似ている!? 4
私、それでも、素直に手を洗い佐野君のタオルで手を拭いた。
確かにタオルをもってきていなくて、拭くものがなかったし。
拭き終わって、隣に立っている佐野君に、乱暴に投げ返す。
「ありがとう」
怒りのこもった強い声。
「どういたしまして」
穏やかな返事。
なんか、腹立つ!
と、なにか思いついたような表情を浮かべ、
「なぁ、神宮寺って、やっぱ神宮寺のいとこなんだな?」
えっと? 最初の神宮寺が私のことで、じゃ、次の神宮寺は・・・・・・
「さっき、100メートル走のとき、アイツと一緒の組になって、走ってたけど、アイツが一生懸命歯を食いしばって走ってた姿、今、お前がタオル投げてきた姿とそっくりだよ」
な、なに! なんだよ、それ!
佐野君、突然、自分のジャージの上を脱ぎ、私に羽織らせた。
そして、私の背後に回り、さっきの男臭いタオル、私の髪を隠すように、頭の上にかぶせる。
「な、なに?」
「うん、やっぱりそうだ。すげぇ、似てる!」
前に回った佐野君、感心して私を見ていた。
と、私たちの目の前を名もなき女子4人組が通りかかった。
「まなピー!」
私に向かって手を振りながら。
え? 学君、さっき着替えもせずに、空手部の部室へ行ったはずだけど・・・・・・
戸惑っている私を佐野君、肘でついてくる。
「ほら、呼んでるぞ、手ぐらいふってやれ!」
名もなき女子たちに、軽く手を振ってみせると、キャーだなんて、楽しげな黄色い声を上げながら、走っていっちゃったし・・・・・・
お、おーい! 私、学君じゃなくて、つかさなんですけど。
つい、佐野君の方に目がいった。
「ほら、な?」
どうやら、私と学君、似ているというのは、本当のことみたいだった。
な、なんか、すごく残念な気分・・・・・・
そのまま、しばらく呆然と、名もなき女子たちが去っていった方角を見つめていると、すぐ隣で、自転車のブレーキの音がした。
いつのまにか、反対方向から、自転車近づいていたみたい。
そして、自転車に乗った男性が私に声をかけた。
「よっ、学! 相変わらず、女にもてるな。うらやましいぜ、ちくしょー!」
こ、この声は・・・・・・
き、清貴さん!
私、その場で固まってしまって、返事もできない。
「ありさちゃんも、いつのまにか、お前と仲良しになってるし、いい加減にしないと、お前のあのかわいいいいなづけの女の子、つかさちゃんだったけ? 彼女に愛想尽かされちゃうぞ!」
え!? ええっ!!
わ、私、学君のいいなづけなんかじゃ!
ビックリして、清貴さんを見つめてしまった。
「なんだよ、そんな怖い顔すんなよ! はいはい、お前の大事なつかさちゃんには、お前が女の子にキャーキャー言われて、鼻の下伸ばしていたなんて、言わないから、安心しろよな。じゃ、また、後で、道場でな!」
それだけ言うと、軽く手を振り、自転車をこいで、いってしまった・・・・・・
「そ、そんな・・・・・・」
よりにもよって、清貴さんに、私が学君といいなづけだなんて、思われていたなんて・・・・・・
あ、悪夢だ!!
私、頭を抱え込んでしまった。
「お、おい、大丈夫か? 顔色悪いぞ! しっかりしろ!」
佐野君の心配そうな声に返事ができないでいた。