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疑惑の未亡人


時間は少し経過してお兄様は16歳 私は13歳になっていた


侯爵家は腐っても侯爵家だ

好きに生きても良いと言われても最低限果たすべき責任はある

侯爵家の当主しかできない決定に関わることは当主の持つ印章が必要であるため居場所は把握している

そのためお父様も時折私たちの前に姿を現していたのだがある時からそうして帰ってくることも無くなってしまった

そうするとどうしても未決裁の事案が生まれてきてしまう

このことに関してはお母様でもどうしようもない


「奥様、少々手荒な手段にはなりますが迎えを送りましょう。迎えまできてしまえば男爵家も拒否はできません。」

そう嘆いているのは執事の ロイ・ストイレン

先代の時代から長く仕えている優秀な執事長だ

お父様(ごみ)に変わって一緒に運営を任されている


「そうね。…仕方ありません。男爵家にすぐに迎えを手配してください。」

「かしこまりました。」

そうして手紙や従者を送りなんとか呼び戻したときに事件が起きた


「奥様!旦那様がお戻りになられましたが少々問題が…。」

滅多なことでは慌てない執事長が慌てた様子で執務室のお母様の元へ戻ってきた


「一体、何があったのですか?」

お母様は書類を整理していた手を止めた

お父様が帰宅する時は一応挨拶のためお兄様も私も執務室に来るようにしている

そんな私たちを見て気まずそうに顔を逸らした執事長は報告するか迷っていたが時間がなかったのだろう

意を決したように報告した


「旦那様がサマラ男爵夫人をお連れになりました。お二人を応接室にご案内いたしましたが旦那様が執務室にサマラ夫人を執務室にお連れになろうとしておりまして…。」

貴族の執務室は通常招かれた人物しかはいることなどできない。

その家の機密情報などもあるため書類を出したままにはできないし今回のように突然の訪問など御法度だ


「仕方ありませんね。ご挨拶にいきましょう。ギル、フィオ。あなた達もいらっしゃいな。」

「…全く一体どちらの先生に礼儀作法を学ばれたのか。とても素晴らしい先生であったようですね。」

「お兄様。私たちの先生方以外には皇室に仕える方々以外には存じ上げませんわ。もしそのような人材がいらっしゃったのであれば私も教えていただきたいですね。」


招かれざる客であったとしても一応当主のつれてきた客人だ

私たちも挨拶をしないわけにもいかない

非常に不本意ではあるが私たちは応接室に向かうことになった


ーー


「旦那様。失礼いたします。奥様方がいらっしゃいました。」

「ああ、入ってかまわないよ。」

部屋に入るとむせ返るような香水の匂いとなんとも言えない匂いが漂っている


「おひさしゅうございます。旦那様。」

「アイリーン。まずは座って話をしようじゃないか。紹介もしたいしね。ギルもフィオナも座りなさい。」

「まあ!嬉しいですわ。早く紹介してくださいませ。」

甘ったるい声は一体どこから出ているのだろうか

不快感が強いが顔に出さなかった自分をすごく褒めたい


「紹介しよう。サマラ男爵夫人だ。考え方が素敵でなあ。慈善事業にも積極的で投資にもお詳しい。本当に才色兼備とは夫人のことだろう。」

「まあ、そこまでお褒めいただけるなんて!嬉しいですわ。」

誰かこのお花畑達を焼き払ってくれないか

口を開けば不快になるようなことしかできない人間など初めてだ

お母様も顔には出さないが驚いていらっしゃるようで笑みが深くなっている


「ご紹介いただきありがとうございます。アイリーン・レイノルドでございます。そして右からギル・レイノルドとフィオナ・レイノルドですわ。」

わざわざ家名までつけて紹介するのは意図的に格の違いを認識させるためだろう

そして直接話す価値なしと判断したのか私たちにはお母様は発言を許さなかった


「アイリーン。今回のようなことは次回から控えるように。決裁が必要な急ぎのものは私が戻ってきたときにやればいいだろう。」

「そうですわね。お忙しいのですもの。でも今回のことでアイリーン様も学ばれたのではなくって?」

もう一度言う。ここで高域魔法をぶっ飛ばし…失礼。


「あと居場所を探るのもやめてくれないか。個人の活動は制限しないことがマナーだろう。そんなこともわからないとは思わなかったよ。」

「それは大変失礼いたしました。私のお友達が教えてくださったのです。それはそうと少し執務のことでお話ししたいことがございます。そうお時間はいただきませんので。」

さすがお母様。華麗にスルーだ。いいぞもっとやれ

隣のお兄様もとてもいい笑顔である。同じようなことを考えているのだろう


「そのことだが…今まではアイリーンに任せていたが少しサマラ夫人の意見も聞きたい。なんなら今までは任せてきたが…。」

「お待ちくださいませ。家門のことでもございます。まさかとは思いますが執務室になどど考えておりませんよね?」

「お母様、身内でないものが貴族の執務室に突然入る、または招待するなんて非常識なこと…庶民でも御法度であるこは小さい頃から聞かされるのですよ?そんな当たり前のことお父様がわからないはずありません。」

少々マナー違反ではあるが全ては言わせないよう私も援護射撃をして阻止する

一度口に出して仕舞えば取り消すことは難しい

指摘されて思い出したかのように渋い顔をして気まずそうにお父様は顔を逸らした


「ごほんっ。まあそうだな。それはそうとアイリーンに任せていたが外部の方に任せることも必要だろう。これからすぐに戻ってくることが叶わないかもしれない。そこで信頼のおける人物に任せてみるのはどうかと思ってな。」

こいつ言わせないようにと阻止したのにとんでもないことを言いはじめやがった。













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