プロローグ、気絶の調味料
ギャグのセンスを磨くために書いてます。テンポよく読んでいただけると幸いです。
この世界には、何かを成すものと、何かを成さないものがいる。当たり前の話だ。
そんな俺はというと、とある高級ホテルで料理人をしていた。しかし、何かを成したわけではない。
ただ毎日がルーティンワークのように過ぎていく。歴史にも残らない、そんな日々。
だから俺は何か変わった日常が欲しかった。いっそ異世界にでもなんでも飛ばしてくれと、ヤケクソにタバスコを料理にかけてやった。
成金趣味の太った女性が、急に咽る。ざまぁみろ、お前もなにかをなしとげたわけじゃないだろう。そう思った。
もっと清々しい気分になりたくて、今度は自らのフケを料理にかけた。そしたらオーナーがすっとんできて、僕を羽交い絞めにした。
宙を舞うタバスコ。赤い液体が目に染みて、俺は絶叫し、そのまま気絶した。
次に目が覚めると、俺は異世界にいた。いや、嗅いだことのない調味料の香りがした、ということで判断した、俺は異世界にいると。
俺は香りの元が香草だということに気がつき、ぱくりと食べた。
誰かが叫ぶ。どうやら俺はテーブルで食事をする家族が目の前にいたことを失念していたようだ。
「おい! お前どこのどいつだ? 常識はないのか?」
なぜだか異世界なのに言葉が通じた。タバスコのせいで意識という弦がチューニングされたのだろうか?
とにかく目の前のヒゲの男は起こっている。そりゃ、勝手に家に入られて、食事を邪魔されればだれだって怒るだろうと思い、急に俺は自分が客にしたことがとんでもない重罪のように思えた。
「すいませんすぐに出るんで」
焦点が合ってない会話のように思えた。
なぜなら、「常識はないのか?」というのがさきほど俺が思っていたことだと勘違いしていたからだ。
「どうやら、この辺のもんじゃないようだな。背が高く、細い。顔もシンプルだ。しかし、お前、それを食って大丈夫なのか?」
ヒゲの男が言う。俺も馬鹿ではない。すぐに香草を食べるのをやめた。どうやら食べるものではないらしいからだ。比較的おおらかで話せる人だと思い、非礼を詫びてからこの草のことについてきくと、
「それはムシヨケソウだ。ムシがよらないようにするものだな。ムシがよけるならば人がたべても悪いものではないかと思っていたが、ふむ」
と、男もぱくっと噛んだ。
「んん!」
男は目を見開き、これはやばいぞ、とつぶやいた。
「お主、味に心得があるようだな?」
確かに料理人はしていた。味のセンスがあるとすればそのおかげだろう。
油断していると、俺はまた香草であるハエヨケソウを男に食わされ、卒倒していた。
はい、プロローグです。次のおはなしでは「魚料理」を書きます。ギャグセンス、つくといいな。