## 第2話「名も知らぬ力と、崩れ始める秩序」
# 『この世界で魔法を使えるのは俺だけだったが、守りたいのはたった一人の笑顔だった』
## 第2話「名も知らぬ力と、崩れ始める秩序」
森は静かだった。
さっきまで人がいたとは思えないほど、何もない。
ただ――焼け焦げたように“消えた空間”だけが残っている。
「……これ、俺がやったのか」
暁 恒一は、右手を見つめた。
まだ震えている。
怖い。
でも、現実はそれ以上に残酷だった。
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背後で、か細い呼吸音がする。
「……っ、はぁ……」
少女だった。
まだそこにいる。
生きている。
(よかった……)
その安心が、少しだけ心を緩める。
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ゆっくり振り返る。
「立てるか?」
少女はすぐに答えない。
ただ、こちらを見上げている。
怯えと、混乱と、それでも消えない“何か”。
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「……あなた」
かすれた声。
「さっきの……何……?」
「さっきの?」
言葉に詰まる。
(俺が知りたいんだけど)
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「魔法……なの?」
その単語で、胃の奥が重くなる。
「いや、知らねぇよそんなの」
本音だった。
「俺も今初めて見たわ」
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少女の目が揺れる。
「そんなわけ……」
信じられない、という顔。
でも同時に――
“この人しかいない”という顔でもあった。
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そのとき。
森の奥から音がした。
金属が擦れる音。
複数の気配。
「……来たか」
恒一は顔をしかめる。
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「追手……?」
少女が小さく呟く。
「たぶん」
短く答える。
(早すぎだろ)
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森の奥から、黒い影が現れた。
さっきの鎧とは違う。
統一された装備。
冷たい雰囲気。
「異常反応を確認」
「対象は“未登録魔力反応”」
「排除する」
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「……は?」
恒一は思わず声を漏らす。
「排除って何だよ」
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隊列が整う。
明確な敵意。
迷いがない。
最初から“人として見ていない”。
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少女が震える。
「……王国の、処刑部隊……」
「処刑?」
嫌な響きだった。
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隊長らしき男が一歩前に出る。
「対象確認。聖女と、異常存在」
「両方、抹消」
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その言葉で、空気が変わった。
“戦い”じゃない。
“処理”だ。
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(こいつら、最初から殺すつもりか)
胃の奥が冷たくなる。
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「おい」
思わず声が出る。
「話くらいできねぇのか?」
返答はない。
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男が手を上げる。
「実行」
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次の瞬間。
地面が光った。
魔法陣。
圧縮された魔力。
「……っ!!」
恒一は咄嗟に少女を抱えて飛び退く。
直後、地面が爆ぜる。
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「うわっ……!!」
衝撃。
熱。
森の一部が吹き飛ぶ。
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「マジかよ……!」
初めて“戦い”として理解する。
(これ、遊びじゃねぇ)
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少女が腕の中で震えている。
「……離して……いいから……」
「は?」
「私のせいで……あなたまで……」
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「またそれかよ」
思わず言葉が出る。
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少女が驚く。
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「さっきも言っただろ」
恒一は立ち上がる。
敵を見たまま言う。
「逆だって」
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右手を上げる。
さっきの“感覚”が戻る。
世界が静かになる。
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「俺はさ」
小さく息を吐く。
「そういうの見て、無視できるほど器用じゃねぇんだよ」
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空間が歪む。
敵の魔法が“書き換えられる感覚”。
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次の瞬間。
敵の魔法陣が、消えた。
「……は?」
隊長の声が止まる。
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「発動不能……?」
「何が起きた……?」
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恒一自身も驚いていた。
(今、消した……?)
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でも止まれない。
敵はまだいる。
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「もう一回だ」
右手を振る。
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森の一部が静かに“消失”。
敵の一列が視界から消える。
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沈黙。
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残った隊員が後退する。
「撤退!!」
「情報が違う!!」
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あっという間に、森が静かになる。
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残されたのは、二人だけだった。
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少女が呟く。
「……あなた、本当に何……?」
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恒一は少しだけ困った顔をする。
「だから言ってんだろ」
「ただの通りすがりだって」
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少女は小さく笑った。
泣きながら。
「そんな人、いないよ……」
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その言葉で、風が少しだけ変わった。
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## ■第2話・終わり
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## 次回予告
“異常な魔法使い”として認識された男。
世界は静かに、彼を排除対象として動き始める。
そして少女はまだ知らない。
彼が背負ったものの重さを。
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