表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結婚したのに6年間無視され続けた私、本当の理由  作者: 唯崎りいち
第二章 光差す聖堂・仮面の夜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/53

恋人潜入!仮面の陰謀

 クレアの命を狙った者の手がかりがこの街の教会にある——。


 領主の館は、落とし格子の扉で守られて人を寄せ付けない雰囲気があった。


 辺境の城砦も、同じ扉が物々しく“隠匿された皇子”であるアイゼルを守って居た。


 この領主の館は一体何を守っているのか——。


「今回は表向きは観光ですが、辺境から密輸された交易品のルートの調査協力をお願いて反応をみます」

 ギリアムが作戦の確認をする。


「十中八九、フェルゼンの領主が関わっているだろう」

 僕は答える。


 交易品とは辺境の内海で取れる新鮮な魚だ。


 塩漬けのターラなどは庶民の味として帝国全土で親しまれて居るが、新鮮な魚は内陸までは届かない。

 貴族の富の象徴として高値で取引され、横流しすれば他の貴族との関係を築ける。


「新鮮な魚を運ぶ為には魔石か魔法で凍らせる必要があります。たぶん魔法で凍らせたのだろうと、魔法の主体である教会が怪しいと言えば、自分たちの罪をなすりつける為に協力してくれますよ」


 僕たちが本当に調査したいのは教会の方だ。

 魚の件は見逃してもいい程度の問題だから放置して居たが、役に立った。


「ふふ」

 ギリアムが笑う。

「何がおかしいんだ」

 僕は不審に思う


「いえ、アイゼル様が冷酷ではなく、妻に甘過ぎる夫と言う噂が流れているのはちょうど良かったかもしれないね。教会を疑っている間抜けさの演出になります」


 皮肉ではなく心からそう思っているようだ。


 僕は少しだけムッとしたが、それでクレアが守れるなら問題はない。

 クレアの甘い夫になれた事が実際の所、嬉しいのだ——。


 ——犯人を見つけて、この幸福を壊させない!


◆◇◆


 私、マーシャルはルークと城塞都市フェルゼンの下町の宿屋にいた。


 ルークを操っていた教会関係者を探るためにアイゼル様とクレア様に協力しているが、彼らと一緒に行動したら困った事になる。


 ルークがクレア様の暗殺に失敗した事は、操っていた人には分かっている。

 アイゼル様とクレアさまがこの街に来たのは、暗殺を企てた自分を探す為だと警戒するだろう。


 そこに操られて実行犯になっていたルークが一緒に居たらますます警戒される。


 だから、クレア様たちより数日早く街に着き、月一の仮面舞踏会を観光しに来た恋人を装っている。


 以前、ターニア様を連れてフェルゼンを訪れた時は、ルークと夫婦に間違われるのは都合が良かったけど、今回はちょっと事情が違いすぎる。


「どうかしたの? マーシャル」

 同じ部屋に居たルークが優しく声を掛けてくれる。


 ルークが優しくなかった事なんて無いけど、本当の恋人になってしまった後のルークは二人っきりだと甘すぎる!


