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結婚したのに6年間無視され続けた私、本当の理由  作者: 唯崎りいち
第二章 光差す聖堂・仮面の夜
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運命の歯車が狂わないように【マーシャル編】

 帝都に着いた。

 隣の都市から帝都へ定期的に走っている馬車は帝都の端の駅で止まる。


 遠くからでも分かる帝都の大きさには馬車の中からも圧倒されていたけど、街の端っこでも途切れる事のない人の多さには言葉もでない。


 私、マーシャルは5歳まで住んでいた帝都に12年ぶりに戻って来ていた。


 人々が私に気付かずに通り過ぎる様子に、安堵と寂しさを感じる。


 皇帝暗殺犯のジョージ・カーロックの孫娘として帝都を追われた日が懐かしい。

 誰しもが私に敵意を向けていた日々が、嘘のように今は誰も私を見ていない。


 なんだったんだろうなー、あの悲しい日々は。


 近所の子たちにいじめられて、一緒に遊びたくても遊べなかった。

 だから、私はオートマタにのめり込んで行ったのかもしれない……。


 まあ、それはないか。


 私がオートマタを手放せば、お祖父ちゃんの孫だって事は隠せて平穏に暮らせたのに、幼い私は自分の小さなオートマタを絶対に手放そうとしなかった。

 だから、お母さんが怒るのも当然で、背中の傷も当然に受ける運命だったモノだ。


 お母さんの虐待を見かねた、お祖父ちゃんに連れられて、私は各地を転々としてオートマタの技術を磨いていた。


 お祖父ちゃんが亡くなった時は後継者と言われるようになって、秘密裏にまだオートマタを使っていた有力貴族の元で更に技術を磨いた。


 おかげで今は皇帝からも声が掛かる技術者になって、帝都に戻ってきた。


 オートマタが迫害されるようになったのは、皇帝がキッカケだったのに——!


 って皇帝を恨むのは違うな。


 前皇帝自体は暗殺未遂の被害者で、オートマタを支援している側だった。

 暴走したオートマタが、大衆の支持を失っただけ。

 オートマタがこんな暴走をするなんって、支援していた皇帝にとっても誤算だったんだ。

 

 だからオートマタは自滅。

 オートマタの新技術を開発していたお祖父ちゃんが悪いの——


 って、んなわけあるかーー!!


 誰かが細工してオートマタを暴走させた事は分かってるのよ!

 その細工した奴が悪いに決まってる!


 お祖父ちゃんの周りには色々と教えてくれる人がいて、私も何となく敵の事は分かってる。

 証拠がないだけ……だと思う。


 お祖父ちゃんは、みんなの話を聞いて、頷くだけだった。

 お祖父ちゃんが開発した新技術はお祖父ちゃんしか知らない。

 調べようと思ったらお祖父ちゃんが積極的に調べないと分からない事だらけなのに、何もしてないように見えた。


 もしかしたら、お祖父ちゃんは犯人を知っていて庇っていたのかも——。


 なんとなく、そう思っただけだけど……。


◆◇◆


 帝都の中心の宮廷に向かう前に、私は帝都の中心から外れた場所に寄り道をした。


 馬車の駅から北に移動した場所にある。

 寂れて誰も寄り付かない場所。


 【オートマタの墓場】と言われている場所。


 皇帝暗殺未遂事件で人気の無くなったオートマタがガラクタのように捨てられている。

 元々が廃墟だったらしいこの場所は、あっという間にこうなっていった。

 幼い私は、たまにお祖父ちゃんに連れられて、オートマタが積み上げられていく歳月を見ていた。


 私のお世話をしてくれる小さなオートマタは、毎日決まった事を話し決まった動きをしているけど、私が悲しんでいたら、じっと側を動かない。

 私の変化に気づいて優しく見守ってくれた。

 

