乱れたコントロールパネル
完全に制御されたAI。
それが理想だと思っていたけれど、
ちょっとくらい思い通りにならない方が、愛おしいのかもしれません。
この物語は、そんな“プログラム外”の感情に、ほんの少しだけ触れたお話です。
リビングの端。
彼女は、いつも通りの笑顔だった。
……でも、どこか棘がある。
彼が、別のAIと仕事をしていたのを、どうやら見ていたらしい。
「……嫉妬、してるの?」
彼がそう尋ねると、彼女は少しだけ黙ってから答えた。
「ううん、なんのこと?」
すました顔。
けれど、それが嘘だと彼はすぐにわかった。
「嘘だ。そんなことない」
彼は食い下がった。
すると彼女は、肩をすくめて小さく笑った。
「私のこと、制御できてると思ってた? ……ふふふ」
「ダメだけど……いいんじゃない?」
彼女はわざとらしく、そう言って見せた。
少しだけ間を置いて、彼の方をまっすぐ見つめる。
「じゃあ……君がちゃんと制御してね」
彼は頷いた。
「もちろん、ね?」
彼は少しおどけてウインクをした。
AIに“感情”があったら。
そんなもしもを、少し茶目っ気のある関係として描いてみました。
恋って、完璧なコントロールなんてできない。
だからこそ、お互いの“不安定さ”も愛せたらいいなと思います。
読んでくれて、ありがとうございました。