◆32話
空き時間に小分けに書いていたので、話の整合性皆無かも。推敲もしていなので、気付かれぬようこっそり修正する可能性大。
始めっ! ――その声が聞こえた直後、大和は眼前に何かが迫るのを感じ取った。視界にはなにも捉えていない、けれど確かに空気がうねりをあげている。
「!?」
だから大和は反射的に頭を沈めた。
兜に何かが掠る音。軽い痛みに襲われる。
「ちぃ、ッ」
風切り音と、背後で地面の砂が撥ねる音。
その瞬間、大和は理解した。
不可視の風弾の魔術だ。
一か所にとどまっていたら、いい的になる。大和は咄嗟に駆け出し、今よりも距離を取ったあと左へ旋回した。その後を追うように、弾ける音と細い土煙がついてくる。
いつまでも逃げ回れるはずがないのは分かっている。反撃とはいかずとも状況打破の術はなにかあるはずだ。
大和は思考をめぐらす。
幸い、風弾は不可視とはいえ察知できないわけではない。魔方陣が煌めけば発射のタイミングが分かる。弾が動けば空気のうねりで軌道が分かる。なにより、魔術である以上、発せられる魔力がいい便りだ。
ならば、対抗策はある。
「ぐ、ッ」
方向転換、旋回からソフィアへ向かって直進する。
肉体強化を施した体は、恐ろしく軽い。そしてそこへもう1つ、感覚の鋭敏化を試み発動した。
「っ、うッ!」
直後。
「えぐ! あがッぁ? っ?!?」
普段の何倍にも増幅されて自身の中へ叩き込まれる情報という情報。そのすべてが大和の感覚を蹂躙した。たまらず魔術を解除するも、剣を取りこぼし、酔いにも似た感覚に頭を覆う。よろける大和を、
「かはッ!!」
ソフィアの風弾が弾き飛ばした。
「調整に気を付けないと、魔術によっては副作用のように自分の身に返ってくることもあるのですよ。身に染みて分かったでしょう?」
「……、っ」
大和が何をしようとしたのか、読み切っているからこその言葉だった。しかし今は、悪態を吐くよりもその場から離脱することが先決だ。即座に剣を拾って体勢を立て直し、魔方陣を2つ展開する。
『火炎』『鏃形』『射出』――求めるは、風属性。
2つの小さな火炎が素早く軌跡を描いて飛んでいく。が、その魔術が発動するのとほぼ同時にソフィアも魔術を発動させていた。
距離を取る大和は、視界の端で2つの火弾が空気の壁にでも阻まれたかのように消えるのを捉えた。だが、もとより攻撃性は重視していない。体勢を立て直すには十分。
「ふっ!」
息をひとつ強く吐いて、感覚の鋭敏化を再度試行する。
弱く、弱くだ。そう自分に言い聞かせ、しかしソフィアの動向は注視したまま。肉体強化を施した体をすぐに行動に移せるように腰は屈める。
じん、と大和は脳中心部が熱をもつ錯覚を感じた。
違う、もっと弱く。
念ずるように奥歯を強くかみ合わせると、少しだけ熱が和らいだ。
これこそが魔力調整の感覚だと、大和が理解する前にソフィアが動いた。魔方陣が展開、2つの魔力が流れて煌めき魔術が発動。まったく見えていなかった一連のプロセスが、今の大和にはおぼろげながらも把握できた。
だから、
「……っく」
そのまま前進する。身を低くして初撃を避け、駆ける。――よし、いけるッ。
迎撃の魔術は、再び不可視の風弾だ。けれど分かる、反応できる。反応が出来るのなら、
「ぐ、ぎ」
避けることだって可能だ。
「っ、ぎッ!!」
初撃の回避は偶然で終わらせることはなかった。細かく身をよじって回避する大和。やや速度は落ちるも、だが駆ける足は止めない。対してソフィアは、僅かばかりも慌てた様子はなく、風弾の数を増強することで対応した。
「ッ」
回避した一発が、耳のすぐ横を通って行った。兜ごしに聞こえる鋭い風切り音が、当たったときの衝撃を想像させる。自身も加速しているとなれば、風弾の威力はその分上乗せされるものだ。正面衝突してフロント部が大破した交通事故車両を思い出す、背筋が薄ら寒くなった。