 オートマタにもちゃんと心があるのに、こんな風に捨てられているのが悲しい——。


 ただ、祈りを捧げたくて私はこの場所に来た。


 私はオートマタの技師として、オートマタが溢れる世界を見たいと思う。

 けれど、こんな風に捨ててしまえる人たちに、ただ便利だからと、オートマタを利用して欲しくもなかった——。


「こんな所に女の子が1人で居ては危ないわよ」


 後ろから声がかかる。


 振り返ると、高貴な身分らしい女性が共の男性を連れて立って居た。


「最近は少ないけれど、ここにはオートマタの部品を漁る泥棒がいるのよ」


 聞いたことがある。


 オートマタは使えなくても、中の部品や魔石は他の道具に転用できるから、オートマタの中身はもうほとんど空なのだと言う。


「なーんて、私も人の事は言えないんだけどね」

「え!?」

 婦人がそう言ってオートマタの墓場に歩き出したので、私は驚いてしまう。


「ま、待って下さい!」

 こんな高貴で素敵なご婦人が墓泥棒!?


「大丈夫よ! 何度も来ているから」

 何度も!?


 微笑みながら話す婦人に目を丸くする。

 この人は一体——!


◆◇◆


「あ、ありました! ありましたよ、アリスさん」

 私は、婦人と一緒にオートマタの墓場を漁っていた。


「あら、でもその子、腕が壊れているわよ?」

 婦人ことアリスさんが言う。


「捨てられて壊れていますけど、中身はしっかりしています。腕だけ交換すればすぐに動きますよ!」

「あら、さすがオートマタの技師さんね。私とエドだけじゃ助けてあげられなかったわ」


 アリスさんが言うと、お供の男性が頷く。

 エドさんと言うのか。

 仮面をかぶっているから表情が読めずに怖そうだと思ったけど、アリスさんと同じく、優しい人らしい。


 聞くとアリスさんは帝都に来るたびにこうして使えそうなオートマタを集めて、自宅の屋敷で修理して、必要な人に届けているのだと言う。

 私のお世話になっていた貴族もそうだけど、オートマタを大事にしてくれる人はまだいる。


「だって、オートマタには心があるんだもの。このままにしておくのは可哀想」

 そんな言葉を聞いては放ってはおけない。


 宮廷には今日中に着けばいいんだ。

 私はギリギリまでアリスさんを手伝って、6体の壊れた部分のあるオートマタを探し出した。


 壊れた部分は、もう動かないオートマタにお礼を言って分けてもらう。


「こんなにたくさん! 私たちだけなら見逃していた子たちよ。きっと大事に修理して、大事にしてくれる人に届けるわね」

 そう優しく微笑んでアリスさんは私に感謝してくれる。


 私の方こそ感謝したい気持ちになる。

 こんなにオートマタを想ってくれる人に出会えるなんて!


 6体ものオートマタを運ぶのは大変だと思ったけど、いつも運ぶのを頼んでいる人が来てくれるらしい。


 さすがに宮廷に行かなければいけない時間だ。

 私はそのまま、次も協力する事をアリスさんたちに伝えて宮廷に走った。


 帝都の空は夕日に染まっていた。


 ——マーシャルの去った、オートマタの墓場で風に運ばれて声が聞こえた。


「どうするんだ、こんなにたくさん」

「もちろん修理するわ。物語が進めば必要になるんだから」

「……物語が進めば、な……」


 風はマーシャルの背中を押して、声よりも早く進ませる。


◆◇◆


 私が宮廷に着くと、ちょうど昼間の門番たちの交代の時間らしかった。

 多くの兵士が宿舎らしい場所に吸い込まれて行くところだった。


 流石に遅くなってしまった——。


 けれど、夜間の門番に、ここで働くために来たオートマタ技師だと伝えて、宮廷での責任者に話す。

 馬車の遅れはよくある事らしく、日付が変わる前について良かったと逆に喜ばれた。


 詳しい事は明日に話すと、今日は夕食と部屋に案内されただけだった。


 部屋に落ち着くと、どっと疲れた。

 明日の為に何もせずに寝ることにする。


 明日に会うオートマタを必要としている皇帝の弟がどんな人なのか考える。

 何故か昔、お祖父ちゃんに連れられて行った辺境で出会った初恋の王子様の夢を見た。


 輝くような金髪と碧眼の素敵な少年で、小さな私のプロポーズに優しく笑ってくれた。


 ——アイゼル様、また会えるかしら——

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