似ている!? 7
私たち、なんとか無事に家までたどり着くことができた。
我が家が、こんなにも神々しく見えたのって、はじめてかも。
困難を乗り越え、試練に打ち勝ち、ついに私、ゴールにたどり着いたのよ!
学君やありさちゃん、私の大切な友達たちの世話になることなく、観桜会以来、初めて一人で(ひかりんが一緒だけど・・・・・・)我が家に帰り着いたの!
私、玄関に飛び込んで、感動していた。
そして、自然と、口の中から笑い声があふれてきた。
あはははは。
すごく楽しかった。愉快な気分だった。
こんなに愉快な気分って、いつ以来だろう?
きっと、さく女の合格発表をありさちゃんと見にいって、二人の名前が掲示されているのを確認したときに、二人してピョンピョン飛び跳ね、喜び合って以来かも・・・・・・
よかった、本当に、よかった。
「ねぇ、つかさちゃん、もう大丈夫みたいだね?」
私の隣で、ひかりん、ドアに持たれかけながら、荒い息を吐いて、笑いかけてくる。
「え? うん、なんとか逃げ切ったみたい」
「ううん、そうじゃなくて・・・・・・」
ふふふ。
私も、満面で微笑みかけていた。
「うん、よかった」
そうつぶやいたのは、私だったのだろうか、彼女だったのだろうか?
ひかりんと私、それから2時間ほど、一緒に過ごした。
なんか、私の部屋の中に初めて入ったひかりんの目が、妖しく光っていたのが、怖かったのですけど・・・・・・
おやつをかじったり、お茶を飲んだり、おしゃべりしあったり。
私の中学時代のアルバムを引っ張り出してきて、あれこれ思い出を話すのなんて、すごくたのしかった。
でも、私と学君が一緒に写っている写真をみて、露骨に顔をしかめられちゃうと、ちょっと複雑な気分になるのだけど。
なにも、そこまで学君のこと、嫌わなくても・・・・・・
日もとっぷりと暮れ、外が真っ暗になり、ひかりんが帰り支度をはじめたころ、その当の学君が、我が家を訪ねてきた。
「つかさ、大丈夫だったか? なんで先さっさと帰っちゃうんだよ! 怪我とかしなかった? ヘンなことされなかった?」
それが、私の部屋に入ってきたときの第一声だった。
「うん、大丈夫だった。ちょっと危ない目にあいかけたけど。平気だったよ」
部屋の中に一歩足を踏み入れた途端、何かにいる人物を見て、目を丸くしてる。
「って、おい! なんで、その変態女がつかさの部屋にいるんだ!」
「な、なんですって! ストーカー男のくせに!」
あらら、また、はじまったよ。
「ちょ、ちょっとストップ! 学君もひかりんも落ち着いて」
ガルル
グルル
って、あんたらどこぞの野良犬か!
「今日はひかりんに送ってもらったの」
「そいつが一緒の方がもっとずっと心配になる! つかさ、本当に大丈夫だったのか?」
心配してくれるのは、うれしいのだけど、そんな風に断言しなくても。
「それより、学君、もうこんな時間だから、ひかりんを送っていってあげて?」
この一言のあとの二人の様子、ちょっとした見ものだったかも、学君もひかりんも、一瞬のうちに石化しちゃったよ。
「こんなヤツに送ってもらうくらいなら、通り魔にでも襲われて、死んだ方がマシだわ!」
「ふん! 俺だって、お前なんか送っていきたくないわい!」
「ねぇ、そんなこといわず、お願い、ね?」
「う、うう・・・・・・ つかさがそう言うのだったら・・・・・・」
「フン! だれがアンタなんかに!」
「こら、ひかりん! ひかりんも魅力的な女の子なんだから、夜道を一人で歩くなんて、危険なことしちゃいけないよ! だから、学君に送ってもらいなさい!」
「え~! ヤだ! 絶対ヤだ!」
はぁ~ この娘ときたら・・・・・・
じゃ、いいわ、現実を見せてあげれば、考えが変わるでしょう。
私、ひかりんを窓際へ連れて行った。そして、カーテンと窓を開け、下の通りを見せた。
「・・・・・・」
外は真っ暗だというのに、私の家の前、何人かの男たちが立ち止まり、熱心に私の部屋の窓を見上げている。
窓からの光に照らされて、浮かぶ青白い顔、顔、顔・・・・・・
私が顔をのぞかせたので、下の男たち、一斉に声を上げはじめた。
『好きだ!』『愛してる!』『I love you!』etc
「で、あの中を一人で帰って行く?」
ひかりん、かわいそうにガクガク震え始めちゃったし・・・・・・
窓を閉め、カーテンを閉じて、学君に目配せ、今度はひかりん何も言わず大人しくしている。
「じゃ、送ってくるわ」
「うん、お願い」
「ああ、また、もどってくるから」
そう学君告げて、ひかりんを連れて外へ出て行った。
一瞬、通りの男たちがどよめいたのは、ひかりんを私と見間違えたからだろうな。
すぐに、失望のため息が聞こえてきた。
ったく! いい加減、近所迷惑なんだから!