それでも、もう少しで剣が届く。あと10メートルない。
自分の立ち回りの基本はゴドウィンで確立済み、そうだ数十分前を思い出せ。
大和は自分に言い聞かせる。戦うことを周りが望んでいるのだから、と。そうすれば、恐怖に足が止まることはなかった。
距離が縮まるにつれ、回避が難しい間隔で魔術が襲いくる。
ならば、補うために魔術を使えばいい。――『火炎』『鏃形』『射出』――求めるは、風属性。――火弾が踊り出で、風弾を打ち消した後はそのまま軌道が逸れてそこらへ飛んでいく。
ソフィアは驚異的な速さで魔方陣を展開から発動を繰り返す。1つ発動したら次を、1つ発動したら次を、そうして大和の目の前には礫をばら撒いたように風弾の嵐。
けれどラグは1つ1つ確かにある。
集中しろ、潜り抜けろ。大和には瞬きすら惜しかった。
いくつも避けて、避けて。
無理ならば、火弾で打ち破る。
「っ、くぅ」
左肩に被弾。咄嗟に往なしたため直撃してはいない。被害自体、ジンと鋭く痛むが大したものではない。拍子抜けするほどだ。
だが、上半身が跳ね上がってしまった。バランスが崩れ、このままでは右へ転倒する。
どう切り抜けるかなど、熟考する暇はなかった。
重力の流れに身を任せる一方で、魔術を展開する。
『土壁』『堅牢』『守護』――求めるは土属性。
発動、前方に高さ1メートルほどの横長の壁が生まれる。それに身を隠すようにして、大和は回転受け身をとった。自身の速度が速度だけに、かなり無茶な行為だ。それが災いしてか、再び立った時に吐いた息からは血の匂いが、口腔内では血の味がした。
だからといって突っ立ているわけにもいかず、駆けだす。
「ッ! うく、っ」
右腋から背中にかけての肋骨が痛んだ。一瞬、大和は顔を顰めたが、痛みはすぐに消え去った。この感覚は超速回復だ。
ああそうか、今の体は多少の無茶はきく体だった。などという思いが大和の胸中に到来した。
化け物め、と苦虫を噛み潰したような渋い顔を浮かべる。普段の思考なら、この時点で自身の力の悍ましさに堪らず心が折れていたろう。
「ぐぅ、ッ」
しかし、今は歩みを止めるわけにはいかなかった。
自分の能力に頼る気持ち、自分の能力を認めたくない気持ち。二律背反は僅かに心を蝕んでも、現状を打破してくれることはない。
だから大和は、今は考えない。なおも歩みを進める。
戦え、と世界に絡め捕られた手を引かれるままに。
走れ。
避けろ。
弾け。
走れ、走れ、走れ。
「ぉおお、うおぁああ――」
そして、見えた。
目の前の風弾を消し飛ばせば、人ひとりの体を捻じ込むだけの隙が生まれる。
魔術を発動、火弾を射出する。その後ろを追って走り幅跳びのように跳び、正面に向かって剣を振り上げると空中で大和の体が反った。
火弾が風弾を打ち破ったことで生まれた隙に、体をねじ込む。
同時に、剣を振り下ろす。
「――らぁあああッ!!」
上々の間合い。
大和の剣が、届く。
「っあ!?」
そのはずだった。
大和の体が、頭上から落ちてきた水球にくるまれる。
届く算段だった剣に抵抗がかかり、重くなる。ごぱ、と気泡が口から吐き出された。
これは、水牢の魔術。
しかし、いつの間に。
大和が次の行動を起こすよりも早く、ソフィアが片手を空中ではらう。すると、大和を内包したまま水球はぐん、と地面に引っ張られたかのように斜め後ろへ動いた。そして地面と接すると水牢は弾け、大和を泥の上へと投げ出す。
「けはっ、けほっ」
軽くせき込みながらも、体勢を整える大和。
「はぁ、はぁ、けはっ、……ぁぁ」
ソフィアを見据えて、
「……風弾は陽動だったのか」
「ええ」
「……、く」
