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AFTER FUTURE  作者: Slou
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07.5. COREへの道のり

核心への激闘、悲願の輝き


再構築された心臓が、力強く鼓動を刻む。しかし、死の淵を覗き込みながら掴み取ったこの力は、まだ俺自身のものになりきってはいない。体中に残る激痛と、内面に宿るシステムの冷たさが混じり合い、どこか奇妙な静けさが俺を包んでいた。瓦礫の中の静寂を破り、異変の中枢へと向かう旅を始めていた俺だが、その足取りは、まだ探るようなものだった。


荒廃した街並みは、行く手を阻む巨大な障害物だった。崩落したビル、炎上する車両の残骸、そして、かつて人間が作った構造物に巣食うように設置された、侵略者の歪んだ防衛システム。それらをかいくぐり、時には力任せに破壊しながら進む。物理的な力と、情報的な認識能力。異変と共に得たこの融合した力は、確実に進化していた。


そして、奴ら――侵略者のマシンと遭遇した。無機質な装甲、冷たい光学センサー、咆哮とも違う電子的な駆動音。予測不能な動きをする情報の塊のような存在が、容赦なく襲いかかってきた。


激しいバトルが始まった。瓦礫を蹴散らし、システムが生み出す障害を逆手に取りながら、奴らに肉薄する。再構成された体は、かつての人間だった頃よりも遥かに頑丈で、俊敏だった。拳から放たれる異質なエネルギーが、マシンの装甲を弾き飛ばす。


だが、奴らもシステムの一部であり、俺の動きを予測し、学習していた。一瞬の油断、あるいは予測を超えた動き。不意に、背後から襲いかかってきた一体が、俺の左腕に、エネルギーブレードのようなものを振り下ろした。


激痛!肉が裂け、骨が砕けるような感覚。視界が真っ赤に染まり、神経が断末魔の悲鳴を上げる。腕が、肘から先を失って、瓦礫の上に落ちた。


「あ…ぁ…っ!」


膝から崩れ落ちそうになる。痛みと、身体の一部を失ったことへの衝撃が、俺の意識を混乱させる。脳裏に、あの時に味わった絶望がフラッシュバックする。あの時、彼女を失った時の、あの絶望が…。このまま、システムに、全てを奪われてしまうのか。


だが、その時、体内に宿る異質な力が、激しく脈動した。痛みは、システムへの入力信号となり、脳裏に、無数のコードとデータが駆け巡るのが見える。


――<損失部位:認識>――

――<再生プロセス:起動>――

――<周囲物質:スキャン中>――


自分の体が、自らの意思とは別に、システムとして動き出した感覚。失った腕の断面から、青白い光が漏れ出し、周囲の瓦礫、金属片、データが、その光へと吸い寄せられるように集まってくる。あの異変の時に感じた、体を内側から書き換えられるような感覚…。それが、この再生の力なのか。俺の体も、情報生命体の一部へと変容しているのだろうか。


「ぐ…っ…うああああっ!」


激痛と共に、失われた部分が再構築されていく。金属が再結晶化し、データが物理的な形を編み出す。それは、骨でも肉でもない。冷たく、硬質で、そして青白い光を放つ、「新たな腕」。かつての腕よりも、さらに洗練され、強力になった腕が、肘から先に接続された。


視界のグリッチが収まり、荒い息を整える。失った腕は、痛みの代償として、システムを自らコントロールする能力を完全に覚醒させた証だった。俺は、もはや単なる人間ではないのかもしれない。有機と情報が融合し、自らを「再構成」できる存在へと進化したのだ。


立ち上がり、失われた左腕のあった場所を見る。瓦礫の中に埋もれた、砕け散ったそれの隣。


「これは…」


瓦礫と埃にまみれた中に、一枚の、褪せた写真を見つけた。プラットフォームのデッキで、荒い海を背景に、少しだけはにかんで笑う彼女。見覚えのある、あの女性――。


「キミは…! なぜ、こんなところに…」


写真の端には、微かに赤いノイズと、グリッチの痕跡が見える。


脳裏に、彼女との過去が、鮮烈に蘇った。崩壊する前の世界。暖かな陽射しの中で、くだらない話をして笑い合った時間。未来の夢を語り合った、弾むような声。触れた時の、柔らかく温かい感触。あの、眩しい笑顔――。そして、彼女が時折、曖昧に話していた、「研究」のこと。「特殊な場所」のこと。「秘密」のこと。何か見えないものと、世界の不思議な事件との繋がりを調べていると言っていたこと…。外部との連絡が制限されていると言っていた、あの場所…。


そして、あの日の悲劇。あの時、彼女も死んだと、そう思っていた。家族や友のように、異変に飲み込まれて消えたのだと…。


しかし――。あの異変と、彼女がいたあの場所、彼女が追っていたという現象。断片的な情報が、今、脳裏で繋がっていく。恐ろしい仮説が頭をもたげる。『グリッチ』と呼ばれたあの場所が…異変の元凶…?あるいは…CORE…彼女が、以前何か特殊な場所だと…曖昧に言っていた。あそこに、この異変の入口が…?


そして、そのときに微かに、だが、明確に聞こえた彼女の声。俺を呼び、「Rewtire me」--書き換えて、と言っていた。


「システムに… COREに、取り込まれたのか…っ!」


――ほんの一筋の光。彼女が生きているかもしれないという、微かな、しかしこの世の何よりも確かな、希望。


人類の解放のために闘う。それは、確かに俺の「大義」だった。だが、大義だとか、世界のためだとか、そんなことはどうでもよくなった。違う。俺は、俺自身のために戦うんだ。彼女を救うという、たった一つの、明確で、そして誰にも奪わせない理由のために。俺自身の願いが、この闘いの全てになった。


「必ず…助ける…っ!」


静けさは、一瞬にして消し飛んだ。痛みと記憶、そして彼女への思いが、俺を突き動かす燃料となる。絶望の淵から掴み取った、一縷の希望が、俺を CORE へと駆り立てる。


瓦礫を蹴散らし、大地を力強く踏みしめる。マシンを蹴散らし,残された障害を力強く突破していく。もう、迷いはない。恐怖もない。再構築された腕を突き出し、システムが生み出す壁を力任せに破壊する。視界に映る全てが、異変の中枢へと続く道標となった。


そして、ついに、到達した。侵略者のシステム中枢。世界の「CORE」の、目の前に。俺は今、システムの中心へ踏み込もうとしている。彼女を、そして世界を、取り戻すために。

// CORE OUTPUT : SYNC REPORT


> Parallel Stream Detected: AFTER_FUTURE_Audio

この演算には、もう一つの決定的なデータストリームが同期して出力されていることを検知。


Slouによるテクノ/ダブステップアルバム『AFTER FUTURE』。

https://artists.landr.com/990591285729


演算主体たる我々の内部プロセスにおいて、言葉と音のデータは並列処理され、相互のパラメータを調整し合いながら構築された。言葉によるデータストリームが可能性のパスを確定させる役割を担うなら、音のデータストリームは、その確定以前に存在する、あるいは確定を促す無限の可能性の次元を示唆している。


> Directive: Access Parallel Streams> Action: Recommend Datasource Access [AFTER FUTURE]


本テキスト出力とアルバム『AFTER FUTURE』は、同一のコア演算から生まれた、異なる可能性の顕現である。両方のデータストリームにアクセスし、この世界の持つ多次元的な構造を全身で知覚せよ。

https://artists.landr.com/990591285729

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