表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/12

## 第2話「名も知らぬ力と、崩れ始める秩序」





# 『この世界で魔法を使えるのは俺だけだったが、守りたいのはたった一人の笑顔だった』


## 第2話「名も知らぬ力と、崩れ始める秩序」


 森は静かだった。


 さっきまで人がいたとは思えないほど、何もない。


 ただ――焼け焦げたように“消えた空間”だけが残っている。


「……これ、俺がやったのか」


 暁 恒一は、右手を見つめた。


 まだ震えている。


 怖い。


 でも、現実はそれ以上に残酷だった。


---


 背後で、か細い呼吸音がする。


「……っ、はぁ……」


 少女だった。


 まだそこにいる。


 生きている。


(よかった……)


 その安心が、少しだけ心を緩める。


---


 ゆっくり振り返る。


「立てるか?」


 少女はすぐに答えない。


 ただ、こちらを見上げている。


 怯えと、混乱と、それでも消えない“何か”。


---


「……あなた」


 かすれた声。


「さっきの……何……?」


「さっきの?」


 言葉に詰まる。


(俺が知りたいんだけど)


---


「魔法……なの?」


 その単語で、胃の奥が重くなる。


「いや、知らねぇよそんなの」


 本音だった。


「俺も今初めて見たわ」


---


 少女の目が揺れる。


「そんなわけ……」


 信じられない、という顔。


 でも同時に――


 “この人しかいない”という顔でもあった。


---


 そのとき。


 森の奥から音がした。


 金属が擦れる音。


 複数の気配。


「……来たか」


 恒一は顔をしかめる。


---


「追手……?」


 少女が小さく呟く。


「たぶん」


 短く答える。


(早すぎだろ)


---


 森の奥から、黒い影が現れた。


 さっきの鎧とは違う。


 統一された装備。


 冷たい雰囲気。


「異常反応を確認」


「対象は“未登録魔力反応”」


「排除する」


---


「……は?」


 恒一は思わず声を漏らす。


「排除って何だよ」


---


 隊列が整う。


 明確な敵意。


 迷いがない。


 最初から“人として見ていない”。


---


 少女が震える。


「……王国の、処刑部隊……」


「処刑?」


 嫌な響きだった。


---


 隊長らしき男が一歩前に出る。


「対象確認。聖女と、異常存在」


「両方、抹消」


---


 その言葉で、空気が変わった。


 “戦い”じゃない。


 “処理”だ。


---


(こいつら、最初から殺すつもりか)


 胃の奥が冷たくなる。


---


「おい」


 思わず声が出る。


「話くらいできねぇのか?」


 返答はない。


---


 男が手を上げる。


「実行」


---


 次の瞬間。


 地面が光った。


 魔法陣。


 圧縮された魔力。


「……っ!!」


 恒一は咄嗟に少女を抱えて飛び退く。


 直後、地面が爆ぜる。


---


「うわっ……!!」


 衝撃。


 熱。


 森の一部が吹き飛ぶ。


---


「マジかよ……!」


 初めて“戦い”として理解する。


(これ、遊びじゃねぇ)


---


 少女が腕の中で震えている。


「……離して……いいから……」


「は?」


「私のせいで……あなたまで……」


---


「またそれかよ」


 思わず言葉が出る。


---


 少女が驚く。


---


「さっきも言っただろ」


 恒一は立ち上がる。


 敵を見たまま言う。


「逆だって」


---


 右手を上げる。


 さっきの“感覚”が戻る。


 世界が静かになる。


---


「俺はさ」


 小さく息を吐く。


「そういうの見て、無視できるほど器用じゃねぇんだよ」


---


 空間が歪む。


 敵の魔法が“書き換えられる感覚”。


---


 次の瞬間。


 敵の魔法陣が、消えた。


「……は?」


 隊長の声が止まる。


---


「発動不能……?」


「何が起きた……?」


---


 恒一自身も驚いていた。


(今、消した……?)


---


 でも止まれない。


 敵はまだいる。


---


「もう一回だ」


 右手を振る。


---


 森の一部が静かに“消失”。


 敵の一列が視界から消える。


---


 沈黙。


---


 残った隊員が後退する。


「撤退!!」


「情報が違う!!」


---


 あっという間に、森が静かになる。


---


 残されたのは、二人だけだった。


---


 少女が呟く。


「……あなた、本当に何……?」


---


 恒一は少しだけ困った顔をする。


「だから言ってんだろ」


「ただの通りすがりだって」


---


 少女は小さく笑った。


 泣きながら。


「そんな人、いないよ……」


---


 その言葉で、風が少しだけ変わった。


---


## ■第2話・終わり


---


## 次回予告


“異常な魔法使い”として認識された男。

世界は静かに、彼を排除対象として動き始める。


そして少女はまだ知らない。

彼が背負ったものの重さを。


---




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