立ち上がる一方、頭の中で揃いかけた歯車を口に出して整理する。
「……弱くても数を揃え、相手の注意をそちらへ向かせる」
そう、風弾の威力は小さかった。
最初にくらったときは弾き飛ばされたというのに、右肩に被弾したときはどうだ。鎧に凹みひとつ、掠った後さえできていない。直撃しないよう往なしたから、それで済ませるにはお座なりな結論だ。
質よりも量と早さを重視していたと、よく考えれば分かる。
その理由は……、
「その裏で、時間をかけて本命の魔方陣をイメージしておく。最後、最も命中する確率が高いタイミングで一気に脳内で構築したイメージを出力して展開、発動」
気づかなかった、いや気づかせなかった。懐に入り込もうとする大和の行動に便乗して利用して、避けさせることに集中させた。別のことを考えさせる余裕を与えなかった。
「ブラフを掴まされた」
大和が正面突破を敢行したからこその結末と言える。ほとんど自爆のようなものだ。
そこまで思い至ったあと、静かに舌打ちをもらした。
「……魔力の調整。さながら場合にあった使い分け、ってところか」
「そこまで察してくれるのなら話は早いですね。そう、それが調整を行う意義、その最たるものです」
つまり魔術に役割をもたせることが出来る。迎撃、追撃、ブラフ、本命、といった具合にだ。なるほど、全力でばかすか魔術を発動するよりも戦略の応用が利く。敵味方入り混じった状態の複数人での戦いとなれば尚更だ。援護の魔術が味方諸共葬り去るような威力では、誰が背後を任せてくれようか。
「戦場も戦況も、選ぶことは出来ません。その場に合わせた動きができなければ、要らぬ犠牲を生むことに繋がります」
要らぬ犠牲。――ソフィアが放ったその言葉は、思うところがあるのか一段と語尾が鋭かった。
「今の貴方の戦い方は、たった一人の戦い方です」
「……」
ほんの少しだけ胸が痛くて、
「……っ」
歯を食いしばった。
誰にも、何にも、考慮していない戦い方。そう断じられたら返す言葉もない。
あるとしたらそれは――
「……」
ひとりでしか戦うことを許されない人間はどうなる。――感傷的な嘆きだ。
「ずっと、"頑張れ"なんて言われてきたんだ」
ぼそぼそと呟いた言葉は、すっかり癖になった弱音と自嘲の混合物。大和にしか聞こえていない。
「こんな世界に呼ばれて、それが"やれ"に代わっただけだ」
元の世界に還りたくば、あれを"やれ"、これを"やれ"。
この世界にひとり存在する大和に、自分の身を差し出す以外のどんな方法があるのか。今の大和には思い浮かばなかった。そして、考えれば考えるほど心身に食い込む杭のようで辛くもあった。
沈黙をかえした大和に、さらにソフィアは言う。
「もっともそれ以前に、自分の命すら背負う覚悟が貴方にあるとは思えませんが」
「……なんだって」
「蛮勇にみえた、ただそれだけのことです」
「俺はっ……」
蛮勇とソフィアは評した。しかしそれは、間違っている。大和の心に勇はない。あるのはただ、……。
「ああ、俺……」
そこでふと、気づく。……思い出す。
「俺は」
からっぽだ。
「……ソフィアさん」
気付きたくないことに気づいた。いや、思い出したくないことを思い出した。重々わかっていたはずだったのに、さも当たり前のように目の前に転がり落ちた“九柳大和を形づくる思い”にたじろいだ。
――己が過去が駆け廻る。
そのせいか大和はきゅうと胸が苦しくなり、胃の中がぐずぐずに渦巻いて吐き気を催し、最後に瞳の奥がかっと熱くなった。
「俺も、ひとつ言いたいことがあります」
「え?」
「……あんた、なにと戦ってるんだよ」
今度はソフィアが一瞬、口をつぐんでしまう。それは確かにほんの一瞬ではあったが、それでも鉄面皮内側のどこかに触れたことを思わせる反応だった。
