており、見るからに、という風たいではあるが・・・作業中の様だ。石工か・・・石畳用のブロックを削り出しているのだろう。


物珍しい、幼い少女の見学者に興味津々な様だ。チラチラと、視線が煩わしい。


「・・・あそこにいるのは唯の人間です。魔術師や魔族は・・・この下です」


ひゅう、と風が吹く・・・縦穴。


下が見えない・・・ただ、壁に沿った螺旋階段が下に続いているだけ・・・。


降りる、ひたすら降りる。


ひやりとした石壁で冷やされた冷気が髪を吹き上げ・・・風の音は地の底からの怨嗟の嘆き声の様。


底は・・・運河から染み込んだ水が壁面から滴り落ち、苔が石を覆う・・・松明が無ければ真っ暗な空間だ。かなり寒い。


「・・・そこの、一番の牢です。奥に進めば居ます・・・僕はこの先に進む事は許されておりませんので、よろしくお願いします」


その言葉にうなづき、松明の火を分けて貰ってそれを片手に進む・・・足音が嫌に大きく響いた。


ぐしゃり、と鼠を踏んづけてしまった。悲鳴が煩わしい・・・舌打ち一つと共に、もう一度ブームの踵を叩きつけて黙らせる。


その音に気付いたのだろうか・・・暗闇の向こうで、鉄の鎖が鳴ったような気がした。


「・・・起きているか?レズン」


再びジャラジャラと数多の鉄が石を打つ音・・・少し掠れた呻き声が聞こえた。


「・・・エリアスちゃん、かなー・・・?」


ちゃん?と首を傾げる事は我慢し、その声の方へと松明を向ける。


果たして其処に、彼は居た。


その姿を形容するに、あまり多くの言葉は要らないだろう・・・手足、胴に打ち込まれた太く、青白い光を放つ、複雑な紋様の入った杭・・・それが、彼の身体を壁面に張り付けていた。


この杭・・・そう、コレが『吸魔』の魔道具・・・"肉喰(コーツ・ジャーマ)"である。


骨肉に喰い込み、そこから魔力を吸い上げ、外に出力する。それだけの機能を持った道具で、外部に魔力で動く魔道具を繋げば、効率的に魔力を消費させる事が出来る、と。


元はと言えば、魔物の魔力を使って、魔力灯等の生活魔道具を動かす事が出来ないか?という試みから生み出された道具らしい。


今はもう死んでいるが、かつてとある魔術師が、自分の妻の浮気相手を鎖で縛り上げ、"コーツ・ジャーマ"を間男にぶっ刺して、魔力欠乏状態にし、数年間に渡って男を監禁、拷問し続けた・・・という、中々イカれた奴が考案し、魔術師を長期間無力化する術として、改めて世に送り出されたのがコレである。


実際にかなり有効であるらしく、一度無力化してコーツジャーマを打ち付け、その上で拘束すれば、まず逃げられる者は居ない。


例外は馬鹿みたいに元々の身体能力が規格外な連中・・・人の形をした化け物・・・そんなのも居る、と。まったく恐ろしい事だ(すっとぼけ)。


「調子はどうだ?・・・漸く喋れる様になったらしいではないか・・・是非とも、牢屋飯の感想を聞きたい所だな」


「・・・このスープを作ってる奴は運河の水を沸かしたらスープになるんだとママに教わって育ったらしーね。それじゃあ・・・何から話そっか」


声は自体は掠れているが、彼にとってそれは言葉を発する上で、特に障害などにはならない様だ。


「じゃ、まず私から話そっかな?」


襟から飛び出したニーレイ・・・正直、小さいと言っても服が不自然に盛り上がるので、そろそろ別の出歩き方を模索して欲しい所だ。


「まず・・・私とレズンの関係から、ね」


紫の髪と翅をはためかせ、彼女は木の椅子・・・赤黒く染みが付いている物騒極まる匂いがするモノではあるが、多分普通の椅子だ。


「結論から言えば、会ったのはデュースケルンに来てからが初めてだよ。それ以前に何か交流があったか、と言われたら、無いって言えるね・・・完全に初対面だった事は間違い無いよ」


・・・てっきり顔見知りかと思ったのだが・・・出身も同じだろうし。


「でも・・・ま、お互いにこっち(ヤールーン)じゃ有名人でね、顔は知らずとも、風聞だけは色々と聞くんだよね」


例えば、と彼女は指を顎に添える。


「レズン・アスカルディーダ、吸血鬼公正一位、アスカルディーダ家の長男。乳母として飼われて(・・・・)いた人間の女を、父親が弟に下賜しようとした腹いせに、幼くして弟を殺害、その罰として乳母を殺された復讐に、父親を殺してその流れで、弟妹母祖父祖母に至る、使用人以外のアスカルディーダ家の面々を拷問して皆殺しにした気狂い・・・その後は数十年間行方不明だった、他人の痛みに性的興奮を催す・・・って、有名にならない訳がないような奴だよ、コレは」


