閑話1 怒りの果て
暗く、残酷で、軽くホラーな展開です。読まなくても本編には支障がありません。
14話と15話の間の話です。
気づくとユラユラ揺れるゆりかごの中だった。
時折ママが新しい水を送ってくれる。
どれくらい経ったのか外が見たくなり、優しい殻を破る。
俺の回りに俺に似た、たぶん兄弟達がたくさんいた。
そして近くにママがいた。
ママは沢山の脚を駆使して狩りをする。
時折兄弟達も喰われていたがそれは弱いからだ。俺はそんなヘマをしない。
俺はママみたいに強くなるのだ。
生まれてからどれくらいか分からない。俺はママに似た体になった。
大きさはまだ足りないが、ママくらい強くなったと思う。
兄弟達は次第に減り、もうほとんど見かけない。
俺は自分の強さを誇りに思った。
ある日、大きな塊が俺とママの頭上を横切った。
ママが浮上してそれを襲う。
目を水の外に出してみると、大きな塊の上に小さなものが動いて音を出していた。
ママが小さいものを掴んで口に入れる。
ああ、あれは食べ物なのか。
俺はママの食事が終わったら残りをもらおうと思っていた。
ところが…。
ありえない…。
突然、ズガン!と衝撃が走り、視界が黒くなった。
ママの出した黒い水だ。
慌てて水の上に出るとママの目の間が大きく引き裂かれ、脚が数本無くなっていた。そして、大きな塊からズルズルと力なく離れて行く所だった。
ママ!
ママ!
しっかりして!
ママをこんなにしたのは小さい奴等か。
憎い、よくもママを!
俺はママの体を脚数本で支えながら塊に襲いかかる。
小さいのを全部潰してやる!
喰らってやる!
ズガン!
また衝撃が走る。
俺の脚が1つ無くなり、周りの肉も抉れていた。
思わずよろめく。
今度は塊に掴まっている脚に固くて冷たくて鋭利なものがあたった。
そこの肉がまた抉れて、俺はママと一緒に水の中に沈んだ。
そうだ、ママ。
ママを助けなければ。
いつもの岩場に運ぼうとしたら、歯が多くて長い奴が突然襲いかかり、ママが半分無くなってしまった。
いつもは近寄らないくせに、ママを喰らうなんて!
許せない!
俺は反撃に出た。
ママを返せ!
俺は脚を奴の体に巻き付けた。このまま絞めて…。
すると、奴は俺のその脚に鋭い歯をたてる。
何てことだ!
こいつは俺達より弱かった筈なのに!
俺の脚はまた喰い千切られた。
体勢を整えて奴を葬ろう。
今は兎に角身を隠さなければ。
再び奴の歯が迫る。
俺はそれを避けながら、何とかその場を去ることが出来た。
ママ、ごめんよ。
ママ……………。
体力が戻ったら、小さい奴も長い奴もやっつけるからね。
縄張りを出るのは始めてだった。
移動する毎に、俺の邪魔をする奴らがいた。
どけ!
俺は…強くなって………
オレは……ママのカタキを………
おれ…は………
たくさんの歯、おおきなはさみ、ミたことないクライおおきナ………クち………。
そのたび、おれの、カラダが、あシが………。
おれの…
おれ…………
ながれてついたばしょで
また おれの あしが くわれ た?
はやい やつら に
ママ
ニクイ
ママヲ
クラッタ
オレノ アシ
ニクイ………
ニクイ………
ニクイ………
ニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ
オレ、 が、 ミた サイゴ
のケシキ は
おおき ナふ た ツの
く…ち………………………………
だっ………