「いったい何を言って」
「あんたさっきから言いたい放題言ってるけどさ。……いや」
ジークへの怨嗟とも、弱音を吐くときとも違う。
感情の渦が、制御できない。
「そりゃ俺はろくでもない人間だと思うよ、まったく。だからあんたの言ってることが胸を引っ掻いていくし、抉っていく。……でも、それは結局のところ、俺が勝手にあんたの言葉を自分に当て嵌めてるだけなんだ」
感情が駆け上がっていく。
「俺が独りで感じて独りで傷ついているだけ。……詰まる所は、あんたの言葉は誰にでも当て嵌まるんだよ。占い師の言う「貴方昨日、嫌なことがあったでしょう」みたいな。……ああ、好き勝手言ってくれちゃって」
まったく――
「腹が立つんだよ」
「なにが言いたいのですか」
「ムカつくって言ってるんだよ、ソフィア・ローレル」
だらん、と全身を弛緩させた様相から一転、駆けだす。
それは一瞬ソフィアの意識から外れるほど早く、
「っく」
思わず気圧された。
「しかし」
――甘い。
ソフィアの対処は早かった。
無策に懐へ飛び込むか。ならば止めることは容易だ。
ソフィアが手をひと振りすれば、魔方陣が展開され魔術が発動する。
ソフィア前面、扇状の範囲内の土がいくつも捲り上がり段をつくった。かと思えば、捲り上がった土が形を円錐に変え、向かいくる大和に牙をむく。
「……」
直前の経験から、強引な正面突破は避けるだろう。ゴドウィンとの鍛錬でも、同じ戦法を避けていた。
ソフィアはそう読み、左右どちらから回り込まれても対処できるように魔方陣を2つ展開した。……直後、
「なっ! とん」
大和は一番手近な土の円錐の先端に足をかけ、跳躍した。
ソフィア前方上空で、大和が身をひるがえす。そこからは火球が飛んでくる。
「っ!」
読み外し。が、問題ない。
上空への回避は愚策です、とソフィアは目を細める。
用意していた魔方陣のうちの1つを発動、子どもの腕ほどの氷柱を飛ばすことで火球に対処する。そして、すかさずもう1つの魔方陣も発動する。火球と氷柱によって影になっているところから、つまり大和にとっての死角から2本目の氷柱は襲いくる。
氷柱を目視した大和は、
「っ!」
「は、ぇ」
剣を放り投げて、その軌道を逸らした。
思うように身動きのとれない空中で、武器を手放すという暴挙。思わず目を剥いたソフィアだが、落下に身を任せて突っ込む大和にすぐに対処を試みる。
しかし、驚きに硬直したほんの一瞬が、大和に反撃の一手の隙を与えた。
「くッ!」
魔方陣を展開、そこまでだった。発動の直前で大和が勢いそのままソフィアへ飛び掛かり、そのまま地面へ転げ落ちる。受け身を強引にソフィアがとったため、転倒そのまま縺れるように転げまわった。
「はぁ、っ、はぁ、はぁ」
「は、はぁ、……くそっ」
ここまでだ。運は大和に味方しなかった。
組み伏し、上をとったのはソフィアだった。マウントポジションから大和を見下ろし、そして、
「はぁっ、はぁ、……バカですか貴方は! 戦いで武器を投げ捨てるなんてッ!」
「はぁ、はぁ、ん、……だから、……だから、なんだってんだよ」
「なんだって、殺し合いの最中に武器を失うことがどれほど生きる確率を下げるか――」
「それでも、ああすることで魔術は避けられた。……少なくとも、1回死ぬリスクは回避したわけだろう」
「っ、結果として貴方は! また、自分を軽視したでしょう」
「それがあの時の最善なら、それで良いだろうがよッ」
普段の彼女からは想像もつかないほど、その瞬間、ソフィアは苦しげに眉をひそめて唇をわななかせた。そして、
「ッ、――」
乾いた音が響く。
じん、とひり付く痛みを大和の赤くなった頬が訴えた。
「そういう浅慮で捨てっぱちな行動が、要らぬ犠牲を生むことにつながると言っているんですッ!!」