酷く軽蔑した様な声色で、くい、と顎で指された彼は、ハッ、と鼻を鳴らし、馬っ鹿らしー、と呆れた声を上げた。


「一体どの口で、このボクが気狂いだって?同類殺し(・・・・)なのはお互い様じゃーない?・・・キミの場合、直に手を汚すのは好きじゃないみたいだけど」


そんな煽りにも、彼女は表情を変えない・・・お互いにあまり反りは合わない様だ。


「言い争いなら、私が帰った後にしてくれ。今は私が状況を把握する場だからな・・・勘違いするなよ?」


このままだと何時までも罵倒合戦が続きそうな気配がした為、釘を刺しておく。


ちっ、と舌打ちはしつつも、一応はお互いに矛を収めてくれた。


「・・・さて、もう一つ・・・ニーレイ、説明を後回しにした事柄がもう一つ・・・あったな?」


座る所は・・・この床には座りたくないな。


ならば、と氷の腰掛けを作成・・・単なる台では無く、しっかり自分の尻の形に合わせた窪みを作ってある・・・自分でも器用になったなぁ、と感慨深くなる。背凭れは流石に冷た過ぎて、凭れ掛かるのも嫌になると思うので作らない。


「・・・じゃあ、私達(・・)が従ってる存在、"陛下"の紹介をしようかな?」


・・・私達(・・)、か。一体それは何処まで含まれているのやら。


大体想像は付くが、一応は聞いて置こうか・・・名は知れども、正体は知れない奴だろうからな。


「ヤールーンが出来る前、アトラクティアが出来る遥か前・・・太古の昔から生き続ける超常の存在・・・唯一無二、私達の王」


その声色からはこの上無い怖れと畏れ、敬意と尊びが見られた。


「・・・魔王ウルティム・アメイジア皇帝陛下。本人曰く・・・世界の名を持つ者、そして・・・」


ヤールーンの魔王・・・ウルティム・アメイジア・・・成る程、名は覚えた。


・・・何処までがその、アメイジア氏の掌の上なのかは知らんが・・・その内、しっかりとお話し(・・・)する必要がありそうだな。


ニーレイとレズン、二人の奥に居るであろう、人物へと思いを馳せながら、シャツの裾を弄ぶ。


「・・・今回、デュースケルン(ここ)で起きた事の筋書きを書いた者、って言うのが正しいかな?」


・・・訂正だ、何発かは殴ってやりたくなった。


「・・・・・・そうか」


真新しい、自らの足先を包む黒い革靴の爪先に視線を落とす。


駄目になった前の物の代わりに、数日前、市場で買った物だが・・・既に革の硬さは慣れ、細やかな傷が付いている・・・そう気にするような事では無いが。


「件の桁数が可笑しい請求書の宛先が決まったな・・・・・・しかし、何故こうも面倒事が向こうからやってくるのかね・・・もうブレームノに引っ込んで隠居していた方が良い気がしてきたぞ?」


いい加減に疲れたし、面倒くさい・・・学校を疎かにするつもりは無いが、卒業後は本当に片田舎で畑でも耕して暮らそうか、と思ってしまうレベルで相手が大きい。


ソレに対処しようとすると・・・ニーレイに関しては、その影響を大きく受けているという。協力してくれるどころか・・・最悪敵対するという可能性もある。


魔王ウルティム・アメイジアが如何程の力を持っているのかは分からないが・・・彼女らが俺の元であろうと当たり前の様に従っている所を見ると・・・少なくとも俺よりは遥かに強いのだろう・・・正面切ってぶつかりたくは無いな。


「・・・うんにゃ、それは私が困っちゃうかな」


そう言った彼女の眼を見て・・・思わず身を引かざるを得なかった。


「・・・エリアスは主人公なんだよ。この歴史の(ページ)を埋めなきゃいけないの・・・だから、世界を変えなきゃいけない・・・今回みたいに、ね」


今まで・・・これ程までに欲望でドス黒く濁った瞳を持つ者が居ただろうか?


脅迫的な迄な眼孔、狂気的な迄の意思。


「今回の・・・ラクシアなんて国が出て来るなんて、陛下の計画には無かったんだよ?もし、ラクシアがアルタニク伯爵領に手を貸さなくても、レズンや・・・他にもかなり有力な魔族がこの領の危機を救う事になってたんだ・・・それを、今まで世界を動かして来た陛下の計画を狂わせた(・・・・)んだよ?・・・今回の事で改めて確信したよ、やっぱりエリアスは・・・」


呼吸を一つ挟み、それでもなお待ち切れぬと、言わなければ、と、矢継ぎ早に言葉を紡いだ。


「・・・この世界に望まれた救世主(・・・)なんだよ」


・・・そんなに汚い言葉で紡がれた救世主(・・・)、真面である様には思えなかった。





11/10 修正

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