「な、なんでもないわ!」

 私は胸の高鳴りを誤魔化すように言った。


「ふーん……」

 そう言うとルークが近づいて来る。


 なんとなく私は後ろに下がる。

 でも近づいてきたルークに壁際に追い詰められる。


「キスしたくなった?」

 ルークが言う。


「う、ルークって……」

 恋人になってからの方がイジワルだ。


 でも、私がコクっと頷くと、ルークは優しくキスしてくれた。



 コンコン

「マーシャル、ルーク」


 宿屋の部屋の扉の外から小さな声が出て聞こえた。


 私は慌てて扉を開ける。

 顔が赤くなってないといいけれど。


 入って来たのはアイゼル様の側近の騎士のコリン様だった。


 騎士だと思えない服に仮面を付けている。


「もしかして、邪魔だった?」

 冗談めかして言うコリン様だけど、私の顔がますます赤くなる。


「今日、アイゼル様とクレア様は『黄金の獅子亭』に到着したよ。これから調査を開始するけど、君たちの方はどうだった?」


 ルークとの甘いやり取りから一転する。

 調査という言葉にゾクっと身が引き締まった。


 コリン様の質問にルークが答える。


「俺は以前寄った教会に通っていますが、怪しい感じは全くありません。ただ、俺は魔力を感じられないから、そっちの異変は分かりませんが」


 ルークはこの世界には珍しい魔力を全く持たない体質なのだ。

 魔石を使った魔道具が発達した今は、普段の生活で問題になる事はないけれど。


「私の方も、ルークがホムンクルスの魔力を帯びていた時の魔力の形と同じ物がないか探しているけど、見つかってません」


 魔力の形が正確に分かるのは私のオートマタ技師としての能力の一つだ。

 けれど、ルークがホムンクルスの治療を受けたのはここではないから、同じ形が見つけられる可能性は低いだろう。


 操った人物の魔力が分かればいいんだけど、ルークが操られてる間は私と会って居ないし、会えた時にはルークを包んでいた魔力は無くなっていた。


「そうか。まあ、簡単に見つかるとは思ってなかったけどね」

 コリン様が言う。


「まずはルークが立ち寄った教会を確認したいから案内してくれるかい?」


「もちろんです」

 そう言ってルークが仮面を被る。


「え!?」

 コリン様が驚きの声を上げる。


 無理もない。

 ルークの下面は頭と顔をすっぽり覆う物なのだ。


 仮面舞踏会の街でも割と珍しい。


 なぜ、こんな仮面をつけて居るかと言うと、ルークが目立ち過ぎるからだ。


 私とルークはこの街を初めて訪れた恋人たちって設定なのに、以前訪れた時の赤ちゃんを連れた夫婦だと覚えて居る人が居たのだ。


 それもこれもルークがとんでもなく目立つ美青年だからだ。


 急いで仮面を買いに入った店で、

「これくらいしないとダメね」

 と、やり過ぎなくらい顔を覆う仮面を渡された。


 ——その仮面を付けたルークを見た時に、何処かで見た事があると思った——。



「アイゼル様もだけど、隠密行動に向いてないよね」

 と、コリンが言うと、ルークは、

「すみません」

 と、謝っていた。


 私も顔を半分覆う仮面を付けて3人で外に出る。


 街を上げての仮面舞踏会は月に一度だけど、街のそこかしこで小さなイベントが行われて居る。

 仮面を付けた人はいつもたくさん居て、私たちが怪しまれる事は無かった。


 ……たぶん、一番私たちを怪しんで居るのはアイゼル様ね。


 私は思った。


 アイゼル様はアリシアのお母様を疑っている。

 アリシアはクレア様の異母妹で、アリシアのお母様はクレア様の継母になる。


 私はアリシアと友達で、お母様がお姉様に冷たいとアリシアから聞いて居た。


 だから、アリシアを介して継母と繋がりがある私はアイゼル様に何処となく疑われている。

 私と一緒のルークもその影響を受けて警戒されている。


 でも、アイゼル様も一応は私もルークも信用してくれているみたい。

 クレア様が私たちを信じてくれてるおかげね。


 アイゼル様は本当にクレア様を愛していて羨ましくなる。


 こんなに愛されて居るクレア様も、最初に会った時はアイゼル様に冷たくされていたと言う。


 アリシアのお母様と言い、何故クレア様に冷たくするのかしら?


 初めてお会いしたクレア様はアリシアに聞いていた以上に儚げで美しくて驚いた。


 二人の冷たい態度が、クレア様の壊れそうでいて清廉な美しさを作っていたなら皮肉だ。


 今のアイゼル様に心から愛されて居るクレア様も可愛らしくて美しいけれど——。


 クレア様の笑顔を思い出すと心臓が締め付けられる。


 ——この美しい人を壊そうとした者がいる。

 私の大事なルークを使って——。


 ルークだって、立ち直るのは簡単じゃなかった。


 表層だけで、二人ともまだ心の傷を残してる。


 二人を傷つけた犯人は、絶対に捕まえないと!


 ルークとコリン様に続いて、私は確かな手掛かりを得る為に足を踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