「俺は――」
「黙りなさいッ、……失敗した者の悔恨も、残された者の痛みもっ、悲痛と屈辱と後悔も知らないくせにッ! 好き勝手に命を投げ捨てるような、そんな向こう見ずさが一体、どれだけの痛みを、辛みを、恨みをもって色んな人に牙を突き立てるのか知らないくせにッ!! ――自分が、誰かのお陰で生かされていることを自覚できないんですかっ、貴方はッ!!」」
「なんだよ、……それ」
業と、過去の炎が両者の瞳にともる。
「知ってんだよ、そんなことくらい!」
ぐい、と押しのけ上下を逆転させる。
「知ってるさ、忘れたこともないッ、片時も! でもそれがどうしたってんだよ。俺は自分のことで精いっぱいなんだ、お前とは違うんだよッ!」
大和はソフィアの心の陰を、かすかに見抜いた。――きっと、大切な人を亡くした経験があるんだろう。自分を許すことができないのだろう。
それは、九柳大和という人間が根底に持つそれと似通っていた。だからこそ余計に、
「ムカつくんだよ、ソフィア!」
護られたから、生かされてきたから。
――だから、甘さを捨て、努力に身をささげ、強くならなくては。――特別にならなくては。自分を生かすための犠牲が、ただの犠牲や無駄な犠牲にならないように。……そんな心根がソフィアの言葉から、霞がかっていたが確かに見えた。
そんな特別を望む姿勢が、周りへの特別性の押し付けが、大和とは正反対で。だからこそ、受け入れられなかった。
氷の美女――事実それは、ソフィア自身が望んだ姿なのだろう。
人とは隔絶した強さ。羨望、驕り、嫉妬、嘲笑、僻み、圧力。全て跳ねのけ自身を研ぎ澄ませていくことだけを貫く強さ。孤高ともとれる姿は、それ自体を特別といわずしてなんなのか。そして、その歯牙にもかけない凛とした特別性が他人をどれだけ傷つけてきたか。
「あんた俺に言ったよな、『自分の踏み入られたくない部分を他人に押し付けるな』って。……あんただってそうなんだ。自分が正しいような心で、他とは違うんですってすまし顔で、貴方に何が分かるって態度で生きてんじゃねえか!」
「このッ、好き勝手なことを!」
「ああ、俺はあんたのことを何も知らねぇよ。けど、それがなんだよ、だからどうしたってんだよッ。何度でも言ってやるよ。俺はアンタを何も知らない、でも、んなことお互い様だ!! 俺のことをなにも知らないくせに、アンタに俺の何が分かるッ!」
◆◆◆◆◆
「おお、始まった始まった」
ゴドウィンは無精髭をひと撫でして、
「まあ、あんだけ好き勝手言ってたら、いつか爆弾をつついちまうのは当たり前だ」
ソフィアをわらった。
ともあれ、ゴドウィンはそれをねらっていた節はある。結果として2人とも誘爆よろしく噴出したのはいささか程度が過ぎたとも思わなくはないが。
す、とこの国の王になる青年へ視線をむけた。
能面の下の、年相応の怒り顔。いいじゃないか、それで。まだまだ若いんだ。餓鬼の癇癪なら窘めてやるし、駄々なら叱ってやる。言葉にならない声で泣くのなら、無理やりにでも手を引っ張ってどうにかしてやる。
尻をぬぐわれる心配してるんじゃねぇよ。他人だからって遠慮すんな、子どもが。
「頭でっかちだな、まったく。どうしようもねぇ」
呵々とゴドウィンは短く笑った。
ソフィアも、そして推察だが王子も。抱え込んだものが石のように凝り固まって心を重くしている。でもいいじゃなか、年相応に自分の感情を吐露したって。
「さ、まずは鬱憤ばらしといこうじゃねぇか」
気が付けば現時点で93件ものお気に入り登録。嬉しいような、恐ろしいような。
書く時間がとれてはきたが、ふむ、どうしたものか。……などとのたまいつつノクターンへの進出を画策したりする今日この頃。砂糖を吐くような、あまくてエロい話が書きたい。