似ている!? 8
学君がもどってきたのは、それから1時間ほどしてから。
「ただいま」
「あ、おかえりなさい」
「アイツ、ちゃんと駅まで届けてきたぞ」
「ご苦労様」
「なあ? なんで、今日は先に帰ったんだ? アイツが言ってたけど、結構危なかったみたいじゃん?」
「え? う、うん・・・・・・」
私、ちょっと躊躇した。でも、ちゃんと、今日あったことを話すことにした。
佐野君に私と学君がそっくりだと指摘されたこと、実際、名もなき女子4人組も、清貴さんも、男子のジャージを被って、髪形を隠している私を見て、学君と間違えたこと。それから、清貴さんが、私と学君の関係をいいなづけだと思っていること。
そこまで話した途端、学君、なにか思い当たったことがあるみたいで。
「ああ、だから、今日、部活帰りに寄った道場で、清貴さん、ヘンな目配せしてきたんだ」
ひとり納得の様子。
「でも、俺とつかさって、そんなに似てる?」
私のことを改めてまじまじと見つめてくれる。
どうみても、私と似ているように見えないのだけどなぁ? 私的には・・・・・・
なんで、みんな間違ったのだろう?
ともかく、いいこと思いついた。
「ねぇ、ちょっと待ってて」
私、学君を部屋に待たせといて、ママの部屋へ。
クローゼットの中からストレートロングのウィッグを失敬して、もどった。
「ねぇ? ちょっとこれ被ってみてくれる?」
「え? ああ、カツラか、どれどれ、こう?」
「って、それ前後逆」
顔の前に長い髪を垂らして、顔が見えなくなった女が目の前に・・・・・・
「さ、貞子・・・・・・?」
こ、こわー!
ありさちゃんが、この姿見たら、どうなるのだろう?
ちょっと見ものかも。
学君、ごそごそウィッグを直して、髪を掻き分けて顔を出した。
う、う~ん・・・・・・
なんか、すごく身近で見覚えのある少女になっちゃったぞ!
こ、これは・・・・・・
私、タンスをゴソゴソして、ゆったりめのカーディガンとスカートを引っ張り出し、学君に押し付けた。
「ちょっと、コレに着替えてみて?」
それから、私は、あまり目立たない地味めの髪留めでアップにして、キャスケットを目深にかぶってっと・・・・・・
「学君? 見て・・・・・・」
振り返った途端・・・・・・
キャッーー!!
へ、変態!
ついに、この変態男、ありさちゃんだけでなく、私にまでヘンな気を起こすようになったの!
「な、な、な、なんで、アンタ、そんなところでズボン脱いで、パンツ一丁になってるのよ!」
私、手近にあったクッションを投げつけた!
「わ! な、なにすんだ! やめろ!」
あらら、避けようとした学君、脱ぎかけのズボンの裾に足とられて、ひっくり返っちゃった。
構わず、近くにあったものをどんどん投げつける。
「でてって!」
「わ、や、やめろ! やめろって!」
「変態! ヘンタイ! へんたーい!!」
「ったく! 痛ぇなぁ」
「ご、ごめん!」
「お前が、そもそも着替えろって言ったんだろうが?」
「ご、ごめん、なさい」
学君、コシをさすりながら、非難の視線。
でも、ウィッグを被って、カーディガンを羽織り、スカートをはいた学君って・・・・・・
「なんか、髪が長いけど、私が目の前にいる・・・・・・」
「ああ、それから、俺の目の前には、女言葉しゃべる帽子被った俺がいるんだけどな・・・・・・」
お互いに、お互いを見詰め合ってしまった。
「た、たしかに、似てるのかもな、俺たち」
「み、みたいね、残念な気持ちでいっぱいだけど」
「ああ、って、何でやねん!」
ペシッて肩を殴られてしまった。関西弁つきで。
とはいえ、よく似ているのは確か。でも、でも、なんか、どこかが違う。なんなのだろう? なにが違うのだろう?
「あとは、つかさ、晒しを巻いて、胸隠したら、だれもお前だって気がつかないかもな」
そ、そうか、学君、胸がペッタンコなんだ。
「俺の方は、これで十分みたいだけどな!」
こ、こらー!
私にだって、ちゃんとこんもりとあるのだぞ! 女の子らしい胸が!
「何でやねん!」
グーで顔を殴ってあげた。